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転生してもエンジニアだった(習作)  作者: 来須奏
新社人+会配信者編

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20/21

インフラエンジニア編最終回:ラストドライブ

「今日は運手集中するために棒読みちゃんので読み上げだけにします。聞き逃しあったらごめんなさい」

《、おっ今日はナビシートから主を横から見る視点か》

《運転姿やはり絵になる》

『うんてんすがた、やはり、えになる』

「運転してるだけですよw」

『しろかみ、ろんぐぽにて、くろいびーあーるぜっと』

『えになる

「はいはいw」

《照れてる》

少し笑いながら、そのまま流れに合わせて走る。

『どこか、もくてきち、ある?』

「いえ」

「今日は、ふらふらなんとなく走ります」

《珍しい》

《完全ノープラン?》

『かんぜん、のーぷらん?』

「完全ノープランですねぇ」

「右行きたいなと思ったら右行って、こっち走ってみたいなと思ったらそっち行って」

《自由だ》

「そう。今日はそれでいいかなって」

しばらく走る。

何でもない街並み。

コンビニ。

住宅街。

信号待ち。

いつもの日常が流れていく。

『こういう、どらいぶ、すき』

「僕も好きですよ」

『じんせい、にしゅうめ、でも、みち、のーぷらん』

「なんか壮大な話にしようとしてません?」

《草》

《人生もふらふら》

「まあ人生もそんなもんでしょうw」

《主が言うと重い》

「重くしないでくださいよ」

青信号。

青年はゆっくり発進する。

「行き先決めなくても、走ってればどっかには着きますから」

《名言》

「名言じゃないです!!!!」

《切り抜き》

「やめてw」

《人生二周した男の言葉》

「ただのドライブの話ですよ!?」

少し間が空く。

青年は前を見たまま、と笑う。

「今日は本当に、それだけです」

「コイツと適当に走って――」

棒読みちゃんから流れてくる、くだらないコメントを聞いて。

「皆さんと喋って」

「お腹空いたら、どこかでなんか食べて」

《500g》

「だから今日は食べませんってwww」

《カレー》

「はいはいw」

《ぽんぽん》

「ドライブ中まで持ってくるな!!!!」

車内に笑い声。

いつもの配信。

本当に、ただそれだけ。

そして今日は目的地がない。

だから誰にも――本人にすら――

このドライブの終着点は分からない。

青信号になってゆっくり走出す。

(あえて交差する道路から大きくおおきなってくるヘッドライトの明かりについての描写を省く登校時にこの文章は削除する)


「……ちょっっっっ!!!!」

映像が激しく乱れる。


――と大きな音を拾いきれず無音になる。時々音声が復帰するががりがりという音とタイヤのスキール音だけしか聞こえない

イクトの体が大きく揺れて産ん右ドアに打ち付けられるがらすが飛び散り夜の街を映していた車窓には鉄の方塊が目めり込んでいる。



何かが砕ける音。


金属が潰れる音。


そして――


ヴォォォォォォォォン――!!


アクセルが戻らなくなったのか、エンジンだけがレブ付近で唸り続けている。


カメラは傾いたまま。


もう車内をまともに映していない。


《え》


《!?》


《主!?》


《事故?》


《おい》


《主返事して》


ヴォォォォォォォォン――!!


その音の中で、かすかに何かが動く。


荒い呼吸音

痛みをこらえるかのよう苦し気声

け弾しけたたましくなり続ける警告音

震え

る手。


ゆっくりとエンジンスタートボタンへ伸びていく。


一度、届かない。


もう一度。


指先がボタンに触れる。


――ピッ。


ヴォォォォォ……

車内にあった光が消え

…………。


エンジンが止まる。


急に静かになった車内に、


警告音だけが残る。


《主》


《返事して》


《誰か場所分かる?》


《通報》


《もうしてる》


《主!!》


の荒い呼吸。


「…………ぁ……」


ほんの少しだけ、声が出る。


「あぁ……」


間。


擦れた声で。


**「……今日か…………」**


《何言ってんの》

《主?》

《今日って何》

《喋らなくていい》

《救急来るから》

《頼むから動くな》

やがて、傾いた映像の端に橙色の光が見える。

「すごく.....................たの.......しかった.....な......」

小さかった光が、少しずつ大きくなる。


《火?》


《火出てない?》


《主!!》


《逃げられる!?》


《無理に動くな》


《誰か早く》

の返事はない。


聞こえるのは苦しそうな呼吸だけ。


そして。


映像が一度、大きく乱れる。


――暗転。


**NO SIGNAL**


黒い画面。


だが配信そのものは、まだ切れていない。


音声だけが残っている。


《主》


《主》


《お願い》


《返事して》


《聞こえてる?》


《救急もう向かってる》


棒読みちゃんは設定されたまま。


だから、流れてくるコメントを、


いつもと同じ声で読み続ける。


『しゅ、へんじして』


『だいじょうぶ』


『きゅうきゅう、むかってる』


『おねがい』


黒い画面。


火の音。


遠くで何かが割れる音。


そして、突然クラクションが鳴り響いた。

その音に重なって、棒読みちゃんが、いつもの声で呼び続ける。

『しゅ、へんじして』

『おねがい』

配信は、まだ終わらない。

やがて、すべての音が途切れた。



【この配信は終了しました】



あの日から、配信はされていない。


いつもの配信開始通知もない。


「こんばんは」もない。


サーバーの話も。


車の話も。


くだらないコメントへのツッコミも。


何もない。


――事故当日の深夜。


テレビでは、交通事故現場からの中継が続いていた。


『では、現場から中継です』


画面が切り替わる。


暗い道路。


赤色灯。


規制線。


消防車。


道路には消火活動の跡が残っている。


そして画面の奥。


原形をほとんど失い、黒く焼けたクーペタイプの乗用車。


その少し離れた場所には、大型トラック。


『今夜、こちらの道路で大型トラックと乗用車が衝突する事故がありました』


『警察などによりますと――』


淡々と読み上げられるニュース。


事故の詳細。


救急搬送。


通行止め。


警察による調査。


そして、翌朝


『乗用車を運転していた男性は――』


一瞬だけ間がある。


『搬送先の病院で死亡が確認されました』


テレビの前では、


まだ誰も、それを受け入れられない。


SNSでは事故直後から同じ言葉が飛び交っている。


《違うよな》


《似た車なだけだろ》


《黒いクーペなんていくらでもある》


《主から発表あるまで待とう》


《誰か違うって言ってくれ》


《今日の配信の場所と近くない?》


《やめろ》


《特定すんな》


《公式発表待て》


ニュース映像が、もう一度事故車を映す。


燃え尽きた車体。


色すらほとんど分からない。


車種を知らない人間が見れば、


ただの、


**「焼損したクーペタイプの乗用車」**


だった。


けれど。


あの車を何年も配信で見続けてきた人たちは、


画面の前で黙っていた。


《…………》


《いや》


《違う》


《違ってくれ》


テレビは何も知らない。

『死亡:榊 生久人さん(19)』


この車が何十年という時間を越えて残ったことも。


一度人生を終えた男が、もう一度この車を見つけたことも。


車台番号を見て、


**「……お前、まだいたのか」**


と笑ったことも。


知らない。


ニュースは次の項目へ進む。


『続いて――』


画面から事故現場が消える。


のテレビは、


何事もなかったように次のニュースを伝えている。


けれど。


いつもならこの時間にもどこかで動いているはずのアカウントは、


沈黙したままだった。


配信予定――なし。


新しい投稿――なし。


最後のアーカイブだけが残っている。


タイトル。


**『今日はふらふらドライブします』**


サムネイルには、


黒いBRZの運転席で、


いつもの顔をしている青イクト。


その配信のコメント欄には、


今も新しいコメントが増え続けていた。


《主》


《帰ってこい》


《何でもいいから投稿して》


《事故ったって笑い話にしてくれ》


《頼むよ》


そして。


《主、生きとるやん》


そう書いて、


いつものように本人から、


**「生きてますよ!!!!」**


と返ってくることを待っている人もいた。


返事は、


まだない。


翌朝イクトのチャンネルに1つの動画が投稿された。

『タイトル:ごめんなさい。』

「みなさん急にごめんなさい。多分なんですけど、僕近いうちに死ぬと思う。直観的になんとなくなんですけど多分起きると思う。具体的な日時は分からないので。一応予約投稿で準備しておきます。会愛車と再会できたこと、今世の両親に愛情いっぱい育ててもらった、前世で経験できなかったたくさんの青春、皆さんと笑い合った日々はすごく楽しかったですよ。そして何より幸せでした。僕はね、大切にしてきたものにも魂は宿るんじゃないかなって思うんですできればアイツと一緒に行けたらずっと幸せだなって思ったりします。まあ、そんなことは無いんでしょうけど。だから、皆さんにはちゃんと幸せの中で死んで逝ったて思っていてほしいです。『なんでもない日々を抱きしめて旅立ます』。それじゃまたね?」

《予約投稿か》

《主自身が盛大なフラグ建てとるやん・・・・・》




《分かった。主が幸せだったって言うなら、そこは信じる》

《でも帰ってきてほしかったよ》



予約投稿から、3分後。


もう一度、通知が鳴った。


**新しい動画が投稿されました。**


タイトルは、


**『新曲:何もない日々を噛みしめてFinalEdit』**


《え》


《また予約投稿?》


《主》


《新曲……?》


《こんなの聞いてない》



動画を開く。


いつものような前置きはなかった。


「どうも」とも言わない。


曲についての説明もない。


AIをどう使ったとか。


制作に何日かかったとか。


「興が乗ったので作りました」とも言わない。


画面には、ただ彼がいる。


白い髪を後ろで結んで。


派手な衣装でもなく。


CHECK ENGINEのパーカーでもなく。


ごく普通の服で。


カメラの前に座っている。


そして――


静かにイントロが始まる。


彼は何も説明せず、


歌い始める。


いつもの配信で見せる、


コメントに振り回されている顔でもない。


BRZの話をしている時の、


でれっとした顔でもない。


母親に着せ替えられて、


真っ青になっている顔でもない。


セルフ推しを弄られて、


必死に否定している顔でもない。


ただ、


**穏やかに笑っている。**


《…………》


《こんな顔するんだ》


《主》


《めちゃくちゃ穏やかな顔してる》


《なんで今これなんだよ》


誰かがコメントする。


《これ撮ったのいつ?》


答える人はいない。


動画の中の彼も、


何も答えない。


ただ歌っている。


何でもない朝。


何でもない食事。


好きな音楽。


サーバーを弄って夜更かしした日。


家族に振り回された日。


くだらないことで笑った配信。


車に乗って、


目的地も決めずに走った時間。


そんな、


世界の歴史には何一つ残らないような日々を。


大切そうに歌っている。


《最終回みたいに歌うなよ》


《また次の曲出すんだろ》


《普通に次の配信で制作話してくれよ》


《「興が乗ったので」で済ませろよ》


《主》


《返事して》


曲は止まらない。


途中で一度だけ、


彼がカメラを見る。


いつもの配信なら、


そこでコメントを拾って何か言っただろう。


けれど、



ただ少しだけ、


笑う。


その顔は、


あの最後のドライブで見せていたものと、


よく似ていた。


――曲が終わる。


余韻。


彼は数秒、


何も言わずカメラを見ている。


そして、


ほんの少しだけ頭を下げる。


動画はそこで終わった。


エンドカードもない。


次回予告もない。


宣伝もない。


「チャンネル登録よろしくお願いします」もない。


ただ、


**『何もない日々を噛みしめて』**


というタイトルだけが残る。


コメント欄。


《主》


《いい曲だったよ》


《ちゃんと聴いたぞ》


《また歌えよ》


《次も待ってるから》


《何もない日々って、こんなに大事だったんだな》


《あんなに毎回事故ってたのに》


《何もない日なんてほとんどなかったじゃねえか》


《草》


《……草》


《笑わせんなよ》


しばらくして。


ひとつのコメントが、ゆっくり評価を集め始める。


《「かわいそうだった」で終わらせるなって言ってたもんな》


その下に、


《じゃあ笑って覚えとく》



《ぽんぽんチェック》


《ステーキ500g》


《カレー山盛り》


《眼鏡屋さん》



《セルフ推し》


《サーバー》


《5071》


《毎回なんか事故ってた》


そして最後。


《めちゃくちゃ楽しそうだった》


誰かが返す。


《うん》


《幸せそうだった》


《本人が言ってたじゃん》


《「はい。幸せですよ?」って》


動画の中では、


もう一度再生された曲が、


静かに最初から流れ始める。


そこには、


英雄もいない。


世界を救った人間もいない。


ただ、


二度目の人生で、


好きなものをたくさん見つけて、


何でもない日々を大切に生きた、


一人の人間が歌っている。


いつもは見せなかった、


穏やかな笑顔で。

――――白い世界で、イクトは目を覚ました。

すぐ後ろから、ガチャ、ピッピッ、と聞き慣れた解錠音がした。

振り返ると、そこにはアイツがいた。

「なんだ。お前も来たのか」

運転席へ乗り込み、シフトノブへ手を添える。

「行こう」

再びエンジンに火を灯し、走り出す。

「なんだ、お前。あっちにいた頃より調子いいじゃないか。まるで新車みたいだ」

流れていく白い景色を眺めながら、イクトは懐かしそうに笑った。

「 勢いで購入契約書にサインした日。覚えてるか?納車前なのに、さんへ頼み込んでエンジンをかけさせてもらった日。会社のボーナス制度がなくなって、ヒーヒー言いながらローンを払ってた日々も……いろいろあったなぁ」

ふと、進む先に懐かしい顔をした一団が見えた。

『おにいちゃん! 楽しかった?』

「うん! すっごく!」

イクトは迷うことなく答えた。

「思い残すことは……ないかな。ああ、でも――」

少しだけ、寂しそうに目を伏せる。

「イクトとしての母さんを、泣かせちゃってないかな……」

『大丈夫。今は泣いていても、ちゃんと幸せだったって伝わるよ』

「そうかな?」

何もない日々を噛みしめてFinalEditも聞けます。

レースメカニック編もお楽しみに。

今作の反省点を元に政策の方進めていきます。

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