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異世界転移!  作者: 中原
9章 土の剣
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1話

 あれだけ走り、その上修行もしたというのに目覚めはよく、筋肉痛にもなっていなかった。

 これも魔法のおかげなのだろうか。


「ふぁ……2人とも朝強いですねえ」


 欠伸を噛み締めながら宿屋1階の食事を取る場所にアリアさんに連れられたジルさんがやって来た。

 昨日は俺の背中でも寝てたのにまだ寝足りないのか。


「私たちが強いんじゃなくて、あなたが弱すぎるのよ」

「あーそうかもしれませんね。ふぁ」


 また欠伸してる。大丈夫かな。

 これからの旅を少し心配しつつ、朝食を取った。

 朝食を済ませ、いい時間になると国王陛下の助言通り、キャメロンさんという人の家に向かう事にした。

 キャメロンさんはこの街の有名人みたいで、街の人に道を聞くとすぐに教えてくれた。

 街の人の教えてもらった通り進むと、他の家よりも大きな屋敷が現れた。


「ここがキャメロンさんの家なのかな?」


 俺は呟く。


「そのようですね。表札もキャメロンと書いていますし」

「居ればいいのだけどどうかしら?」


 玄関の扉にはライオンの形をしたノッカーが付いており、俺はそれを使ってドアを叩いた。

 鈍い音が響く。

 その音を聞き、屋敷から出てきたのは黒い服にオールバックの髪をしたおじさんだった。


「何か主人に御用でしょうか?」


 主人に御用でしょうか?

 口ぶりからしてこの人は執事さんのようだ。


「はい。キャメロンさんにお聞きしたい事があるので取り次いでもらえませんか」

「失礼ですがあなた方は?」

「自分達は国王陛下の命を受けて旅をしているものです」

「陛下の?」

「はい。これがその証拠です」


 俺は国王陛下から預かった手紙を執事さんに見せた。


「これは大変失礼致しました。どうぞ中へ」


 国王陛下の手紙を見せると部屋の中に入れて貰えた。

 さすが国王陛下。効果は絶大だ。


「主人を連れてきますので、少々お待ちください」


 応接間に案内されそこで待つ事しばらく。

 昔の音楽家のような巻き髪をした鼻の大きな男の人が入ってきた。


「どうもキャメロンです」


 この人がキャメロンさんらしい。

 キャメロンさんに続き、俺達も手短に自己紹介をする。


「伊織です」

「アリアです」

「ジルです」

「それで陛下からの手紙をお持ちとか」

「はい。これです」


 キャメロンさんは手紙を受け取ると、封を切って目を通し始めた。

 しばらく無言で待っていると、見終わったらしく手紙を封筒の中に戻した。


「なるほど。要約しますと、聖剣の情報を教えて欲しいと。そういう事でよろしいですかな」

「はい。何か知ってることはありますか?」

「お役に立てるほどの情報かわかりませんが一応。ついて来てください」


 応接間を出て行くキャメロンさんに付いていくと、本がズラリと並ぶ部屋に案内された。

 キャメロンさんはその部屋に入ると、本棚から本を取り出しては戻すを繰り返した。

 やがて目当ての本を見つけたようで、1冊の古い本を小脇に抱え戻って来た。


「聖剣というのはこれらの事でしょう」


 キャメロンさんが該当部分と思われる箇所を指した。

 古ぼけた本には4本の剣が描かれていた。

 その内の1本は見たことのある形をしていた。


「コレ、イオリの剣よね」

「うん」


 白黒だけど、フォルムがバッチリ同じだ。

 となると他の聖剣はこの刃の部分が波打ってるのと、細くて刀身に彫刻が施されてるのと、普通の西洋の剣みたいなヤツか。


「この剣たちがどこにあるかわかりますか?」

「それは……」


 パラパラと本のページをめくって行く。


「……残念ですが、そこまでは書いていないようです」

「そうですか」


 地図じゃ大体の位置しかわからないから、もっと詳しい場所を知りたかったんだけど。そう上手くはいかないか。


「他に何か剣の情報とか知りませんか?」

「そうですね……パッと思い出せるのはこれだけです。お役に立てず申し訳ない」

「いえ、剣の形がわかっただけでも十分ありがたいです」

「他にもないか今から調べてみます。もし何か情報があれば連絡しますので、居場所を教えて貰ってもいいですか?」

「街の入り口近くの宿屋に泊まってるので大体はそこにいると思います」

「わかりました。何かわかれば宿屋を訪ねます」

「お願いします」


 帰ろうとして、重要な事を忘れていたのを思い出した。


「あっ、あのー、キャメロンさん。変なこと聞きますが、異世界の行き方とか知りませんか?」


 これだけ本があるんだ。もしかしたら1冊ぐらいそういう本があるかもしれない。

 しかし俺の淡い期待とは裏腹に、キャメロンさんは首を傾げた。


「異世界の行き方ですか。それは小説の話ですか?」

「……いえ、なんでもないです。忘れてください」


 俺はありがとうございます、とお礼を言ってキャメロンさんの家から外に出た。

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