似合よ
「あ、あら、お似合いのお二人が、お揃いで……アッ!婚約報告!」
玄関前に悪趣味な衣装を着てる物体がふたつ並んでたの。
「義妹は、何、薄ら惚けた事をほざいてんのよ!こちらの方は、あんたごときにわざわざ、相談に見えたのよ。それに御義母様にたってのお願いも有るそうなのよ」
魔法美少女のコスチューム姿のニナルに言われたわ。
「そう。いきなり、とんでもない生き物の動画をみせられて、こいつを、婚約者にしたんだから、結婚を前提におつきあいをしろと言われても、まず無理だから、相談に来た」
こいつ何か尊大よね。
正体は艶々した尾苜秋礼大先輩よ。
バル様の舞台衣装みたいな、ぎんぎらぎんのスパンコール付きのスーツみたいなのを着てるわ。
「とりあえず、ママはまだ用事が有るからこれないけど、お庭にどうぞ」
ふたりをお庭に御案内よ。
「あぁ、椅子が……」
2脚しか椅子が無いわ。
「まずは、これよ。あんたの名前なのに、別の化け物が映ってんですってよ。あたしはまだ視てないけど」
そう言って、さっさと、その2脚に、ニナルと秋礼大先輩が座りやがったわ!
あたしに立ってろっていうのね!
それにしても、化け物?
またカオちゃんじゃないでしょうね!?
ニナルが指差した、秋礼大先輩が差し出してるタブレットの画面を視るわ。
「!!」
こ、これは!
「白系統の明るい色は膨脹色だから、止めとけば良いのにね。この化け物、いつだったか見た義妹……に見えるけど……何時期の義妹だったかなぁ?」
ニナルに化け物呼ばわりされる謂れは無いわ!
秋礼大先輩のタブレットの画面に映ってんのは、この3月にした、バレエの舞台【美女と野獣】の一場面よ!
パパが撮影したやつよ!
ママったらこれをお見合い写真代わりにしたのね!?
昨日、ママは、あたしが、お振り袖を着たときに、写真館で撮った画像だかを添付して送ろうとか何とか、独り言をいってたはずなのに?
このムービーに映ってるのは、引退公演に出た、あたしよ!!
化け物って、どういう意味よ!?
そもそも、何で、秋礼大先輩は、あたしだって気がつかないのよ!?
まぁ、役柄が【野獣】だから、ある意味化け物っていえば、化け物役だけど、顔は被り物も何にも使って無いわよ!!
それに、今、この画面に流れてるシーンは、野獣が王子さまに戻ってるんですからね!!
誰だかわからないなんてほざいたり、何時のだかわからないなんてほざいたり、あんた等ふたりして節穴を装着してるのね!
「あら、可愛い化け物じゃない?これ、美女と野獣の野獣役なのよ」
あたしって、言わないでおきましょう。
気がつきなさいよ!
「あぁビースト役なんだ。良くもまぁ、ぴったりの役があったもんね!」
ニナルが大袈裟に叫んだわ。
「凄い特殊メイクの達人が、この舞台には関わっているんだな!」
秋礼大先輩も叫んだわ。
「特殊メイク?」
ニナルが首を傾げたわ。
「て、事は、この肉襦袢を着て、ラテックスのマスクを被ったのは、そこの本人!?」
秋礼大先輩が叫んだわ。
「うそ!今、跳んだわよ!あ、又!この跳んだり、跳ねたり、ジャンプしたりしてるのが、義妹!?」
発言が被らないなんて、息ピッタリじゃない。
ニナル、あんたの魂のふたごは、この尾苜秋礼大先輩よ。
あたしは違うのよ。
「気がついたようね」
肉襦袢は着てないし、ラテックスのマスクも被ってないけど、跳んだり跳ねたりジャンプしたりはしてるわよ。
「あんたが動けるデヴとは思わなかったわ!」
ニナルがけしの実みたいな目を精一杯大きく見開いたわ。
今のニナルの目はゴマ粒くらいあるわね。
「誰が動けるデヴよ!!」
抗議よ、抗議!
「チビデブドブスは自覚が無いのか!?」
尾苜秋礼大先輩が、目を精一杯見開いたわ。
黒い線みたいだった目が、かろうじて白目と黒目に判別出来るわね。
ふたりとも4白眼なのね。
「誰がチビデブドブスだ!誰が!」
訂正を求めるわ!
「化け物が本人と判明したところで、この御面相では、将来性に期待が持てない。よって、御断りしたいのだが、家の親父は、他人の話を自分の都合の良い様に、曲解するタイプなので、どう断った所で、今回の縁談を進めてしまう。そこで、水曜家の娘さんの方から言ってもらって、スイヨウグループの御大直々(じきじき)に御断りをしていただきたい」
尾苜秋礼大先輩が、頭を下げたわ。
あたしの前で、椅子に座ったまんま。
あたしの訂正請求を、無視して。




