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限界OL、前世で私を殺した最強の大魔法使いに執着されてます。~生き残るためと言い張って毎晩溺愛してくるお陰で完全復活~  作者: カクナノゾミ


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第48話:味方の獲得(前編)

 給湯室での対峙から三日が経った。


 白峰さんは何事もなかったかのように仕事をしている。「先輩、お茶いりますかぁ?」「この資料、コピーしておきますねぇ」。いつもの甘い語尾伸ばし。完璧なゆるふわ後輩。


 でも、もう騙されない。

 あの瞳の奥にあるものを、もう知っている。


 問題は、白峰さんがまだ何かを企んでいるかどうかだ。給湯室であれだけ本音を吐いたのに、翌日から平然と元に戻れる精神力。それが示すのは一つ。


 あれは感情の爆発ではなく、宣戦布告だった。


 § § §


 夜。マンションのリビングで、エリオットに状況を説明した。


「白峰さんが前世の聖女。記憶が完全に戻っている。そしてあなたの千里眼を欺いているのは、魔法ではなく『神の力』」


 エリオットの蒼い目が、わずかに細くなった。


「……認知阻害か。なるほど、道理で探知できなかったわけだ」


「あなたは魔素を手がかりに探すから、神の力由来の呪詛は見えない。そもそも検出の原理が違う」


「前世でも我々はその盲点を突かれた。聖女の工作が最後まで見抜けなかった最大の理由だ」


 エリオットの声に、珍しく悔恨の色が滲んでいた。

 あの宮廷で全てを見通していたはずの最強の魔術師が、聖女の暗躍だけは見抜けなかった。それは今も変わっていない。


「で、あんたに聞きたいことがある」


「何だ」


「白峰に『聖女の魅了』の力は残ってる?」


 エリオットが沈黙した。考え込んでいる。

 やがて、ゆっくりと頷いた。


「魅了は聖女の基本能力だ。認知阻害の呪縛が機能している以上、魅了も健在だと考えるべきだろう。周囲の人間が彼女に対して好意的なのは、単なる人柄の良さではなく――」


「神の力による洗脳に近い、ってこと」


「そうだ」


 私は、テーブルの上に広げた手帳を見つめた。

 白峰さんの行動記録。この三日間で自分が逆に観察し始めたもの。


「チームのメンバー、何人かの態度が不自然なのに気づいた。白峰さんの提案には必ず賛成するし、白峰さんの意見と違うことを言おうとすると、急に『やっぱりやめます』って撤回する。あれは自分の意志じゃない」


「聖女の微細な魅了だな。対象の判断力をわずかに歪め、聖女に対する好意と服従を無意識に植え付ける。本人は洗脳されている自覚がない」


 私は手帳を閉じた。


「なら、やることは決まってる」


 エリオットが、静かにこちらを見た。


「私が一人ずつ、あの人たちの目を覚ます」


 § § §


 翌朝。

 私はエリオットの弁当をいつもより多めに包んで出勤した。


 弁当は二つ。一つは自分用。もう一つは――差し入れ用。


 最初のターゲットは、財務省の山本さんだった。

 三十代前半。真面目で几帳面だが、最近やたらと白峰さんの意見に追従している。以前は独自の分析視点を持っていたのに、ここ二週間ほど、自分の意見を出さなくなっている。


 昼休み。

 山本さんが一人でコンビニ弁当を食べているところに、さりげなく隣に座った。


「山本さん、お疲れ様です。よかったら、これどうぞ」


 エリオットの弁当箱から、だし巻き卵とサラダを小皿に取り分けて差し出した。

 この弁当には、精神安定のバフが微かにかかっている。エリオットが「カレンシュが食べるための最高の食事」として魂を込めて作ったものだ。聖女の微細な魅了を打ち消すほどの力はないが、対象の精神を安定させ、正常な判断力を引き戻す効果がある。


「え、いいんですか? 手作りですか、これ」

「彼氏が作ってくれるんです。量が多いので」


 山本さんが一口食べた瞬間、わずかに目を見開いた。


「……美味しい。すごく美味しいですね、これ」


「でしょう? 卵焼きに関しては彼氏の方が私より上なんですよ、悔しいことに」


 笑いながら、さりげなく話を振った。


「ところで、山本さん。先週の関税シミュレーション、私は山本さんの仮説の方が正しいと思ってるんですけど」


 山本さんの箸が止まった。


「……先週の?」


「白峰さんの提案に合わせて修正されましたよね。でも元の山本さんの分析、すごく面白い視点だったんです。第48話二段階の変動リスクを織り込んだモデルは、むしろ山本さんの方が正確じゃないかって」


 山本さんが、ぼんやりとした目で私を見た。

 それから、少しずつ焦点が合ってきた。霧が晴れるように。


「あ……そうだ、あれ。なんで直したんだろう、僕。元のモデルの方が論理的に正しいのに。なんか急に『白峰さんの方がいいかな』って思って……あれ?」


 私は、静かに微笑んだ。


(一人目。正気に戻りかけてる)


 § § §


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

私の反撃が始まりました。武器は令嬢の「人心掌握術」と、大魔法使いの「精神安定バフ弁当」。


神の洗脳に対して、弁当と誠実な対話で挑む。これぞ限界OLと最強のヒモのコンビネーション。


フォロー・応援(♡)・★での評価が、続きを書く力になります!

感想・コメントは全件お返事します。「弁当が武器w」「山本さん覚醒フラグ」「エリオットの弁当バフやばい」なんでも嬉しいです!

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