第一節 劣勢
およそ3カ月前、アメリカ――、
『L市にて、ゾムビー発生! 戦闘員は直ちに現場に急行せよ!! 繰り返す……』
『S市にて、ゾムビー発生! 戦闘員は直ちに現場に急行せよ!! 繰り返す……』
『D国立公園にて、ゾムビー発生! 戦闘員は直ちに現場に急行せよ!! 繰り返す……』
『クッ! またか』
『最近多すぎやしないか?』
『これじゃあ対応しきれないぞ』
狩人関東支部がhunter.N州支部に例の石を譲渡してからすぐに、アメリカでのゾムビー発生率が格段に高まった。
戦地にて――、
『くたばりやがれ!!』
「タタタタタタタタ!!」
ジェームスが銃器でゾムビー達と応戦していた。
「ゾゾォ!!(いたいぃ!)」
「ゾム……(うぅ)」
次々に銃弾の餌食になっていくゾムビー達。
と――、
「ゾゾォ……」
ジェームスの足場の排水口に、一体のゾムビーが。
「ゾォオオ!」
排水口の蓋をすり抜けて現れるゾムビー。
「うぉ!?」
「ゾムバァア!!(おまえも、なかまに……!)」
ジェームス目掛けて体液が襲ってきた。
「バシャアア!!」
『ジェームス!!』
『おぉお……む……ゾム……』
ジェームスの仲間の声もむなしく、ジェームスはゾムビー化した。
『クッ、許せ……』
「タタタタタタタタ!!」
「ゾムゥ……」
「ゾ……」
仲間は、ゾムビーもろともゾムビー化したジェームスを銃で葬った。
数日後――、
『大丈夫かよ!』
『もう何人も、ゾムビー化した! 戦闘能力の無い一般市民だけじゃなく、hunterや軍人もだ!!』
『上はどう説明する気だ!?』
hunterの隊員や、アメリカ軍軍人から、責任者へ向けて不信感が募る。
『もうやってられるか!』
武器を置く者が現れた。
『……』
「ガチャ」
一人また一人と武器を手から離す者が増えていった。
宇宙――。
『ソウダ。ソレデイイ。戦意ヲ喪失サセ、愚カナ人間共カラ、石ヲ取リ戻スノダ。ソシテイツノ日カ、皆デ帰ロウ。ココ、宇宙ヘ……』
ゾムビー有利のこの状況を、ゾムビーの親玉は喜んでいた。少しずつ、アメリカに暗雲が立ち込めてきた。
――、
hunter.N州支部の一室にて――、
『クッソ! キリがねぇぜ』
『正直、もう限界かも』
ワープとサイコキネシスが弱音を吐いていた。
そこへ――、
「ウィーン」
『おいおい、サイキッカーの俺らが弱音を吐いてどうする? 他の軍人や隊員達は少しも超能力すら使えねぇのに気張ってるのによぉ』
fireが二人を諭しながら現れた。
「ウィーン」
『正直、コイツと同じ意見なのは癪だが、言っている事はもっともだ』
続いて現れたボディアーマーも言う。
『俺たちは、超能力というアドバンテージを持つ。他の人間より、戦いにおいて有利に立ち振る舞える。よって、他の人間よりも先陣を切って戦う義務があるのだ』
『そーゆーコト!』
fireは、ボディアーマーに同意見の様だ。
『……』
『! ……』
極まりの悪い思いをする、サイコキネシスとワープ。
『し、仕方ないわね』
『そーだな……』
『それでOKだぜ。次の戦いも、気張ってくれや』
fireが二人に声を掛けた、まさにその瞬間――、
『ゾムビー発生! ゾムビー発生! 発生場所はここ、hunter.N州支部近辺! 発生場所はここ、hunter.N州支部近辺! 戦闘員は直ちに戦闘態勢に入るように! 繰り返す! ……』
『言ってる傍から、やっこさん達、来やがったぜ?』
『全く、休む間もないわ』
『本当にな』
『しかし、やるしかない……』
fire、サイコキネシス、ワープ、そしてボディアーマーは歩き出す。戦地に向かて――。
――、
Hunter.N州支部、目前にて――。
『!!』
『おいおいおい……!』
『これは……』
『まさか……』
ボディアーマー、fire、サイコキネシス、ワープは息を呑む。目の前に広がるのは、未だかつてない程におぞましい光景だった。
『1、2、3、……50……いや、100は居るか!?』
100体を超えるであろうゾムビーの大群が、そこに蠢いていた!
『クソッ! 何体居るんだ!?』
hunter隊員はうろたえながら銃を構える。隊員全体に不安の色が見える。
『何体居ようがやる事はいっしょだ! 行くぞ!!』
先陣を切ってfireが走り出す。
『え、……ええ!』
『お、……おう!』
サイコキネシス、ワープはその後に続く。
『オラァ!!』
「ボワッ!」
fireの能力で、集団の前に居るゾムビー7体が一気に燃え上がる。
「ゾム……(あぁ)」
「ゾゾォ……(あつい……)」
『(私も、やらないと……)ハッ!!』
超能力で、8体のゾムビーを浮かび上がらせるサイコキネシス。
『早く! 撃って!!』
『あ、ああ……』
「ガチャ」
「タタタタタタタタ!!」
サイコキネシスの一声で、hunter隊員が銃器を使いゾムビーを撃退していく。
しかし――、
(マズいな……。この量だ、直接の攻撃である超能力を使う訳じゃない俺は不利だ)
ワープの脳裏に一抹の不安が過る。
ボディアーマーは……。
(一対一の接近戦専門の俺だ……。邪魔にならないだろうか……?)
一歩踏み出せずにいた。
『ワープ! ボディアーマー!!』
『!!』
『!?』
fireが叫ぶ。
『ちんたらちんたら何やってんだ!? ヤツらの群集を見ろ!! 真ん中付近から外れた隅のヤツがこっちに向かってきてるぞ!! 数は少ない!! やれるよな!? てか、殺れ!!』
『お……、おう』
『ああ!』
ワープとボディアーマーは身構える。
そして――、
「シュピン」
ワープがゾムビーの目の前まで瞬間移動してきた。次に、
「ズダン!」
持っていたショットガンでゾムビーの頭を撃ち抜いた。
「ゾゾォ!!」
その後ろにいたゾムビーがワープに襲い掛かる。
しかし――、
「シュピン……」
「ゾォオオ!?(きえた?)」
ワープは瞬間移動して、ゾムビーと距離を置く。
(ヒットアンドアウェイ方式で行くか……)
ワープの戦い方は定まった様だ。
一方でボディアーマーは――。
『ふん!!』
「ゾゾォ!!」
「バシャアア!!」
特殊スーツと自らの身体のみで戦っていく。
「ゾゾォ!!(くらえ!)」
『!』
ゾムビーがボディアーマーに襲い掛かる、瞬間――。
「タタタタタタタタ!!」
「ゾ! ゾゾォ!!」
蜂の巣になっていくゾムビー。
『!?』
『ボディアーマー!! 思う存分戦ってくれ! 援護射撃は任せろ!』
『ああ!(有り難い)』
hunter隊員はボディアーマーを鼓舞した。
また一方でfire――、
『オラァ!!』
「ボワァッ!!」
「ゾォ……(あぁぁ)」
「ゾムゥ……(あついぃ……)」
超能力を使い、ゾムビー達を炎に包んでいく。
『クッ(これだけ離れてたんじゃあ、威力が出せねぇ。それに、もっと攻撃範囲を広めねぇと……)』
じりじりと足を進めていくfire。
『この数を! 相手にできねぇ!!』
ゾムビーの大群との距離を5m程にした。
『これで……いいだろ!? オッラァアア!!』
「ボッガァ――!」
大爆発を起こすように、炎が上がった。
「ゾォ!!(あぁぁ!!)」
「ゾムゥ!!(あついぃ!!)」
「ゾムワァ!!(いたいぃ!)」
炎の餌食になっていくゾムビー達。
『凄い……これなら……私も負けてられないわ!! ハッ!!!!』
「ブワッ」
超能力でゾムビー達を浮かび上がらせるサイコキネシス。
『動きを封じたわ! 今よ!!』
『ハッ』
「タタタタタタタタ!!」
動けなくなったゾムビー達を、hunter隊員は狙撃していった。
「ボワッ!」
「バシュッ!」
「ズダン」
「ブワッ」
fire、ボディアーマー、ワープ、そしてサイコキネシスはそれぞれの技を全力で放っていく。戦況は順調に思えた――が、
『ハァ……ハァ……』
『……』
『ゼェ……ゼェ……』
『フー……』
全力の超能力は、スタミナを大いに使う。その為、4人の体力は、じわじわと蝕まれていった。
『ハァ……もういい! 少し休憩だ!!』
fireはゾムビーの大群から距離を置き、座り込んだ。
『ちょっとぉ! 何やってんの!?』
サイコキネシスは呆気にとられる。
『hunterたちも居るだろうが!! 少―し休むだけだ!』
『もう!(私はあんなコトしてられないもっと頑張らなきゃ)ハッ』
「ブワッ」
数体のゾムビー達を浮かび上がらせる。
しかし――、
『サイコキネシスさん! 銃弾を補充しなければなりません!!』
『うそ……』
その時、動きを封じられたゾムビーの内、数体が、サイコキネシスに顔を向けてきた。
「ゾム……」
「ゾム……」
「ゾム……」
そして――、
「ゾムバァ!(くらえ!)」
「ゾムバァアア!(いけ!)」
「ゾムバァ!(くらえ!)」
『! あ……』
サイコキネシスは体液を顔面に喰らった。
『! おい!』
「シュピン!」
それを目にしたワープ、即座にサイコキネシスの元へ行く。
『大丈夫か!? サイコキネシス!!』
サイコキネシスを抱きかかえる。
『もう……ダメみたい……。あなたに殺されるなら本望だわ。お願い……。撃って……ム……ゾム……』
意識が少しだけ残っていたサイコキネシスだったが、即座にゾムビー化する。
『! ……』
「ガチャ」
ショットガンを構えるワープ。そして――、
「ズダン」
サイコキネシスの命は断たれた。瞬間――、
「ゾムバァアア!!(おまえもだぁ!!)」
『!!』
「バシャアア!!」
意気消沈していたワープに、襲い掛かるゾムビーの体液。瞬間移動は間に合わない。
『……ゾム』
「シュピン」
『何!?』
hunter隊員の前に瞬間移動した、変わり果てた姿のワープ。無言でショットガンを放つ。
「ズダン!」
hunter隊員の頭は弾け飛んだ。
『何だぁ!?』
『ワープ隊員がぁ!!』
「シュピン……ズダン!」
『がぁああ!!』
超能力とショットガンをを使い、次々とhunter隊員を襲うワープ。
『おいおいおい。何だありゃ?』
座り込んでいたfireはようやく立ち上がる。そして、状況を確認。遂に動き出す。
『(ワープがやられたか。それにしても、ゾムビー化しても超能力が使えるとは……)な!!』
「ボワッ!」
『!!』
fireはワープが手にしていたショットガンを焼き払った。
「……ゾム」
「シュピン」
瞬間移動するワープ。hunter隊員の前に現れる。
『!? うっ』
「ゾムバァ!」
「バシュッ」
体液を吐き出すワープ。
『あがぁああ……ゾム……ゾム』
隊員はゾムビー化した。それを見ていたfire、呆然となる。
『おいおい、獲物をぶっ壊してもこれかよ?』
『!!』
ボディアーマーもその事態に気付き、前線から退き、ワープへの対応を最優先した。
「シュピン……シュピン……シュピン……シュピン……」
瞬間移動を繰り返すワープ
『これじゃあ狙いが定まんねぇ……』
弱音を吐くfireだったが、ボディアーマーは冷静だった。
『(ゾムビー化して、動きが単調となった……。規則性がある……)そこっ!!』
「ゴッ!!」
ボディアーマーは渾身の右ストレートを放った。
「バシャアア!!」
ワープの腹部に命中し、それは弾け飛んだ。
『ヒュー、やるねぇ』
fireは感心していた。上半身と下半身が分断されたワープ。
次の瞬間――、
「シュピン……」
上半身だけが、ボディアーマーの上方向に瞬間移動した。
次いで――、
「ゾムバァ!」
「バシュッ」
ワープは体液を吐き出す。
ボディアーマーを、体液が襲った――。




