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30話 シェアハウス 1




さっぱりして宿屋に戻ると、ジェイとアダムも帰っていた。

二人はお風呂の前にご飯だって。


朝と同じく、硬いパンと薄味のスープ。

今日は私たちも稼ぎがあったからお肉料理もたのんでみる。

う〜ん……。美味しくない。


「ユアの飯が食いたいな……」

「「食べたい!」」


思わずといった風にジェイがつぶやく。アシュリーもアダムもそれに続く。ラックまで、うんうんと頷いている。


まぁ嬉しい!

そんな風に言ってもらえるなんて、ちょっと顔がにやけてしまう。


そっかぁ、料理かぁ。

私も、この宿屋のご飯はないわ〜と思っている。宿代が宿代だから文句は言えないけど、部屋もあまり清潔じゃないし……。

今更だけど、ジェイに疑問に思った事を聞いてみた。


「ジェイはBランクになったって言ってたでしょ?そのくらいの上位のランクの人なら、もう少しいいお宿に泊まるもんじゃないの?」


するとジェイは、ちょっと考える風にしてから、言いづらそうに


「金、貯めてたんだ。いつでもどこにでも、すぐに行けるように」


…… …… …… ……。


……それは、エマちゃんに聞いていたから、たぶんそうだろうと思うけど。


「私のため?」


ジェイは顔を赤らめて頷いた。


何ていうか 、申し訳ない!!

二年も、あ、ここでは二年じゃないか。でも一年以上、この宿屋で生活をしていたんだ。

何ていうか、本当に申し訳ない!!

私がごめんねを言おうとする前に、ジェイがまた笑顔で言った。


「俺がしたくてしてた事だからユアは気にするな。それにまぁ、色々考えてやってきた事は報われたっていうか……、ユアにまた会えたからいいんだ」


ますます赤くなったジェイは、でもきっぱり言い切った。


ジェイったら!ご飯くらいいくらでも食べさせてあげるよ!!

元々ずっとお詫びとお礼にいっぱいご飯を作ろうって思っていたしね!!


そうすると、宿屋さんでは難しいかな。ブレイディさんの宿屋じゃないし。

それにこの地にしばらく留まるのなら、宿屋暮らしじゃない方が経済的じゃあないだろか?

そう思ってみんなに尋ねてみる。


「それならシェアハウスはどうかな?」

「「「シェアハウス???」」」


三人の声がきれいに重なる。ラックも何だろうって私を見る。

え?シェアハウス知らないの?ないのかな?

私の勝手なイメージだけど、西洋の方がそういう文化ってあるのかと思ってたよ。ルームメイトって言葉もあるくらいだしさ。

そこでシェアハウスについて説明する。


「それならユアの飯が食えるな」

「なるほど、それは確かに宿代より安く暮らせそうだ」

「みんなで掃除も洗濯もすれば、清潔に生活できるしね!」


という事で、一軒家を借りてみんなで住む事になった。

リーリウムくらいの大きな都市なら、人口的に二〜三階建ての集合住宅もあるし、立地とか建物の大きさなんかでお家賃は変わるけど一軒家の賃貸物件もあるんだって。


そうと決まれば、明日から仕事の合間や行き帰りに、そういった空いている物件を探してみよう!という事になった。




リーリウムについて二回目の朝。

今朝もまだ早いうちから起き出して、ご飯を食べたらみんなでギルドに向かう。

ジェイとアダムは討伐系だからすぐに決まるけど、私たちは手に職がないからなぁ。

今日は空き家を探せるように、配達系の仕事なんてどうかな?なんてアシュリーと話していると、ジェイが


「配達って……、来て二日で道はわからないだろ」


そうでした。

という事で、ジェイとアダムを見送ってから、私たちにもできそうな仕事を探してみる。

何やら霊園の清掃というものがあった。


もうすぐこの国では、日本でいうとこのお彼岸とお盆を足したような時期になるんだって。その前に綺麗にしよう!という事らしい。

霊園ってお墓だよね……。

昼間だし、大勢いるし、怖くない怖くない!!

とりあえず今日はそれに決めた。


霊園は町の外れにあった。まぁそりゃあそうか。

霊園には管理人さんもいるんだけど、なんせ広い。なのでこの時期と冬に清掃員を募集して一気に綺麗にするんだって。


墓石を水洗いして拭く人、雑草抜きをする人、花壇や植樹の手入れをする人。結構な人がいて、これなら広くても一日〜二日で終わりそう。単純作業の割に日当もいいし♪


墓石が日本のとは違うからお墓って感じがしない。ちょっと公園みたいだし、お天気も良くて気持ちいい。

依頼を受ける時はどんな感じかとちょっとビビったけど、やってみたらけっこう楽しく過ごせた。


そんな帰り道。


「アシュリー、あそこって人が住んでなさそうじゃない?」

「あ、本当だ!ちょっと見てみようか」


霊園からそれほど離れてない、町からはまぁまぁ離れてる住宅地に、一軒の生活感のない家があった。

来る時は気づかなかったよ。


町から離れるにつれて住宅も少なくなっていく。その分一軒一軒の敷地面積が広くなるからこっちの方がいいな。中心に近い程ギュウギュウなんだもん。

お買い物とか出勤なんかはちょっと不便かもだけど、それよりお庭がある方がいい。

環境は気に入った。さてさて、ここは空き家なんでしょか?


ジロジロ見てるあやしい3人組……。

人の気配はしないし、お庭も少し荒れている。住んでなさそうだよね〜と話していたら、ちょっと離れたお隣さんが帰宅して来た。


「こんにちわ〜!突然すみません、あちらのお宅は空き家でしょうか?」

「こんにちは。そうね、今は空いてるわよ。なぁに?住居希望?」

「はい!私たち住む家を探しているんです。お家賃にもよりますが、いい家だなと思って」


お隣さんは気さくな奥様だった。

それならと、管理をしている人の連絡先を教えてくれた。

私たちはお礼を言って、ギルドに寄ってから帰った。




宿屋に戻ると、今日はジェイとアダムの方が先に帰っていた。

夕ご飯を食べながら、さっそく空き家の事を話す。


「それじゃあ明日の朝、管理人のところに行って家を見せてもらおう。みんな気に入ったら契約しよう」

「ちょっと待った!契約しようったって、私たちお金がないの。もうちょっと働いてからじゃないと契約金も家賃も払えないよ」


私たち四人はその日暮らしに等しい。

アダムはちょっとは余裕があるかもしれないけど、それ程ではないと思う。なんせまだ二日しか働いてないからね。

私の言葉に三人は、うんうんと頷いている。


「いったん俺が出しておくよ。稼いだら返してくれたらいいし」

「そんな!悪いよ!きっと結構なお金がかかるでしょ?」

「いいんだ。思っていた使い道が変更になっただけだから。それにユアの言う事はいつもおもしろい。シェアハウスっていうのもおもしろそうだ。 あと俺、早くユアの飯が食いたいから、これは俺の願いなんだ」


ジェイは笑顔で言う。

私たち四人は黙ってお互いの顔を見回す。ここで遠慮して言い合いになるより、せっかくジェイがそう言ってくれてるんだから、そうしようか?

生活の拠点がきちんとしているのは大切だ。それに、そんなに食べたいと思ってくれてるなら、いくらでも作って差し上げましょう!と言う事で


『よろしくお願いします!』


四人そろって頭を下げた。




翌朝は、少しだけ遅めに出発。管理人さんの家を訪ねるのに、あまり早すぎるのはどうかと思ってね。

といいつつ充分早いけど。町の目覚めは早い。朝日とともに起きるのは、町も村も変わらないみたい。


管理人さんの家にはすぐについて、管理人さんの出勤前に家を見せてもらえる事になった。

こちらとしても助かる。これから家を見せてもらうとその分遅くなるけど、そのあと急げば朝の遅い時間の仕事からならありつけるかもだし。


さて、内見させてもらえた家だけど。

落ち着いた外観は結構好みかも。建物はちょっと古いけど、古い造りにあるしっかりしたものだ。


お日さまが燦々と降り注ぐお庭もいい。ちゃんと手入れをすれば可愛らしくなると思う。

大きな木の下にテーブルセットを置けば、これからの季節なんて外でご飯を食べてもいいよね〜♪ なんて妄想は広がる。


中に入れてもらって、一階の大きなワンルームはリビング兼ダイニングかな。ダイニングテーブルは四人掛けのちょっと大きめな物。椅子を一つ足さないとね。

暖炉の前には厚手の敷物。壁際にソファーと小卓があった。


それからベッドの置いてある部屋がひとつと、キッチン。

キッチンはあまり大きくはないけど使い勝手はよさそうだ。裏庭に出られるドアがある。

裏庭はわりと広い。家庭菜園ができそうだ。井戸もあった。


トイレはあるとは思っていたけど、驚いた事に浴室もあった。これはすごく嬉しかった!

普通に家にお風呂があるからというのもだけど、わざわざ町中の公衆浴場へ行かなくていいのがありがたい。


二階に上がる。二階にはふた部屋あった。どちらにもベッドが置いてある。

家中どの部屋にも大きな窓があって、晴れた日中は明るそう。これもポイントが高い。


ちなみに空き家には、家具や基本的に生活に必要なものは置いてあるんだって。引越し屋さんがいないからか?お引越しも少いらしいけど。いわゆる居抜きという状態で、すぐにでも住める。お掃除は必要だけどね。


さあ、あとはお家賃だ!




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