2部
「謝ることはないよ、僕もスピードを出しすぎていたしね。」
ゆっくり起きあがりながらそう言った。
「人間よ、私が話すことに驚きはしないのだな。」
黒猫がしっぽを揺らしながらたずねた。
確かに、猫が喋るのだからびっくりするのだろうが
不思議とそれが当たり前のように感じていた。
「不思議な感じだけど君を昔から知っているような気がするよ。」
自分でも訳のわからないことを言っているとは思う。
「そうか、しかし怪我をさせてしまっているのか、ちょっと待て。」
黒猫はしっぽの先を僕に当てた。
「うおっ?!身体が軽い!」
身体から痛みが消えた。
「それは良かった。おぬしは良い人間みたいだからな、」
「痛みが消えたよ、ありがとう。」
手をだし握手を求めいた。
「律儀な奴だ、猫に握手など。」
「出会いも運命だよ黒猫さん。」
そう被せるように僕は言った。
「さて、僕は大学に行くよ、また会ったら声をかけてね。」
「ふむ。またな。」
シュッといなくなっていた。
黒猫は少し笑っていたようにも見えた。
手を振りながら自転車に跨ろうとしたが…
「あっ自転車壊れてる。」
「まあ、いいか。」
楽しい時間を過ごせたのだからと
自分に言い聞かせ近くの駅に向かった。
「一限目は間に合わないかな、」
駅に着くと時刻表をみる。
あと5分で来る。
急いで切符を買いホームに走る。
階段を降りてると電車の到着を知らせる音が鳴った。
はあ~間に合った。
ドアが閉まり、大きくため息をついた。
新学期からバタバタで始まりかあ。
電車のドアの向こうの景色をみながらそんなことを思った。
この時間は人が多いな、まあ朝だし当たり前か。
何を当たり前のことをと一瞬目を閉じた。
ドキュー、急に揺れを感じた。
ハッと目を開けると景色が変わっていた。
綺麗な空、鳥達、湖が見える。
「どういうことだ。なんだれは!」
周りの乗客はどうなったと後ろを振り向いたが
「誰もいない。」
電車に誰もいないはずがない。
あれだけ人が居たのだ、一瞬にして消えるなんてことが
あるわけがない。
電車は確かに線路を走っている。
「誰かいませんか!、」
と叫ぶが返事もなく。
僕は座席に座り景色をみる以外思いつかなかった。
「そう言えばスマホは使えるのか…」
画面はついた、それだけでもホットした。
ネットは使えるのだろうか。
そこで気づいた。
時間が経っていない!
電車に乗ってから15分は過ぎているはずなのに
画面の時刻は乗車した時刻を示していた。
そしてまたも驚く、
城が見える。ヨーロッパな風景に城。
これは海外にでもワープしたのだろうか…
なんてことを考えていると電車が停まった。
ドアが開いた。
なかなか足が動かない。この1歩がとても怖いが
中にいても仕方ない。
「行くしかないかあ。」
踏み出した瞬間、突風が吹く。
「うわっなんだこの風は!」
腕で顔を覆って風をしのぐ
風が止んだ先には城がはっきりと見えた。
「デズニーラー○ンドかよこれは。」
城の周りは綺麗な湖と1本の大きな木があり
街みたいなものは見当たらない。
「とりあえずはここはどこだか理解する必要があるよな。」
デカい扉の前まで来ると緊張が高まる。
「変な人出てきたらどうしようか。」
くっ、勢いでいくしかない!
「すみませんー、道に迷ってしまったのですが教えてもらえないでしょうか」
扉を叩きながら叫んだ。
「出て来ないか…」
諦めかけたその時、「どちら様でしょうか。」
「うわあっ」
まさかの後ろからの声に僕は驚いてしまい変な声がでた。
「リーシエ様の城に何か用でございますか。」
歳は60歳ぐらいだろうか、黒の燕尾服に
モノクロのメガネをしている。
いかにも執事という格好だ。
そして威圧感すら感じとれる。
「あの、えっと、僕がいるこの場所は何という地名でしょうか!?」
緊張してしまい変な言い方になってしまった。
「外国の方ですか、でなければそんなことは言わないでしょうね。」
ギラりとした眼光が怖い。
「ここはクローム・リドゥ·リーシエ国、リーシエ王女様の納める城でございます。」
そんな国聞いたこともないぞ?
僕が知らないだけで存在しているのか?
ダメだ、頭が混乱してしまう。
「その顔をみると理解されていない様子で。」
考えこんでいる姿をみてそう言われた。
「初めて聞いた名前でして、すみません。」
執事はとてもびっくりした様子で「まさか、リーシエ王女様を存じ上げてないとは!」
あっ、これは怒らせてしまっている。
「本当にすみません、初めて来た場所でしかも気づいたらこの国にいました。」
正直に言ってみるしかなかった。
「ふむ、初めて来た場所で気づいたらですか…」
執事の男性は顎に手をやり考えこんでいる様子。
当たり前だよなあ、意味わからないよね。
「まあ、いいでしょう、して貴方様はどうやって帰るおつもりで?」
そこは納得してくれるのか…
そうだよなあ、どうやって帰るかなんて僕が知りたいよ。
「この街で僕の様に訪ねてきた人っているんでしょうか?」
まずは少しでも情報がほしい。
他に同じ境遇の人がいるかもしれない。
「私の記憶の中では最近はいないでしょうな。」
やっぱりいないかあ。
やっぱり、うん!?
「今、最近って言いませんでしたか?!」
「えぇ、言いましたが?」
聞き違いじゃなかった!
情報がこんなにすぐ得られただけでも安堵のため息が出る。
「その人がどこにいるか教えてもらえないでしょうか!?、いろいろお話を聞いてみたいのですが。」
同じ境遇の人にこの場所のことやとにかく話がしたい気持ちだ。
「教えれません。」
執事は目を細めながらはっきりとそう言った。
「どうしてでしょうか?」
「まず、貴方様が何者かも不明なのに個人の情報を教えることはできませぬ。」
ぐっ、確かにそれもそうだよな。
必死すぎるのは相手に良くない印象を与える。
「ならば信用してもらうしかありません」
思いつくのはこれしかない。
「城で働かせてください!」
勢いよく頭を下げ叫んだ。
「働いて人を信用させるのですか。」
「執事の経験は?」
「ありません。」
「ふむ、では調理の経験は?」
一人暮らし程度の自炊経験しかない。
「簡単な調理であれば。」
男性執事は目を閉じ考えこんでいる様子。
城で働くとはいってもやることは多い。
掃除から調理、庭の手入れ、お金も含めたら
人がいるのは助かる。
あとは姫様のことだが…
まあ今は話さなくて良いでしょう。
「あの、どうでしょうか。」
おっといけない考えこんでしまった。
「では、全て教えますのでしっかりとお願いします。」
「はいっ!ありがとうございます。」




