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回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第六章 終幕

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第八節 夢

 ロケットは一旦、地球の軌道上に乗る事となる。ゾムビーの親玉を見つけるまでの時間、無暗に動くのは頭のいい判断とは言えないからである。ロケットに乗った4人は、親玉の声がしないか、辛抱強く待つ。と、ここで身体がhunter.N州支部の宇宙通信所に連絡をとる。


『こちらロケット内、ヤツの声は聞こえていない。そちらに声は届いているか?』


『……こちら宇宙通信所、親玉の声はこちらにも届いていない。! これは……!!』


『どうした?』


『こちら宇宙通信所、ロケットの進行方向よりおぞましい雰囲気をした球体を発見した』


『! 以前確認された、ゾムビーの巣の様なものか?』


『以前確認されたモノと同様のモノだ。時速30キロでロケットへ進行中。念の為、不測の事態に備える様に!』


『ラジャー』


「隊長、どうしたのですか?」


 主人公が身体に問う。


「ああ、以前出くわした球体が、こちらへ向けて進行してきている。ある程度の距離になったら、ツトム、お前が石を持ってロケット外へ出て行ってくれ」


「分かりました。酸素ボンベの準備をお願いします」


 主人公に酸素ボンベが装着させられる。装着するのは身体である。過去に経験があるのか、手慣れた手つきでそれは装着させられた。



「隊長ォオオ! あれをォオオ!」



 逃隠が叫ぶ。


「どうした? サケル……!」


「!!」


 身体、主人公は確認した。コックピットから確かに見える、紫色の球体を――。


「ツトム、心の準備はいいか?」


「……はい」


 主人公は内部ハッチがある場所へ向かった。そこに辿り着くと、内部ハッチを開け、外部ハッチを確認した。次に内部ハッチを閉める。フーと大きく溜め息をつく主人公。目をキッとさせる。



(これが最後……これさえ終われば……皆を助けられる……!)



 外部ハッチに手をやる主人公。




「……行くぞ」




 外部ハッチから宇宙へ出て行く主人公。手には十数個のあの石が。宇宙へ出ると、80メートルほど先に、紫色の球体が存在していた。


「あれだ……以前スマシさんと見たコトがある」


 そう主人公が呟いた矢先――、


 バコッという音と共に、貨物庫から袋詰めされたゾムビーが球体へ向けて放り出された。


「! そういえばゾムビーも宇宙へ還すんだったっけ。こういう方法なんだね……」



『聞こえるか、ツトム』



「!」


トランシーバーから身体の声が聞こえてきた。


「隊長……」


『もし、万が一だが、相手が攻撃してきたら、グングニルで応戦するんだ。容赦は要らない、向こうがウソをついた事になるんだからな』


「はは……そうですね、でもそうならないように願ってます」


『くれぐれも気を付ける様に!』


「……はい」


 静かに言う主人公はリジェクトを使い、球体に近付いて行った。30メートルほど進んだだろうか? 球体はこちらに気付き、速度を下げていく。途中、貨物庫から放り出されたゾムビーを、袋ごと球体が取り込んでいった。不気味さを肌で感じながら、主人公は進んで行く。遂には2、3メートルくらいまで球体に近付いた。そこで主人公と球体は進むのを止めた。


「い……居るのか? ゾムビーの……親玉……」


 先に口を開いたのは主人公だった。その数秒後、


「パカァ……」


 半径数十メートルはあろう球体は不気味な音を立てながら開いていった。その中は――、


「ゾゾォ……」


「ゾムゥ」


「ゾゾ……」


 ゾムビーで溢れかえっていた。その中心に――、


『ヤア……ヨクゾ来テクレタナ』


 ゾムビーの親玉が存在していた。


「石を還しに来た! 近くに来てくれ」


 主人公は強く言う。


『分カッテイル。今、行ク』


 すーっと幽霊の様に親玉は近付いて来た。10秒もしないうちに、親玉は主人公の手が届く場所まで近くへ来ていた。親玉の“声”はロケット内の身体達にも届いていた。



(ツトム……)

(だい……)



 身体や逃隠は祈るような思いで戦況を見つめていた。親玉は主人公に手を差し伸べる。


『サア』


 コクリと頷いて主人公は右手にあった十数個の“石”を差し出した。そのまま親玉の手のひらに石を渡す主人公。


『ソウダ……ソレデイイ。サア、我ガ同胞達ヨ、我等ガ住処ヘ、還ロウゾ……!』


 両手を広げるゾムビーの親玉。主人公は不意に、謎の気配を感じ、地球を見る。地球の数カ所から、紫色の光がゾムビーの親玉目掛けて差し込んでいた。そして――、


 ブワッとそこからゾムビー達が親玉目掛けて引き寄せられていった。




「ゾゾ……」


「ゾム……」


「ゾゾォ……」




「! 何を……!?」


 主人公は目を見開いた。




「ゾゾ……」


「ゾム……」




 次々とゾムビー達は地上から引き寄せられていく。



「今、何をした!?」



 主人公は親玉に問う。親玉は淡々と答えた。


「ナアニ、石ノ力デ同胞達ヲ地上カラ宇宙ヘ引ッ張リ出シタマデダ」


(!? 石に、そんな力が……これで、地上から全てのゾムビー達が居なくなる。本当に和解できるんだ……)


 主人公は不意に、爆破の残した遺書を思い出した。



(回想)


 ゾムビー達が大切にしている石を奪ったのも私たち人間だ。そこは反省すべき点だと、私は切に思う。ゾムビーにも手を差し伸べる、共に歩んでいくという道もあるかも知れない。そこで具体的な方法を何か模索してくれないだろうか? 身体副隊長、サケル隊員、ツトム隊員、その他の隊員達でも構わない。何か策を考案して欲しい。そしてそれを実行に移し、ゾムビー達との戦いに、終止符を打ってくれ。


(回想終了)



(これで……スマシさんの悲願も叶う……これで……?)




『本当にいいの?』




 主人公の陰が、主人公に語り掛けてくる。




『本当にこれで良かったの?』




 抜刀、爆破の姿が脳裏に浮かぶ。




『二人の命を奪った敵……』




 そして尾坦子との想い出が過ぎる。




(僕の大切な人を一時は……)


 地上からの光は全て消え、全ての地上に居たゾムビーは球体の中に還った様子だった。


『オ帰リ、同胞達ヨ』


 一方でうつむく主人公。ぼそりと何か呟く。



「……るか」



『ナンダ?』


 その声をはっきりとは聞き取れなかった親玉は、主人公に耳を傾ける。




「お前達に僕の気持ちが分かるかぁあああ!!」




 主人公の体は、両手から全身へと虹色に光り輝いて行った。


『!?』




「グングニル!!!!」




 カッと輝き出すゾムビー達。


「ゾゾォ……!!」


「ゾム……!」


 少しばかり苦しそうに声を上げる。


『人間ヨ。ココマデノ力ヲ持ッテイタトハ……私モ、コレマデカ……』


 光は、ゾムビー達、紫色の石、球体、そしてゾムビーの親玉を包み込んで行き、その全てを消滅させていった。




「ハァァアアアア!!!!」




 更に力を込める主人公。輝きは強く激しくなっていく。


 そして――、シュウウンと光とゾムビー達は消えていった。


「やった……か……?」


 主人公は全ての力を使い果たして、疲労困憊となっていた。


『ツトム! 倒したのか!? ゾムビー達全てを!』


 トランシーバーから身体の声が聞こえてくる。


「あ……はい。今、戻ります。リジェクト……」


 衝撃で自身をロケットの方へ飛ばしていく。やがて、外部ハッチまで辿り着いた。目の前は霞んで良く見えない中、内部ハッチを開け、ロケット内に辿り着く。


「ツトム!」


 最初に声を掛けたのは身体だった。


「だい!」


 逃隠も出迎えてくれた様だった。


「二人……共……」


 主人公はフッと力が抜けて、気を失った。



 ――、


「うぅ……」


 主人公は目の前から差し込む、白い白い光を感じ、気を取り戻す。ゆっくりと目蓋を開いた。


「やあ、ツトム」


「よお、久しぶりだな」


 そこには爆破と抜刀が居た。その空間は、白い立方体の様な部屋で、机や椅子、扉さえ無い、そんな空間だった。


「! 二人……共……何で……?」


 主人公は状況を飲み込めずにいた。


「まあいいじゃないか。折角また会えたんだ。話でもしよう」


 爆破は気さくに話し掛けてきた。


「ふぅ、さてツトム、私がアレほどゾムビー達との和解を願っていたのに、ゾムビー全員を倒してしまったな。お前にはいろんな意味で期待を裏切られたよ」


「俺としては、仇をとってくれたみたいでアリだけどな!」


 抜刀は割って入る様に言う。


「はは……」



「さてツトム、どうして、こんな選択を取ったんだ? 教えてくれ」


「……」



 少しうつむく主人公。しばらくして口を開く。


「悔しかったんです」


「!」


「確かに、ゾムビー達との戦いは、人間が宇宙開発をする中で、ゾムビー達の居場所を侵略したことから始まりました。でも、スマシさんやセツナさん、尾坦子さんは人間ではあるけど、ゾムビー達の居場所を侵略していない。それなのにゾムビーの犠牲になって、変わり果てた姿になってしまって……あんまりじゃないかって……悔しくって」


「そうか……私達、犠牲になった者の事を大切に思ってくれていたんだな。ありがとう、ツトム」


「サンキュな」


「あ……はい」


「おっと、そろそろ時間が来た様だ。お別れの時間だ。また会えて嬉しかったぞ、ツトム。これで本当にサヨナラだ」


「あばよ」


「あっ、待って! 二人共!!」


 空間は段々と宇宙空間と同じような“色”になっていき、爆破、抜刀の二人は遠く遠くへと主人公から離れて行った。




「待って!!」




 ガバッと身体を起こす主人公。周りには金属や無数に並んだランプ、そして見慣れた顔の人間が居た。


「ツトム、目を覚ましたか?」


「だい!」


 声を掛ける身体と逃隠。主人公は、ロケットの内部に居た。身体は続けて話し掛けてくる。


「ツトム、全部のゾムビーを……本当に良くやってくれた」


「隊長……」


「俺は、本当は和解などしたくなかった。しかし力不足だった。圧倒的な力を前に、復讐ができなかった」


「隊長、夢の中で、スマシさんとセツナさんに会いました」


「何!?」


「スマシさんは、最初はゾムビーとの和解を成し遂げなかった僕に怒っていましたけど、理由を話すと、納得してくれたようでした」


「ハハ、そうか。爆破隊長も安心して天国に居られるだろうな。さあ、帰るぞ。平和になった地球へ。俺たちの国へ」


「だい!」


 帰りの飛行機内でも、疲弊しきった主人公は、機内食も食べずにずっと寝ていた。その間、主人公はどんな夢も見ることは無かった。



 ――、


 狩人部隊は、日本へ帰ってきた。部隊は一旦、狩人ラボへ向かった。身体が狩人の関係者や隊員全員を集め、集会を開いた。身体はマイクを使い全員へ呼びかける。


「皆! 我々狩人は、数多の戦いの末、hunterの協力もあり、見事、ゾムビー達を撲滅する事に成功した!」


 パチパチと拍手が起こる。サッと右手でそれを制止する身体。続けて口を開く。


「さて、これからの狩人の活動についてだが、今後は自衛隊と協力して、有事の際には現場に赴き、積極的に活躍して行こうと決めている。また、地球の環境保全の活動も並行して行っていく。これからは新しく隊長になった、この身体スグルに力添えして行って欲しい」


 演説の様なモノは幕を閉じる。




 そして――、




 学校を3週間も休んだ主人公と逃隠は放課後、特別に補習や試験を行った。逃隠は、夏休み期間も補習は続く様だった。



 とある日のこと――。


「行っけぇ!」


「回れ回れ!」


 河川敷で野球をする子供たちを見ている主人公と友出。そっと口を開く主人公。


「コガレ君。僕、これで良かったのかなって、今でも時々思うんだ――。ゾムビーは環境問題を人々に知らせるために現れたのかもしれないって、そう、最近思うんだ。」


「誰も分かりゃしねぇよ、人生の正解なんて。まっ、あの化け物達が居なくなって、皆安心して暮らせるんじゃねぇの?」


「……そっか」


 笑顔になる主人公。



 場面は変わり、逃隠邸にて――、


「ほぉラ! ダッヂ2号、おすわり!」


 犬を飼うコトになった逃隠。犬種はラブラドールレトリバーのようだ。


「ははは! ふかふかだい!」


 犬の毛皮に頬を寄せる逃隠。すると、犬はペロペロと逃隠を舌で舐め始めた。


「ゥわあ! くすぐったいんだい!」


 陽だまりの空の下、一人と一匹はじゃれ合った。



 再び場面は変わり、狩人ラボ、楕円形の机と、幾つかの椅子、モニターがある会議室にて――、


「以上が、今回のK県の環境保全活動の報告となります。委員会の方々、いかがでしょうか?」


 身体が何かしら活動報告を行っている。


「どうと言われてもだな」


「何か、こう……パッとしたモノは無いのかね」


 委員会の者達は退屈そうにしており、口々に愚痴を吐いていた。


「(これが爆破隊長の感じていた事か……現場の空気を吸わない者共が、全ての決めごとを扱う)申し訳ございません、こういった資料しか持ち合わせておりません。皆様の意見は、次の報告の参考にさせて頂きます」


 小一時間後、身体は狩人ラボの自販機コーナーで、コーヒーを買い、飲んでいた。すると、携帯電話から着信音が。出てみる。


「お疲れ様です。主人公ツトムです」


「なんだ、ツトムか。どうした?」


「狩人の在籍についてですが、本当に離職という形で良かったのでしょうか?」


 コーヒーを一口飲み、身体は答える。


「ああ、一向に構わんぞ? ゾムビーは絶滅したので、後は超能力者が居なくてもできる仕事ばかりだ。刀を持ったサケルが居なくても――だ」


「分かりました。二度目になるかも知れませんが、今までありがとうございました。ところで、今の仕事は順調に進んでいますか?」


「ああ、順調だ。前に、地球の環境保全活動と言ったがまずは日本から、自然環境などを守る活動を始めている。少し前にツトム達が行った、大阪の道頓堀川の環境が劣悪で、ゾムビーが出没したことがあったな?」


「あ、はい」


 カランと、身体は空き缶をゴミ入れに入れた。


「ああいった場所に赴いて、環境保全に努めている」


「大変そうですね。お疲れ様です」


「なぁに、ゾムビーに比べれば、大した事は無い。そろそろ仕事だ。切るぞ」


「はい、失礼します」


 プツンと通話は切れた。




 季節は過ぎ去り――、11月。


 平々凡々中学校も、三年生が進路選択のアンケートを取る時期に差し掛かった。


「主人公ツトム隊員!」


 巨房が主人公に話し掛ける。


「進路については、どうお考えでありますか?」


「うーん、まだはっきり分かんないや」


 主人公は答えた。




「……あ!」




 ハッと何か思い付き、主人公は進路選択用の資料を手に取る。次いでアンケート用紙にサラサラとシャープペンシルで進路の希望する高校名、学科を書いた。


「どこにお決めになったのでしょうか!?」


「んー? 内緒」


 主人公の書いた用紙にはこう綴られてあった。






『〇×高校環境学部環境科』




第六章 終幕 並びに、回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  完

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