城の中
「まだ掃除が甘いですよ!」
朝から少し怒ったような声が聞こえる。
「す、すみません。すぐにやり直します!」
大学生の男は慌ただしく動きながら作業を急ぐ。
働かせてくださいと言った日から1週間が経った。
城の仕事は思ったよりも多かった。
だが、へこたれている場合ではないと認められなければ
途方に暮れてしまうし情報も貰えない。
バイトだと思えば働くことは大した問題ではないが、
なんせ、城の仕事だ。
メイドさんも10人以上はいるし、教育係になった
執事長のデルタさんは厳しいが理不尽なことは言わない。
仕事が終われば、ゆっくりしなさいと言ってくれる。
ただアパートに住んでた時と比較して広すぎる。
比較しなくても広いのだが…
とりあえずはちゃんと覚えよう。
「蓮よ、すまないが3階の支度部屋に行ってヘッドドレスを取ってきてもらえないか。」
執事長デルタから王女様のを取ってくるように言われた。
「かしこまりました。」
確か何種類かあったのは覚えている。
リーシエ王女のお気に入りは白のやつだっかな
3階に行くことはこれで2回目だ。
確か初日にデルタ執事長と案内された以来だった。
リーシエ王女にはまだ1回も会ったことがない。
それは当たり前だが、少し見てみたいよなあ。
王女なんてテレビでしか見た事ないよ。
なんて考えていると支度部屋に着いた。
ここの掃除はメイドさんがやっているのかな?
隅々まで手が行き届いたのがひと目でわかる。
これがプロとの違いかと実感させられた。
こういうのみるとやる気が湧くのは僕だけではないだろうけど。
「ふんふん♪」
んっ?声が聴こえて来る。
でもここの部屋達は支度部屋だったりであまり人がいないしリーシエ王女の見送りで全員下にいるはずだよな。
気のせいかも…
「ふん♪、ふんふん♪」
やっぱり楽しそうな鼻歌が聴こえる。
どこからだ…
耳を澄ます。
えっ向かい側?
向かい側の部屋は女性支度部屋と聞いてたけど。
とりあえず様子をみよう。
「ふん♪ふん♪ふん♪」
楽しそうだなあ。
最近楽しいなんて気持ち忘れてたな。
必死だったってことだよね。
鼻歌聴いてたら自然とは僕も鼻歌を歌っていた。
「「ふん♪ふん♪」」
鼻歌が重なる。
「えっ!?誰かいるの!?」
可愛らしい声が焦ったように響く。
僕はしまったと思ったが遅い。
「すみません、鼻歌につられてつい。」
ドアの向こうから聴こえてきた声の主はなんていうのだれうか。
「あなたは執事なの?」
急に真面目な声になる。
「あっ1週間前にこちらで雇っていただきました桐崎蓮です。」
「あー、メイドに聞いたわよ。なんか気づいたら城の前にいたとか言ってる怪しい男でしょ?」
えっ…確かに怪しいかもしれないが
メイド内でそんな風に紹介されたのか…辛い。
「まあそんなとこです…」
傷心中で一言答えた。
「ふーん、それで気づいたら城の前にいのは本当なの?」
声はいたって真面目だ。
「信じられないかもですが本当ですよ…詳細はあまり言えませんが。」
説明ができないのに話しても余計に混乱しそうだしなあ。
「そうなの、それで行き先がないから執事を?」
「そうです…」
行き先がないしこの世界の情報を知るため。
「まあなんでもいいのだけれど、そうそう、私と話したことは秘密にしておいてね。」
なんでもいいなら聞くな!
っと心の中でツッコミを入れた。
「秘密にですか?そう言われるのならそうします。」
僕はあくまで執事なのだから誰かは不明だが
言われる通りにするのが礼儀だ。
あっ!しまった、ヘッドドレスを取りに来たのを忘れてた。
「すみません用事があって来たの忘れてました!ではまた!」
急いで言われた物をとりデルタ執事長のところに向かう。




