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第八話 出会い


 アオイはラローク達と別れてから、ひたすら森の中の一本道を歩き続けた。

 しかし、歩けども歩けども一向に町は見えてこない。

 そしてとうとう町に辿り着く前に、日が暮れてしまった。

 

 「・・・今日はここで野宿かなぁ」

 

 そう言ってアオイは少し開けた場所まで来ると、近くにあった岩に腰掛ける。 

 当然だが近くに街灯はなく、雲の隙間から漏れ出た月の光だけが、微かに辺りを照らしている。

 

「やっぱり月明かりだけじゃあ心許ないな・・・」


 そう言ってアオイはゆっくりと立ち上がり、近くに落ちていた木の棒と皮を拾ってきた。

 

 「どうせ魔法を使えるなら火の魔法とか、そういう便利な魔法が良かったなぁ。あーあ、腹減ったぁ」

 

 アオイは木の棒と皮で火を起こそうとしながら、誰にともなく呟いた。

 アオイはしばらく粘っていたが、火は一向につく気配がない。

 

 アオイは火を起こすことを諦め、地面にある木の棒と皮をどかし、仮眠を取るためにごろんと寝転んだ。

 

「・・・まさか道端で、それも地面に直接横になって寝る日が来るなんて、考えてもみなかったな」

 

 

 しばらく寝転んだあと、アオイはゆっくりと上半身を起き上がらせ、辺りをキョロキョロと見回す。  

 

 「・・・さっきから、誰かに見られてるような気がする」

 

 その直後、周りの茂みがガサガサと動き出し何かが飛び出してきた。

 

 「ッ!?」

 

 アオイは声にならない悲鳴をあげる。

 茂みから勢いよく飛び出してきたのは、十匹以上の狼だった。

 さらに、いつの間にかその狼の群れは、アオイの周囲を囲んでいた。

 

 「ちょ、ヤバいヤバい!『止まれ』!」

 

 アオイはかなり慌てながら魔法を唱えるが、狼達は止まらずに唸り声をあげながら、ジリジリと近づいてくる。

 魔法が効かないことに、さらにパニックになるアオイ。

 

 「あれぇ?!何で止まらないの?!じゃあ『おやすみなさい』!」

 

 アオイは作り出した闇の塊を、狼達に向かって雑に投げつける。

 だが、狼達には全く効いていないようで、ついに群れの中の一匹が牙を剥き出しにして飛び掛かってきた。

 

 「あぁ・・・終わった・・・」

 

 狼が噛みつこうと飛び掛かってきたほんの一瞬が、アオイには十数秒に感じられた。

 

 アオイが死を覚悟したその時だった。

 

 アオイに飛び掛かってきた狼は、真横から飛んできた炎の塊に吹き飛ばされる。

 これに驚いた狼達は、散り散りになって森の奥へと逃げていった。

 

 アオイは状況を理解できずに目を丸くして、炎が飛んできた方向を見た。

そこには、いかにも魔導師っぽいローブに身を包んだ人が立っていた。

 頭に被っているフードのせいで顔は見えなかったが、アオイよりも身長は少し低いようだった。

 

 

 「た、助けていただいて、ありがとうございました」


 アオイは震える足で立ち上がり、その魔導師に頭を下げた。

 

 「いや、良いって良いって。それよりあなた、魔導師なの?随分変わった魔法を使うのね」

 

 声や話し方から女性だということは分かったが、やはり顔は見えない。

  

 「え、えぇ。まだまだ駆け出しの魔導師ですが・・・」

 

 アオイはぎこちなく答えた。


 魔導師はフードを脱いで、アオイに近づいてくる。

 そこでようやく、顔を確認することが出来た。


 その女性の魔導師は、銀髪のショートカットに顔色は病的なまでに青白く、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。

 だがそんな不気味な雰囲気も、彼女が話し始めるとどこかへ吹き飛んでいった。


 「そうなんだ!丁度良かった!いやー、まさかこんなところで私と同じ魔導師に出会えるなんてねぇ・・・突然だけどあなた、ギルドに入ってみない?」 

 

 漫画やゲーム等ではよくあるが、まさかこの世界にもギルドがあるとは想像もしていなかったアオイは、驚いて後ろに軽く仰け反った。

 

 「ギ、ギルドがあるんですか?」

 

 「あるよ!・・・とは言っても、実は私が所属しているギルドはつい最近出来たばかりで、今魔導師を募集しているところなんだけど・・・」

 

 彼女は苦笑いを浮かべ、頭を掻いた。

 それにと、彼女はつけ加える。

 

 「一応、君の住むところも用意できると思うよ・・・どう?」

 

 アオイは腕を組んで考え込み、二人の間に沈黙が続く。

 


 「・・・とりあえず、そのギルドの様子を見てから決めます」


アオイは腕を組み眉間にシワを寄せたまま、そう答えた。

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