第七節 爆破の左脚
「私は行くぞ!!」
爆破は臨戦態勢に入った。
「スマシさん……!」
トランシーバーで主人公が話し掛ける。
「同胞殺しは私の仕事でな。ツトム、お前が手を汚さなくて良い。私に任せろ。フライトデッキの隊員、聞いているか? ゾムビーを弱らせる電波が送れる機器があったはずだ。それを用意し――、!」
刹那、
先程高速でやってきたゾムビーが爆破の20メートル手前へやってきた。
「言ってる間も無さそうだな……まぁいい、バースト!」
「ゾマァ!!」
ゾムビーの魔の手が爆破に届く、
瞬間――
「ボッ!!」
彼女が、手前に来たゾムビーをバーストで爆破させた。
(……石、ですらないか……次はあのアホウだな)
「キッ」
fireを睨む。
「ゾ……ゾ……」
小型のジェット機で飛んでいる、fireであった者。
瞬間――、
「バースト!」
「ボボン!!」
fireであった者は爆破され塵も残らず消し飛んだ。主人公は静かに思う。
(N州支部のエース……でも、宇宙では力を全く発揮できない……)
「フライトデッキ!」
「!!」
爆破は声を上げる。
「例の電波だ、頼む」
「ラジャー」
身体が答える。ロケットから何か機器が出て来た。そして、
「ゆんゆんゆんゆんゆんゆん」
謎の怪電波が放射された。
「ゾ……ゾゾォ」
怪電波はゾムビー集団の動きを鈍らせた。
更に――、
「サッ」
例の宝石をかざす爆破。
「コォオー」
ゾムビーの集団の、一部の体内が光る。
「石の……それに壁、も数体居る……(これが最期の戦いになるかも知れないな)」
爆破は思いながら口にはしなかった。
そう、弱音は決して吐かない。
そして、
「ツトム! 援護を頼む!! 殲滅戦だ……!!」
主人公に呼びかける。
「ハッ、ハイ!!(う……動きづらい……)」
主人公は答えるも、宇宙空間にまだ不慣れであった。
「ボッ」
爆破は自分の後方を爆撃して、それを推進力にして進んだ。
「ゾゾォ」
ゾムビーの内の一体がゆっくりと近付いてきた。
「小癪な! バースト……」
「ボッ」
バーストで攻撃する。
しかし、――
「ドムゥン」
衝撃は吸収された。
「! 石、か?」
爆破は1度懐にしまった宝石をかざす。
「カッ」
ゾムビーの体に1つ、光り輝くモノがあった。
「石、だな……」
ふーと溜息をつく爆破。
そして、
「あの頃は冷静でいられなかったが、今は違う! バースト!!」
「ボッ」
爆破はゾムビーの内側、その宝石付近に攻撃をした。
「内側からの攻撃なら、衝撃を吸収できまい……」
「ゾゾォ!!」
ゾムビーと宝石は分断された。
「仕上げだ……」
「ボボン!!!!」
ゾムビーを爆破した。
そして――、
「ボン!!」
宝石付近を爆発させ、その衝撃で宝石を移動させる。
「パシッ」
新たに宝石を手にする。
「お次だ……」
キッとゾムビーの群れを睨む爆破。
「バースト!」
「ボッ!!!!!!」
群れの中心にバーストを喰らわせる。爆発により煙に包まれるゾムビーの群れ。煙が消えた、
その時――、
「ブワッ」
おびただしい数のゾムビーの群れが、中心から更に発生した。
「!」
「!! そんな、あんな数……」
主人公は意気消沈した。
しかし爆破は怯まない。
怯む事無く、攻撃を続けた。
「バースト……」
「ガギィン!」
「!」
攻撃が効かないゾムビーが現れ、こちらへと近付いて来た。宝石をかざす爆破。そのゾムビーの体内には2カ所、光る部分が存在した。
「壁、だ。頼むぞツトム」
「ハッ……ハイ!!」
意気消沈していた主人公だが、爆破の一声で、自分が今、何をすべきか把握し、行動に移すことができた。
「グングニル……!! いけぇ!」
爆破へ向かっていた壁のゾムビーにグングニルを喰らわせる。
「カッ!! シュゥゥゥーッ!」
ゾムビーは徐々に蒸発するように消えて行った。
「さて、……(爆破スマシよ、慢心するな邁進しろ!)」
直ぐに次の攻撃に準備する爆破。それを見ていた主人公。
(スゴイ……さすが、スマシさんだ。僕が怯んでいても、臆することなく、次の攻撃次の攻撃に備え、しかも冷静に的確な指示をくれる……)
「バースト!」
「ボッ!!」
爆破を眺めている主人公。
「ホント……(隊長だけは敵に回したくないなぁ)」
また一体こちらへ向かって進んでくる。
「バースト!」
「ドムゥン……」
「! また石、か……」
身構える爆破。
「!」
「ボン!!」
また内側から攻撃を喰らわす。
「ゾ……」
(石、の処理はこれで良さそうだな、さて……)
ゾムビーの集団を見つめる爆破。
「(近付けば高威力で攻撃できるが、範囲が狭まる。距離を置けば全体を攻撃できるが、威力に欠ける……)あちらを立てればこちらは立たず、か……ならば!」
「ボッ!!」
爆発を推進力にしてゾムビーの群れに近付く爆破。
「高威力で、全体攻撃だ!!!!!!」
手をかざす爆破。
「はッ!!!」
「ボッ!!!!!!!!!!!!」
辺りは眩い光に包まれた。
地上――、
主人公が入院していた病院。排便タレオが隔離室から空を眺めていた。謎の光に包まれる空。
「……ツトム? ツトム?」
再び宇宙――、
「ハァ……ハァ……やったか?」
爆破は体力を大幅に消耗した様だった。爆煙が消え、視界がはっきりとしてきた。石、壁のゾムビー達はバーストで吹き飛ばされて、ゾムビーの群れが居た中心部分よりだいぶ離れた場所へ移動させられていた。通常のゾムビー達はバーストをまともに喰らい、粉微塵になっていた。
「ハァ……ハァ……概ね、成功だな……」
「スマシさん!」
主人公が叫ぶ。
「どうした? ツトム」
「あ、あれ……」
主人公は前方を指差した。
確認する爆破。数キロ先に、おぞましい雰囲気をした、黒々しい球体が存在していた。
「アレは……?」
球体を見つめる爆破。すると、
「パカ……」
球体に亀裂が入り、球体が開いた。
そして――、
「ブワッ」
球体の中からおびただしい数のゾムビー達が現れた。
「! あちらも本気という事だな……分かった。ツトム!」
「はい!」
「周りに散らばっている石、並びに壁のゾムビーを確実に倒していってくれ!」
「分かりました!」
会話を交わす爆破と主人公。
「私はアイツ等をやる……」
「ボッ!」
新たに発生したゾムビーの群れに向かって移動する爆破。すると、
「ブワァああ」
高速で移動してきたゾムビー達、爆破を取り囲む。
「何!? バース……」
「ブワッ」
バーストを放とうとする最中、爆破はゾムビーの群れの中に取り込まれてしまう。
「スマシさん!」
主人公は大声で爆破の身を案じた。
「ドガアッ」
リジェクトで移動し、爆破が居る方向へ近付く。
「心配、無用だ」
爆破の声がトランシーバーから聞こえた。
「ボボン!!」
爆破を取り囲んでいたゾムビーの群れは、
一点から弾け、
飛ばされ、
爆破された。
群れから脱出する爆破。群れの居る方向へ振り向く。
「爆ぜろ……」
「ボッ!!!!!!!!!!!!」
再び、爆破の全力が、ゾムビー達を襲った。
「ゾォオオオオ!!」
消し飛ぶゾムビー達。
(スマシさんが無事だ。僕も頑張らないと……)
狙いを定める主人公。
「グングニル!」
「カッ!!!!!!」
主人公は、石と壁のゾムビー達を三体同時に葬った。
「壁、は任せた! 私は石、や、倒し損ねた奴等を倒す!」
「ハイ!」
会話を交わす爆破と主人公。
彼女はまだ知らなかった。
自らの左脚にゾムビーの体液が掛かっていたことを――。
「バースト……!!」
「ボン!!」
「ゾゾォ!!」
ノーマルのゾムビー達を爆発させる爆破。その目に迷いは無い。一方で壁のゾムビーは残り1体のみとなっていた。
「(呼吸を落ち着かせて……今だ!!)グングニル!!」
「カッ!!!!!!」
「ゾォオ!!」
主人公は壁のゾムビーと充分な距離をとっていたため、安全に敵を倒すことができた。
(これで、残りは……)
「ツトム!!」
「!」
思いを巡らせる主人公を、咄嗟に呼ぶ爆破。
「アレを見ろ!!」
爆破が指差した方向には、撤退していくゾムビー達の姿があった。
そして――、
『面白イ』
「!」
「!!」
「!?」
爆破や主人公達は、頭に直接呼びかけてくるような“音”を感じ取った。その音は、ロケットのコックピット等に居るパイロット達にも聞こえた。
『今回ハ、ココマデデ勘弁シテヤロウ。シカシ、我々ハ諦メンゾ。アノ石ヲ……。モウ7日、一週間後ニマタ戦力ヲ立テ直シテキサマラヲ襲ウ。セイゼイ余命ヲ楽シムンダナ。ハッハッハッハ』
“音”は徐々に消えていった。
「今のが聞こえたか? ツトム、副隊長?」
爆破は二人に問う。
「ハイっ! 聞こえました」
「こちら、コックピット内にも聞こえました、隊長」
主人公、身体はそれぞれ答える。
「そうか……。あちらは、今回は撤退する様子だったな……よし、今回、追撃はしない。切り上げよう。ツトムがグングニルを連撃して、体力を消費した様だからな。さて、地上に勝利報告でもしておいてくれ、副隊長」
「ラジャー」
身体は応答した。
「帰るか、地上に――」
爆破はあっけらかんとしていた。
「正直に言うと、地上が恋しいです」
主人公が心中を吐露した。
「そうだよな! よし、さっさとロケットに戻り、地上へと帰還しよう!!」
爆破、主人公の二人は、それぞれバーストとリジェクトを放ち、移動していった。
――、
外部ハッチを開く爆破。
「ガチャン」
「ひとまずこれでOKだな、ツトム」
「はい、お疲れ様です」
爆破の言葉に答える主人公。続けて外部ハッチを閉じ、内部ハッチを開く爆破。
「ガチャ……ガチャン」
「1.5日ほど宇宙に居たか、感想はどうだ?」
爆破に答える主人公。
「ふわふわしてて、不思議な感じでした。あと、地面が無いのが不安ですかね……」
「はは、そうか。しかしそれもあと、一日と数時間で終わるぞ。良かったな、ツトム」
「は、はい……」
とりとめのない会話を交わす爆破と主人公。ロケット内部に入り、内部ハッチを閉じた。
コックピットへ移動する二人。主人公が口を開く。
「スマシさん!」
「何だ?」
「この後は何をすればいいのですか?」
「……そうだな」
暫く考え込む爆破。
「……寝て過ごすか?」
「ガクッ」
ずっこける主人公。
「ホンキですか?」
「ん、そうだが?」
爆破は至って平然としていた。
「……ホントに帰るだけなんですね」
「そうなるな」
「……」
「……」
しばらく二人は無言で、コックピットを目指した。
――、
「ウィ――ン」
コックピットへ到着した。
「隊長、良くぞご無事で」
一番に口を開いたのは身体だった。
「ああ。そちらこそ、操縦、ご苦労だった」
返す爆破。
「ツトムぅー! 一時はどうなるかと思ったんだい!」
主人公に飛びつく逃隠。
「はは、スマシさんが冷静だったから、難を逃れることができたよ」
笑顔で逃隠に答える主人公。
「副隊長、少し……」
「なんでしょうか?」
爆破から身体に話し掛ける。
「操縦の方だが、ここ二晩の間、夜を徹して行っている様だな?」
「はい……」
「私に代われ、睡眠時間を減らし過ぎだ」
「!」
爆破の言葉に、衝撃を受ける身体。
「そんな! 滅相もございません!!」
「いいから代われと――」
「グイ」
「言っているではないか」
操縦席から身体を押しのけて、爆破は言う。
「……分かりました。6時間程、睡眠を……」
「短い、8時間だ」
身体の言葉を遮る様に爆破は言った。
「は……はい。お気遣いありがとうございます。では……」
ミッドデッキに移動する身体。
(久しぶりに叱咤を受けた気がする……俺もまだまだだな)
身体は一人、そっと思った。主人公が爆破に話し掛ける。
「スマシさん! 申し訳ないのですが、僕たちも……」
「だい……」
逃隠も申し訳なさそうに佇んでいた。
「そうか、お前達も睡眠を取っていいぞ。育ち盛りだからな、しっかり寝て次の任務に備えるように!」
「はい!」
「だい!」
爆破の許しを得て、睡眠をとる準備をする主人公と逃隠。
「今日の戦い、勝てて良かったー。よいしょっと」
「流石の俺も、宇宙空間では戦えないんだい。よっこらせっと」
「よし、じゃあお休みー」
「だい」
二人は寝始めた。
一方の爆破――、
コックピットに居る。
(おかしい……事は上手く進んだのに、この胸騒ぎは……)
何か違和感を覚えている様だった。その爆破の左脚は、密かに紫色に変色していた。
8時間後――、
「ふぁああ、良く寝た」
主人公が目覚めた。
「よう。やっとカ、ツトム」
逃隠は既に目覚めて数分経った後の様だった。
「おはよう、サケルは朝が早いんだな」
身体も目を覚ました。
「ふ……副隊長ォオ!!」
逃隠が大いに反応した。
「まぁ、それだけなんだがな……」
「ぐはっ!!」
身体の素っ気ない言葉にダメージを負う逃隠。
「さて、行か……」
身体はコックピットへ向かった。
「僕らはストレッチでもしようか?」
「するんだい!」
主人公と逃隠は、朝のストレッチを行うようだった。身体はコックピットに着いた。
「隊長! 先程目覚めました!! 操縦を交代致します!!!」
「おお、目覚めたか、副隊長。交代、頼んだ」
身体の言葉に、応じる爆破。
「いやぁそれにしても、この周辺の景色は変わり映えしないな。退屈で退屈で……まぁ、何も起きないに越したことは無いが……」
「心中、お察しします」
爆破の愚痴にも、恭しく対応する身体。
「ふぁああ、じゃあ私は寝るぞ。後は頼んだ」
「ハッ!」
爆破はミッドデッキに移動した。
ミッドデッキにて――、
「おお、皆も起きたんだな」
爆破が主人公と逃隠に声を掛ける。
「はい! スマシさん。ストレッチをしていました」
「もう起きているんだい!」
返す二人。
「そうか、じゃあ朝食を摂った後は筋力トレーニングだな。頑張れよ」
「はい!」
「だい!」
爆破は眠りについた。
――、
「バースト!!」
「グングニル!!」
「ゾムバァ――!!」
「ゾゾォ!!」
倒れ行くゾムビー達。
「やったなツトム、これで全てのゾムビーを倒すことができたな!」
「はい! 大変な道のりでした。でも、スマシさんとだからこの偉業を達成できました」
「おめでとうございます、隊長」
「やったんだい!」
「ありがとう、副隊長、サケル!」
嬉し涙を流す爆破……。
――、
「パチパチ」
目蓋を開く。それは涙で濡れていた。
(夢……か……)
涙をぬぐう爆破。
「ズキン」
「うっ」
左脚がひどく痛んだ。左脚に触れる。すると、そこには見慣れたとある体液、ゾムビー達の体液が付着していた。
「! これが私の末路か……呆気ない人生だった……」
「ズキン」
「うっ」
痛みが徐々に増していく。
「しかし、」
拳を握りしめる。
「仕事は最後までやり遂げないと――、な」
爆破はコックピットに向かった。




