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回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第二章 日常と戦友

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第三節 共闘

「ツトム……それは……」


 父がゆっくりと、スッと耳に届く声で言葉を投げ掛ける。



「それは自分で決めた事なんだな?」



「うん!」



 主人公が続けて気持ちを込める。


「自分で……自分で決めた事なんだ。誰かに言われたんじゃない、僕自身が強くそう思っている事なんだ! 前に、ゾムビーに大切な人を襲われて……だから、もう二度とあんな思いはしたくなくて!」


 暫くして、再び父が口を開く。


「そうか……それなら自分で決めた道を進みなさい」


「! お父さん!!」


 母が心配そうに父の方を向く。すると父は続けた。


「母さん、いいんだ。ツトムが自分で皆を守るって決めた事だ。……ツトム、自分で決めた事をやり通すというのはそれがどんな事であれ、とても意味のある事なんだ。よく、自分で決心したな」


「父さん! ありがとう! 頑張るよ!!」


「ああ、頑張れよ」


 主人公の力強い言葉に、優しく返す父。


「ふ――、しょうがないわね。分かったわ。母さんも応援するから。でも、無理だけはしない事。それと、何か私達に出来ることがあったら必ず言う事。出来る限りの事はするわ。分かったわね?」


 父の様子に見かねた母は主人公の意見を認めた。


「分かったよ。母さん、無理はしないし、何かあったら協力してもらうよ」


 主人公は晴れやかな気分でそう答えた。ふと、母は言う。


「あ、そうだ。一応言っておくけど、勉強に支障が出たら、許さないからね」


「はは、気を付けるよ」


 主人公は少し硬くなる。




「ふっ、ははは」




 父がクスッと笑った。


「ふふふ、あははは」

「ははは、ふふ」


 母もつられて笑い、主人公もまた、頬を緩めた。

 笑い止んでから、主人公は言う。


「とにかく、そういう事だから、これから頑張るよ! それと、これからも宜しくお願いします。父さん、母さん!」



「ああ」


「ええ」



 父と母は笑顔で答えた。


「じゃあ、部屋に戻るよ」


 そう言って主人公は二階に上がった。階段を上がりながら、主人公は考える。


(よし! 言えて良かった。もやもやした気持ちが晴れたよ)


 ドアをバタンと開けて、自室に入る。


「ボフッ」


 ベッドに腰掛けた。少し下を向いて、顔の前で指を組む。


「フ――、よし! 宿題宿題! ラストスパートだ‼」


 主人公はスッと立ち上がった後、机に向かい、宿題を始めた。夕方には全ての夏休みの宿題が終わった。



 ――翌日、8月31日。主人公の自室にて。朝、主人公がバッグを準備している。


「さて、宿題も昨日終わったし」


 階段を下りる主人公。茶の間にいる母に話し掛ける。


「母さん、ちょっと出かけてくるよ。帰るのはお昼過ぎるかも」


「ハーイ、行ってらっしゃーい」


 母は返す。



 ――小一時間後、主人公はとある場所へ辿り着いた。狩人ラボである。


 認証用のカードキーを使う。


「ウィ――ン」


 ラボの扉が開いた。


「よしっ」


 主人公は足を進める。数分後、主人公は研究室に辿り着いた。

 センサーが感知し、自動扉が開く。


「こんにちは! 主人公ツトムです。今日の実験はいつからでしょうか?」


 主人公の問いに、パソコンの前で作業をしていた研究員が手を止めて答える。


「お疲れ様、ツトム君。午後3時からだ」


「ハイ! ありがとうございます。尾坦子さんとの面会、大丈夫でしょうか?」


「ああ、被験体Aとの面会を許可するよ」


「ありがとうございます!」


 主人公は尾坦子の下へ行く。相変わらず、尾坦子はガラス張りの部屋に閉じ込められていた。


「尾坦子さん! お久しぶりです!」


「あらツトム君、久しぶり」


 二人は軽く挨拶を交わす。


「夏休みの宿題も終わって、時間ができたから来ました」


「ふふ、よく来てくれたわね」


 主人公は近況報告を軽くした。友出の試合を見に行った事、逃隠家に行った事などを話した。


「コガレ君、ホントかっこよかったんだよ。シュートも決めて」


 主人公は楽しそうに話す。


「その子の事が本当に好きなのね。……私とどっちが好きなのかな?」


 尾坦子は主人公をからかう。顔を真っ赤にする主人公。


「えっ? えっと……それは……」


「ふふふ、いいわよ。本気で答えなくても」



「……」

「……」



 主人公は顔を赤らめながら、尾坦子はニヤニヤしながら、二人は少しの間沈黙する。


「それで、ね……」


 主人公が口を開く。


「?」


 尾坦子はキョトンとする。


「父さんと、母さんに、狩人に入隊したことを話したんだ……」


「まあ」


 主人公の言葉に、尾坦子は両手を口の前で開いた。


「それで?」


「うん、母さんは、最初は反対したんだ。僕を危ない目に遭わせられないって。……そしたら、父さんが狩人に入隊したのは、自分で決めた事なのかって聞いてきてね」


「ええ、それから?」


「僕は、この街の皆を守りたいから、自分で決意して狩人に入隊したって答えたんだ。そしたら父さんは認めてくれて、頑張れって言ってくれたんだ。母さんも、最後には納得してくれてね……」


「あら、良かったじゃない。これからも狩人として頑張れるわね!」


 主人公に対し、明るく言う尾坦子。


「うん……でも……」


「?」


「コガレ君に、言われて気付いた事なんだけど、自分一人で頑張っていこうっていう気持ちじゃないんだ。サケル君のお父さんに対しても言った事なんだけど、狩人の仲間達と協力し合って一緒に戦っていきたい。狩人の人達だけじゃなくて、何かあったらコガレ君とも協力してもらったり、家族にだって相談して戦いを乗り越えていきたいんだ。僕一人の力では無理な事もあるし、一人で無理して心配かけるよりはずっといいと思う」


 伝えたいことを言いきって、少し下を向く主人公。


「……そうね」


 尾坦子が口を開く。


「その方が良いわね。相手はとても恐ろしい化け物なんだから、一人で無理したって勝てっこないわよ。私も、出来ることは実験に協力する事くらいだけど、目一杯頑張るから……一緒に、戦っていこうね!」


 グッと親指を立てる尾坦子。


「……うん!」


 主人公はパァっと明るくなり、答えた。



 ――、


「ありがとうございました」


 研究員に挨拶する主人公。振り向き、尾坦子に手を振る。尾坦子は笑顔で手を振り返している。



 ――、


 研究室を出て、ラボを後にした。家へと帰る道中、主人公は思う。


(よし! 僕は間違っていない! 尾坦子さんだって協力してくれる。皆で! 一緒に戦うんだ!)



 ――二学期、教室にて。


「おはよウ! ツトムゥ!」


 逃隠が主人公に声を掛けた。


「おはよう。サケル君。夏休みの宿題、ちゃんとやってきた?」



「おウ! もちろン、やってないゼ‼」



 自信満々に答える逃隠。ガクッと呆気に取られる主人公。


「予想はしていたけど……ここまで自信満々とは……」



「キーンコーンカーンコーン」



 放課後のチャイムが鳴る。部活生はダッシュで部室に向かう。教室の窓で寄りかかる主人公。外のグラウンドを見ている。


「皆大変だなぁ。僕は帰宅部だから関係ないけど……」


 そのままウトウトと居眠りを始める。外では一杯に入ったサッカーボールのカゴを運ぶ生徒や、ゴールを立てる者など、部活に備えている。




「うわあああああああああああああああ!!」



 生徒の悲鳴が上がった。


「!?」


 目を見開く主人公。



「まさか!」


 

 階段を駆け下りる主人公。手には手袋を握りしめている。一方でグラウンドでは、生徒達が異様な光景に息を呑んでいた。グラウンドにはゾムビーの集団が8体、ぞろぞろとうごめいていた。




「ぎゃあああああああああああああああ!!」




 逃げ惑う生徒達。校舎に駆け込む者、ゾムビー達と反対側の倉庫、部室側に逃げる者、校門を飛び出して何事もなかったかのように帰る者、様々である。



 階段を昇る生徒達とは反対に、主人公は勢いよく下へ下へと駆け下りていく。グラウンドに到着し、ゾムビー達を確認する。


「やっぱり……」


 主人公は手袋をはめた両手をゾムビーにかざした。



「リジェクト!」



「ゾ……?」


 ドバっというような耳を突く衝撃音と共に、ゾムビーの集団のうち一番右端の1体を吹き飛ばした。


「(まだ7体もいる……!)狩人ラボはこの学校から遠い! 連絡をしても、到着が遅れてしまう!!」



「ツトムゥ! 狩人への連絡は任せロ!」



 校舎の方から声がした。逃隠である。


「サケル君! お願い!(なんでまだ校舎に居るんだろう……?)」


 返事をしつつ主人公は疑問に思う。


 ゾムビーの方を確認し、ふと何かに気付く主人公。


(ゾムビー達の体液が、体育館裏の方から続いている……この前と同じ、あの排水口から大量発生したのか!?)


 再び手をかざす主人公。


「リジェクト!」


 2体目を吹き飛ばす。


(よし、今日は調子がいい。5秒に1回は撃てる……)


 ゾムビーと充分に距離をとりつつ、ゾムビーのうちの1体が射程圏内に入るまで待つ主人公。


(今だ!)




「リジェクトォ!」



 遂には3体目を吹き飛ばした。


「やった! この調子で……」




「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」




 安堵した瞬間、叫び声が……。その声の方向に顔を向ける。主人公から見て一番左端のゾムビーが、校舎付近で腰を抜かしていた生徒の一人を襲っていた。


(マズい‼ あと1秒足りない……)


「ゾム……」




「うわぁあああ! 嫌だぁあああ!!」




 近寄るゾムビー。泣き叫ぶ生徒。ゾムビーの口から体液が放たれようとする。瞬間、



「ビュン」



「ゾ?」


 何かがゾムビーに向かって飛んで行った。

 その物体はゾムビーの顔面に直撃、溜めていた体液はゾムビーの顔面から後方へ飛び散った。


「やった! 体液はあの生徒にかかってない! あれは……」


 物体を凝視する主人公。



「ボテ……テーンテーンテテーン……」



 それはサッカーボールだった。


「サッカー……ボール……?」



「よぉ、手こずってる様だな。ツトム」



 主人公が振り返るとそこには友出の姿が。サッカーボールが一杯に入ったカゴに手を掛けている。


「コガレ君!」


「早くぶっ倒せよ、こんなサッカーボールじゃ、奴を怯ませる事しかできないぜ?」


 友出は冷静に言う。


「あ……リ、リジェクトォ!!」


 4体目を撃破する主人公。ゾムビーの肉片が、体液と共に飛び散る。その残骸は、グラウンドの土から煙を上げて鼻を突く異臭を放っていた。


「ひっひぃいいいいいい」


 ようやく動けるようになり、走り去る生徒。


「ありがとう! コガレ君!」


 咄嗟に礼を言う主人公。


「礼ならいいぜ。それより、囲まれてるぜ?」


「え!?」


 友出の言葉に、冷静になって辺りを見渡す主人公。そこには、ほぼ均等にゾムビー達が主人公と友出を囲って立ち塞がっていた。

 ヒタリ……ヒタリと、半固形の足を不気味にうごめかしながら、徐々に二人の距離をつめてくるゾムビー達……!!


「ツトム、背中を合わせろ」


 一言、言い放った友出は手を掛けていたカゴを引っくり返し、中のボールはガラガラとカゴを鳴らして足元に散らばった。


「う、うん!」


 主人公は指示に従い、友出と背中を合わせて立った。


「俺があいつらを怯ませるから、お前は自分の最善の方法で、1体ずつ奴らを倒していけ」


「分かったよ、コガレ君!」


 二人は会話を交わし、戦闘態勢に入る。



「行くぜ!」



 ボールをキックする友出。


「ドシャァ」


 ゾムビーの顔面にヒットする。


「次だ!」


 隣のゾムビーに狙いを定める友出。




「リジェクト!」




 一方の主人公は自分の正面のゾムビーを攻撃する。


 5体目を撃破した。




「フッ!!」


「ドシャァ」




「リジェクト!」


「ドガァアッ」



 友出が怯ませ、主人公が撃破する。



「コガレ君!」


「何だツトム!?」


「僕達って最高に強いよね!」


「……ああ!」



 ヒタリ……と粘つく足音がした。



「ゾゾォ!!(よくもなかまを!!)」


 ゾムビーは残り1体となった。


「決めろよ、ツトム」


「うん」


 主人公は手を正面の敵に構える。




「リジェクトォオオ!」




「ゾ?」




 炸裂音がした。



 跡形もなく吹っ飛ぶゾムビー。グラウンドに現れた全てのゾムビーは一掃された。



 ――夕日が傾いていた。主人公と友出は熱い握手を交わす。


 その時――、狩人達が爆破、身体と共にグラウンドに登場した。


「大丈夫か? ツトム。今日は部隊の訓練と日程が重なっていてな……これは?」


 爆破が何かに気付く。辺りには散らばるゾムビー達の残骸と、幾つかのサッカーボールが。爆破が友出に問う。


「少年、これは君とツトムでやった事なのか?」


「だったら悪いか?」


 友出が答える。


「……」


 爆破は友出の言葉を受け、少し考え事をした。


(生身で、サイキッカーでもない中学生が、サッカーボールだけで……)


「さて……俺は帰るぜ。この騒ぎだ、どうせ部活は中止だ。じゃあな、ツトム」


 友出はそう言うと、その場を立ち去ろうとした。


「コガレ君……」


 友出を見つめる主人公。


「……ああ、それと……」


 友出が何か言おうとする。


「俺は狩人とか言う連中に加わる気はサラサラ無いからな」


「!」


 主人公は友出に言う。


「コガレ君!……今日は、ありがとう!」


 それを聞き、振り向かずに右手を上げて軽く振る友出。一方で、身体の元へ逃隠がやってきた。


「副隊長! お勤めご苦労様でス! 今回の連絡は私めが務めさせて頂きましたでございまス!」


「……」


 逃隠の言葉に、黙り込む身体。遂に口を開く。


「見たところ、今回もお前は何もしなかったみたいだな。……一般人の中学生も加勢したというのに……お前にはガッカリだ……」


「ガ――――――ン」




(お前にはガッカリだ……お前にはガッカリだ……お前にはガッカリだ……)




 身体の言葉が、逃隠の胸の奥底に突き刺さる。


「ガク……ペタァ」


 膝を地面につき、両手もつく逃隠。哀愁が漂っている。


「ツトム、今回の戦果報告をしてくれ」


 爆破が主人公に指示を飛ばす。


「ハイ、まず8体のゾムビー達が体育館裏の排水口の方から現れました。それから……」


 話を続ける主人公。


「……で、コガレ君がサッカーボールでゾムビーを怯ませて、隙を作ってくれたので、1体ずつ倒していく事ができました」


「ふむ、報告ご苦労! 友出コガレと言うのか……是非我が狩人で育成してみたい人材だが、彼は私たちを少し毛嫌いしている様子だったな」


 苦笑いを浮かべる爆破。


「はは、そうですね(今日は、ずっと思っていたこと、皆で協力して戦う事が実践できたぞ! これからも、こうやって戦っていき、ゾムビー達を全滅させないと……!)」


 爆破に相槌を打った後、少し考え事をする主人公。


「そうだ、ツトム」


 爆破が口を開く。


「今回は、排水口付近からゾムビーが発生したように、ゾムビー達は湿った場所から発生すると言われているんだ。で、だ。次の土曜日には沼地へ行ってゾムビー発見のための調査を行うことにする」



「ぬ……沼地……?」

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