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回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第0章 石が砕けた日

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第一節 接触

 19××年――、ここは、宇宙――。



 どこまでも続く暗闇の中、光り輝く星も存在している。星は輝きを放ち、互いの存在を確かめ合っているようにも見える。


 そんな中、月の軌道上に半径数十メートルはあろう、紫色の球体が不気味に存在していた。その周りには、ドロドロとした紫色の生物もまた、存在していた。球体の中心からそっと、“声”が聞こえてきた。


『同胞ヨ、オ前達ハ宇宙ニ居場所ハアッテモ、住処トナル星ハ存在シテイナイ。ヨッテコノ広イ宇宙ヲ彷徨イ続ケナケレバナラナイ。サテ、丁度“月”ト呼バレル星ガ、ソコニアル。束ノ間ノ休ミトシテ少シトドマラセテモラオウジャナイカ』


「ゾゾォ」


 紫色の球体と、その周りの生物は、地球から見て反対側の月の面に接触し、動きを止めた。




 それから暫くの間、紫色の生物達が休息を取っていく中で時は過ぎていった。


 半日ほど経っただろうか、




「ゴゴゴゴ」




 低く重い、うなりが聞こえてきた。


『!』


 紫色の生物は悟った。自分達と他の生物が何か機械によって月に辿り着いたことを――


『ドウシタモノカ、ココニハ生物ナド居ナイハズダガ……』


「hey! come here」




『!?』




 威勢のいい声が聞こえてきた。そう、MASAのチームが、ロケットによって月面着陸した、まさにその瞬間だった。


「wow!」


 MASAのチームは球体と、ドロドロとした紫色の生物を確認した。次いで、英語で会話を始める。


『オーノー! まるで映画に出てくるゾンビ達の様だ! ゾムビーと名付けてやる! 銃器はあるか?』


『しっかり用意してあるぞ。蜂の巣にしてやる!』


『ヤメロォ! 同胞達ヨォ!!』




「タタタタタタタタ!!」




 ゾムビーの親玉の叫びもむなしく、銃口が火を吹く。




「ゾゾォ!!」


「ゾム!」




 紫色の生物は銃器の前になすすべなく倒れていった。


『オオ……ナンテコトダ』



『球の中から声がするぞ!』

『こっちも排除してやる』



「タタタタタタタタ!!」



 銃弾が球体を襲う。しかし――、


「パチュンパチュン」


 球体は銃弾を呑み込んでいった。


『どうした!? 効いてないぞ』


「ズズズズ」


 球体が縦方向に開く。


 中からはゾムビーの親玉が現れた。手には何か、紫色の宝石を持っている。親玉は言う。




『ヨクモヤッテクレタナ? コノ石ノチカラデ葬ッテヤル』



『何か出てきたぞ!!』

『まあいい! 奴も蜂の巣にしてやる!!』



「タタタタタタタタ!!」



「パチュンパチュン」



 MASAの隊員は親玉を攻撃するも、その銃弾は親玉に飲み込まれていった。


『くっ』


『残念ダッタナ。コノ石ノチカラノ前デハソンナ武器ナド玩具ニ過ギナイ』


『くそっ周りにいる奴らだけでも殺すぞ!!』


 MASAの隊員は球体の近くに居たゾムビーを狙撃し始めた。




「タタタタタタタタ!!」




「ゾゾォ!!」


「ゾ……」



 凶弾に倒れるゾムビー達。


『待テェ! ヤメロォオオ!!』



「パッ」



 ゾムビー達を想い、手を差し出した親玉。その瞬間、手にしていた宝石を手放してしまった。


『ナ……! シマッタ!!』


 MASAの隊員はその宝石に気付く。


『なんだなんだ?』

『見ろ! 紫色の宝石だ!! 地球へのいい手土産になるぞ』


 MASAの隊員はその宝石を手にし、ロケットへ逃げ帰った。


『へっ、あばよ!』

『急げ急げ』


『待テェ!! ソレハ大事ナ……!』


 MASAの隊員は小走りでロケットに向かう。一方のゾムビー達は動きが鈍く、距離をとられてしまう。



 ――、


 遂には、隊員はロケットに辿り着いた。


『早く! 出せ!! 化け物達が外に!!』

『何だって!?』


 MASAの隊員はロケットを発射させた。隊員の一人は文句を言う。


『けっ! せっかく月まで来たのに、収穫無しかよ!』



『いや……』



『!』


『収穫は……ある……!』


 隊員は先程手に入れたゾムビーの宝石を手に取って見せた。


『何だ……? それは……』


『化け物から奪い取った、宝石だ』


 ロケットは発射後、暫くして地球の軌道上に乗った。


『月の裏側にあんな化け物が居たとはな』


『無事、帰れるようで何よりだ』



そこで――、


「ググッ」



『何だ!?』


 宝石がロケット後方へ引っ張られていった。


 そう、後方の月の方角へ――。



 月――、


 ゾムビーの親玉が両手に力を込め、何かを引っ張っている。


『愚カナ人間共メ。石ハ返シテモラウ……』


 一方でロケット内――、


 手に入れた宝石がロケットごとゾムビーの方向へ向かおうとしていた。


『おい! 何がどうなってる!?』


『あの化け物だ!! あの化け物が宝石を引っ張っている!!』


『宝石の力で航路が逸らされているぞ!! エンジンを最大出力にしろ!!』


 ぐんぐんと出力の上がるロケット。月からの引力に必死に抵抗する。



 もう一方で月――、


『コザカシイ……。コチラモヨリ強イチカラデ引キ戻スマデダ』


 ゾムビーの親玉とロケットの力で板挟みになった宝石。ピシッと宝石の表面に亀裂が生じる。


 そして――、




「カッ!!」




 宝石はバラバラに砕け散った。


『なっ!?』


『宝石が砕け散ったぞ!』


 更に、砕けた宝石はロケット内部に張り付き、一瞬でロケットの壁を貫いていった。


『まずい! 壁に穴が……!』


 砕け散った宝石は、地球の引力に引っ張られる圏内に入っていた。


 その宝石群は南アメリカ大陸のパンタナル湿原、


 N州をはじめとする北アメリカ大陸のあちこち、


 ユーラシア大陸の中心、


 アフリカ大陸、


 そして日本のK県の沼地へと飛んで行った。


 月付近での宇宙では――、


『ナントイウコトダ!! 石ヲ奪ワレテシマッタ!!!!』


 親玉が泣き崩れ、両手で顔を覆うように嘆いていた。すると、


「グググ」


『!?』


 ゾムビー達が地球へと引き寄せられていった。


『ドウシタ!? 同胞ヨ!!』



「ゾム……」


「ゾゾォ……」



 ゾムビー達は何故地球へ引き寄せられたのか? その答えは宝石の力によるものだった。ゾムビー達の力の源となるその宝石は、地球の各地へ飛んでいき、ピンチに陥る事で助けを乞い、ゾムビー達を引き寄せたのだった。


 飛んでいたロケット内では――、


『おい! 機体を保つのがやっとだ!!』


『このまま太平洋沖に不時着するぞ!!!!』


 穴の開いた機体は、辛うじてフライトを続け、地球に帰ってきた。


 そして――、



「ザッパァアアン!!」



 ロケットは太平洋沖に不時着した。


『ふぃー、何とか生きてる』


『本部へ連絡だ。救助を頼もう』


 その日から一週間後――。MASAの研究施設の一室で、会議が行われていた。


『――以上が今回のフライトの結果報告です』



『月の裏側に化け物が……エイリアンか?』

『化け物達から奪った宝石が、散らばって地球に……?』



 ざわつき始める室内。



『その宝石ですが――』



『!?』



『幾つか、こちらで所持しておりまして』



 それから更に一か月後――、



「ゾム……」



『ヒュ―ヒュー』


 MASAの一員が、口笛を吹きながらその施設内を歩いていた。曲がり角を曲がった時――、


『!? お前は!!』


 一体のゾムビーが姿を現した。


「ゾム……ゾムバァァ!!」


 ゾムビーは一員の顔目掛けて体液を吐き出した。


『うわぁぁぁぁぁぁぁ!! あぁあああ! ム……ゾム……』


 MASAの一員はゾムビー化した。




『緊急連絡! 緊急連絡! MASA施設内に、謎の生物が現れた! 尚、その生物の体液に触れると、その化け物と同じ姿になってしまうとのこと……繰り返す! MASA施設内に――』




 施設に戦慄が走る!

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