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転生してもエンジニアだった(習作)  作者: 来須奏
新社人+会配信者編

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21/21

Extra 『残されたもの』 事故から、しばらく後

退院してからになりますが、改訂版を予定しています。

―。

テレビの取材。

記者「ご遺族の方に、現在のお気持ちをお聞きしたいと思います」

SNS上の元リスナー。

《やめて差し上げてもろて。》

《そっとしといたれ》

《母上出てくれたんか……》

「……本当によくできた? 息子でした」

《今疑問符が出たか?》

《母wwwww》

《そこは断言してあげて》

「いや、だって変な子だったからw」

《知ってる》

《我々も知ってる》

《公開きせかえショー被害者》

「でも……亡くなったあと、いろいろ確認して驚きました」

テーブルの上には、一冊のファイル。

そしてデータ。

「契約しているサービスの一覧とか、解約方法とか……全部手順書になってたんです」

《手順書》

《最後までエンジニア》

「どれを残して、どれを解約するのか。連絡先はどこなのか。保険のことも全部まとめてあって」

「銀行口座なんかも、家族が必要な手続きをできるように、何をどうすればいいのか書いてあって……」

《…………》

《待って》

《準備良すぎない?》

「パスワードそのものを紙に書いてあるとか、そういう危ない管理じゃないんですよ」

《そこまでちゃんとしてる》

《さすがにそこはインフラ屋》

《死後までセキュリティポリシー生きてんのかよ》

「だから……私たちが困るようなものが、ほとんど残ってなかったんです」

《本当に死期分かってたんやな……》

《「なんとなく」って何だったんだよ》

《あぁ今日か……》

《やめろその台詞出すな》

「お父様のお仕事にも、関わっていらしたそうですね」

「ええ。私は酒蔵を経営しておりまして」

「在庫管理や受注、バックアップなんかの業務システムは、ほとんど息子が構築したものでした」

《酒蔵システムきた》

《小学生から育ててたあれか》

「ですから最初は……正直、一番困るのはそこだと思ったんです」

「息子がいないと、誰がこれを見るんだ、と」

「実際には?」

「……それも、終わっていました」

《え》

「後任の保守会社が選定されていて。契約も済んでいて」

《は???》

「構成図、運用手順、障害時の連絡先、バックアップと復旧手順……必要な資料も全部引き渡されていました」

《準備がよすぎる》

《属人化を最後まで許さなかった男》

《自分自身をSPOFから外してる……》

《「小学生が障害対応を属人化するな!!!!!」がここで帰ってくるのかよ》

「最後の引き継ぎ確認だけ、私には『ちょっと整理したから確認して』としか言わなかったんです」

「まさか……自分がいなくなった後まで考えていたとは」

「ご本人から、何か聞いていましたか?」

「いいえ」

少し間を置いて。

「ただ――」

「あの子、昔から言ってたんですよ」

「自分がいなくても動くようにしなきゃ、って」

《…………》

《それサーバーの話だったじゃん》

《人間に適用するなよ》

《自分まで冗長化設計の対象にするな》

「だから、死ぬ準備をしてたのかって聞かれると……私にも分かりません」

「ただ、あの子らしいなとは思います」

「最後の予約投稿では、ご自身の人生について『幸せだった』という趣旨の言葉を残されていました」

「はい」

少しだけ笑う。

「あの子がそう言ってるんだから、そうだったんでしょう」

《母……》

「だから私も、かわいそうな子だったとは言いたくないです」

《予約投稿読んだんだな》

《ちゃんと届いてる》

そして父が横から小さく。

「ただなぁ……」

「業務システムの引き継ぎ先まで決めるなら、一言くらい言えよとは思いますけどね」

《wwwww》

《それはそう》

《最後まで報連相が足りない》

《技術資料:完璧》

《家族への説明:不足》

《エンジニアあるあるで締めるな》

「そういうところは、よくできた?息子でしたね」

《また疑問符wwwww》

《母の評価揺らぐなwww》

そして放送終了後、リスナーの間で一枚のスクショが再び回る。

昔の配信。

《主、自分がいなくなったらこの酒蔵のシステムどうすんの?》

:「僕がいなくても動くように作るのが仕事でしょう?」

当時のコメント。

《主また真面目なこと言ってる》

《珍獣のくせに》

《死亡フラグみたいに言うなw》

そして何年も後、そのスクショについた新しい返信。

《…………本当にやり切る奴があるかよ。》

「それと……息子を愛してくださった皆様が、本当にたくさん絵を描いてくださって」

「ファンアートっていうんですか?」

「それが今でもたくさん残っているので」

少し笑って。

「不思議と、寂しくはないんです」

《…………》

《母上……》

《よかった》

《俺らの絵も少しは残せたんだな》

「かわいい絵とか、格好いい絵とか」

「車とと一緒にいる絵とか」

「サーバーの前で困ってる絵とか」

「あと、例の着せ替えの絵もいっぱいありましたね」

《あっ》

《…………》

《ざわ……》

《ざわ……ざわ……》

《


おい待て》

《母上どこ見てる》

「インターネット上には、かなり多くの作品が投稿されているそうですね」

「そうみたいですねぇ」

《記者ァ!!!》

《そこを掘るな!!!!》

《危険区域へ誘導するな》

「あ、でも――」

「見る場所は息子から『ここだけ!』って言われてたので」

《!?》

《お》

「私はそこしか見てないんですけど」

《…………》

《よっしゃあああああああ》

《ゾーニング成功》

《設計通り!!!!》

《主!!!!》

《お前のアクセス制御生きてるぞ!!!!》

《生前設計した境界が遺族を守ってるwww》

「他にもあるんですか?」

《ないです》

《ありません》

《ございません》

《母上は知らなくていいです》

《そのディレクトリは存在しません》

《404です》

《アクセス権限がありません》

「ファンによる作品には、さまざまな――」

《記者黙れ》

《そこから先は禁足事項だ》

《報道の自由にもゾーニングはあるぞ》

「でも息子からも、『検索するときはこのタグだけにして』って何度も言われてましたから」

《何度もwww》

《本人めちゃくちゃ警戒してた》

《危機管理能力SSS》

《自分が死んだ後まで母親の検索経路を制御した男》

「『絶対に関連タグを辿らないで』って」

《wwwwwww》

《具体的すぎる》

《主、全部把握してたんだな》

《深淵を知る者》

「理由を聞いたら」

少し思い出して。

「『世の中には、知らなくていいこともあるんです!!!!』って」

《主wwwwwww》

《脳内再生余裕》

《最後まで正しかった》

「……なるほど」

《記者も察した》

《察するな》

「だから約束は守ってますよ」

「この子が『ここなら大丈夫』って教えてくれたところだけ」

そして母が、展示された一枚を見る。

白髪の青年が、黒い5071のボンネットに腰掛けて笑っている。

「……こういう顔、本当にしてましたね」

《…………》

《あかん》

《急に刺すな》

「本人は『ふにゃっとしてない』って言ってましたけど」

《してた》

《めちゃくちゃしてた》

《常時ふにゃ》

「だから、皆さんが覚えていてくださる間は」

「いろんなところに、あの子がいるみたいで」

《母上……》

《描いててよかった》

《これからも描くよ》

《全年齢でな》

《最後の一言重要》

そしてコメント欄の古参が一言。

《主。ゾーニング、正常稼働してるぞ。》

返信。

《監視結果:正常》

《アクセス制御:正常》

《母上:全年齢領域のみ》

《深淵:隔離継続》

《総合判定:ヨシ!》

……生前の青年が見たら、

「死後まで監視レポート上げなくていいんですよ!!!!」

とかいってそう。

――後日。

なぜかファンアート界隈で、一斉に過去作品の設定変更が始まった。

《例のインタビュー見た》

《見た》

《母上がFA見てる》

《全年齢タグしか見てないらしい》

《ゾーニング成功》

《…………念のため鍵かけるか》

《賛成》

《主も生前ずっとゾーニング言ってたしな》

そして――

成人向け作品:閲覧制限

センシティブ作品:年齢確認

検索タグ:整理

全年齢FAとの導線:分離

《よし》

《これでいい》

《母上誤爆防止》

《深淵は深淵で楽しくやろう》

《二次元は自由》

《三次元は同意》

《そして母上には見せない》

しばらくして。

《なんか成人向けFAの閲覧制限率めっちゃ上がってない?》

《仕様変更です》

《理由:母》

《Severity 1:母》

《影響範囲:性癖》

《恒久対策:ゾーニング強化》

《主が生前ずっと言ってたことじゃねえか》

さらに古参絵師。

《本人いなくなったからって、生前嫌がってた境界を壊すのは違うからな》

《それ》

《本人が許してたのは「自由に描いていい」まで》

《「誰にでも見えるところに置いていい」とは言ってない》

《運用ポリシー継続》

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