最初の出会い
すっかり日が暮れていた真夏の夜。小学からの友人といつも通り歩いていた部活の帰り。
世間話をしながら、重い教科書をたくさん詰め込んだ鞄を背負って…。
「じゃ、また明日」
「おう、じゃあな」
いつもと同じ交差点で、いつものように友と別れた。
ここから家まで更に5分程歩く。明日の授業は何だったかと考えていると、道端に少女が倒れていた。
住宅街の細道で夜は人通りが少なく、誰にも見つけてもらえなかったのだろう。
うつ伏せに倒れた体を仰向けにし、
「大丈夫か…!」
と声をかけた。肩の上でバッサリと切っている黒い髪で、顔だけは妙に大人っぽい。体は子供だ。失礼だな俺。
反応は無いと思ったとき、少女の目が動き、瞼が少しずつ開いていった。
俺は再度同じことを言うと、
「すみません…。居眠りしてました」
「――は?」
予想外の答えに戸惑いつつ、さらに質問をしようと思ったが、状態もあまり良くなさそうだったのでやめた。
グギュルルルル〜〜っと腹が鳴った音がした。
あ、俺の音な?部活した後は腹が減るよな? ちょっと!か、勘違いしないでよね?
「プ!クスクス…」
「おい、何笑ってんだよ」
「ご飯にしましょう!家行っていいですよね?」
「まぁ、飯食うくらいなら…」
「早く行きましょ行きましょ!」
―数分後家に着いた。ポストを確認し、鍵を開け玄関を開けた。
「ただいまー」
「お邪魔しますー」
「おい!ちょっと待て。お前道端にぶっ倒れてて汚いからシャワー浴びてこい。その間飯作っとくから」
「ちょっとー!こんな可愛い私を汚いって言わないでもらえますか?」
「はいはい。風呂はあっちだ。着替えは俺ので我慢してくれ。嫌なら裸でもいいぞ」
「我慢します!あっちって言われてもわかりません」
風呂まで案内し、俺は荷物を部屋に置き、料理の準備を始めた。今日は何にしようか…。
今日はメンチカツにすることにした。エプロンを着て手を洗い、さっそく始めた。
メンチカツを揚げてる途中、友人が家に来た。
「よう、来たぜ」
「あ、そういえば今日だったな」
「おいおい忘れちゃ困るぜ。」
今日は花火大会がある。俺の家からは結構キレイに見えるため、友人を誘ったのだった。
「澄川、飯食ったか?」
「いや、お前の家で食わせてもらうつもりだったわ。すまんがいいか?」
「大丈夫だ。1人客が増えてるが気にしないでくれ。」
「誰だ?客って」
揚げ終わったメンチカツを取りながら言おうとしたとき――
「ねぇこれサイズでかいんだけどー」
少女がリビングにタオルを巻いただけの姿で手に俺の服を持って来た。
「お前、そういう趣味だったのか…」
澄川は俺に嫌悪の眼差しを向けてそう言った。
「違うわ!お前は服着てからここに来い!髪乾かせ!」
澄川へ全力で拒否し、俺はメンチカツを皿に乗せ終え、少女の肩を押し脱衣所へ閉じ込めた。
「まず着替えろ」
「――着替えたよ」
「開けるぞ」と1言言って脱衣所のドアを開けると、
「残念まだでしたー!アウゥッ!!」
さっきと何も変わっていない格好の少女に拳骨をし、ドアを強く締めた。
「痛いー!暴力だぁー!!」
「まぁ…手が出た事は謝るが、100%お前が悪い。」
その後、少女に服を着せドライヤーで頭を乾かし、リビングに連れてきた。
澄川は携帯を弄っていた。
「悪い。このバカのせいで遅くなった」
澄川は携帯からこちらに目を向け、
「大丈夫だ。それよりあいつは誰だ?」
俺は帰り道の出来事をすべて話した。
「なるほど…。話は飯を食いながらだな。」
「だな」
テーブルへ夕食を運び、三人で食べた。俺はまっさきに聞こうとしていた事を聞いた。
「お前の名前はなんだ?」
「ハルです。ハルって呼んでください。あなたの名前は?」
「あ、俺の名前は多賀誠也だ。せいやって呼んでくれ」
「わかった。」
とりあえずお互いの名前を確認し、ようやく話がしやすくなった。
「なぁハル、お前なんで道端で居眠りなんかしてたんだ?」
サラダにドレッシングをかけながら聞くと、
「ゴホン!腹が減って倒れていたの!」
「まぁまぁ落ち着いて。お茶足りないから注ぐね。」
澄川は落ち着かせようと頑張っていた。
「家はどこなんだ?親が心配してるんじゃないのか?」
「私は親の許可を貰ってここに来たの。だから大丈夫」
「そうか…。って何しに来たんだ?」
「それは後でわかりますよ。」
「何だそれ?」
と言い、メンチカツを口に入れた。続いて澄川もメンチカツを口に入れた。
「うまいな。お前の飯はいつも。」
「ありがとな。」
「うん!美味しい!」
「そうか、良かった」
俺は後でわかるという言葉が頭から離れなかった。
あの後、ハルは花火を俺と澄川と共に見たあと、帰っていった。
あれから5年経ち、俺は高校2年生になった。
部活でやっていたテニスを辞めて、平穏な高校生活を送っていた。
澄川とはクラスは違うが、同じ学校に通い今でも一緒に帰宅している。
今でも時々、ハルの話になる。あの1言が未だに俺達の頭の中から離れなかった。
新連載です。評価お願いします。つまらないとは思いますが、悪い点を教えていただ蹴るとありがたいです。よろしくお願いします。