間話 ジェイ 5
それからすぐ、ユアの飯が食いたいという俺の望みは叶った。
ユアはシェアハウスという面白いものを提案してきて、聞いた二日後にはもうみんなで住み始めていた。
スピード契約にユアは驚いていたけど、俺だって驚きだ。俺にこんな決断力があったとはね〜。
宿屋とは違う、ひとつ屋根の下で一緒に生活するという事に妙に舞い上がってしまった。
いや、二人きりじゃないけどさ。
だからユアと二人で買い物に出かける時、上がったままの俺は何を話していいかわからなくなってしまった。
話題…… 話題…… と頭がグルグルする。
ユアの方が気を使って話しかけてくれたのがわかる。
情けない思いで、つい言わなくていい事まで言ってしまった。
…… …… ……。
沈黙が辛い!!
俺は頭に手を当てて空を見上げた。
「あーーー!!! ごめん!何かうまく喋れない!! 話したい事はいっぱいあったはずなのに!」
顔に集まった熱を吐き出すように叫んだ。
カッコ悪いな、俺。
空を仰いだまま恥ずかしくて目を閉じていると、クスクス笑うユアの声がした。
「私も同じだよ。何か妙に緊張しちゃった。初めてあった頃みたいに話しながら行こうよ。あの時もずっと二人で話してたもんね」
何だそっか。ユアも同じだったんだ。
気づいた俺は、ふぅ……。 と大きく息をついて、笑った。
「そうだな。思い出すと懐かしいな」
俺らしく。ユアらしく。出会った頃のように、ゆっくり始めよう。
二年は長かった。
俺が意識するように、ユアも俺を意識してくれたらいいな。
そんな事を思うと照れくさいけど、でもすっげぇ幸せな気持ちで町まで二人歩いて行った。
シェアハウスの初日の夜、本当に久しぶりにユアの飯を食った。
あぁ…。変わらず美味いな。
俺は二年前を思い出しながらゆっくり味わった。
だけど、美味しい美味しいと連呼される声に焦って急いで食べ始めた。
ゆっくり食ってたらなくなる!!
その夜も満足して眠った。幸せだ。
次の日の朝飯は、ブレイディさんの宿で初めて食ったベーコンエッグだった。チーズのパンも同じだ。スープは違うけど美味いからいい!!
弁当も渡された。これはあの?!
期待してユアを見れば
「そうそう。初めて作ったメニューにしてあるから! 懐かしいでしょ?」
「マジか。すっげぇ嬉しい!弁当励みにがんばるわ」
「うん!気をつけて、いってらっしゃい」
「いってくる」
朝も昼も、あの日と同じにしてくれるなんて。ますますちゃんとユアがここにいると実感できて安心する。
いってらっしゃいも、気をつけても懐かしい。
ひび割れてた心が少しずつふさがっていくのがわかる。
二年は長かった。ユアがいる事が日常と慣れるには、もう少しかかるだろう。
……ヘタレだな、俺。
アダムが、中身は何かと興味津々だった。
いい匂いがしてるからそうなるよな。
俺は笑って中身を説明する。
「マジか!俺初めてだわ! うわぁ、すげぇ楽しみ!!」
俺と同じ反応じゃないかよ。
美味いものって、誰とか限らず共通なんだとわかった。




