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028◇If地域:チヤ03◇必須イベントは回避不能か?

☆☆☆


 主要キャラクターは消せないっぽい。必須イベントは必ず起きる。イベントが発生した効果は必ず好感度に反映する。なお不明な理由で好感度が上がったとしても、一度MAXまで上がれば先ず下がらない。いや、まあ裏技設定を知らずクリアしちゃったのかもだけど。


 それが今までの17年間で学んだ現実だった。………しかし、この世界を現実と呼ぶのは未だに抵抗がある。それ以前に、私が高橋千夜で、雑魚キャラの千夜がバグキャラなのも微妙な感慨を呼ぶ。

 最強キャラって読む分には安心だが、自分が成った場合は特に安心でも無いと知った。大体がして、真実最強かなんて確かめ様も無い。確かめようとして死んだりしたら、情けないにも程があるだろう。何せ何処に落とし穴あるか判らないし、この世界って神様とか居やがるし。調子に乗ったら絶対死亡フラグが立つと思われるからね。もう菖蒲の必須イベに付き合わされた神様との体面時なんか、マジ泣きしそうだった。


 私が此処に存在する事は、やはりイレギュラーなのだろう。そして、イレギュラーに引き摺られて、必須イベントを無視する輩も存在する。

 しかし、必須イベントは必ず起きるのだ。

 ならどうなるか?

 私の存在故にイベントを無視するならば、私が巻き込まれる事が回避しようが無いと云う……ね。


 そんなこんなで、普通なら高橋千夜が遭遇する筈が無かったイベントに巻き込まれて冷や汗をかいたりもしたが、生き残れたのはやはりチート故なのかと思う。しかし巻き込まれたのもチート故かと思えば、それに感謝もし難い。


 死亡フラグのあるイベントは出来る限り回避しつつ、平和に平穏無事に暮したいと思う。俺TUEEE?いや、それこそ死亡フラグでしょう。あんなもん読むだけで充分だ。


 まあ、そんな感じでコッソリ生きてます。




「お前は他の女と違うのかもな。」


 安心の死亡フラグ無しのイベント。抱き締められる前に、うっかり殴ってしまいました。

 いや、正確に云うならば、上記の台詞を云われる前に殴ってしまいました。

 なんと云うか。


「お前は他の…ぐうっ!」


 みたいな?

 何しやがるっ!?とか思って拳を入れました。しかし、腹を押さえてしゃがみこんだ男を見て、気付いた。


――あ、イベントじゃね?


 と。

 そもそもが、この男と接触したのは何故か?そりゃあ、生前見れなかったコイツの恋人を見たかったからじゃんね?もちろん、今回の選択肢も覚えてましたよ?

 しかし。

 しかしだ。


 ゲームしてた時には選択肢が浮かんでから実行だが、今は普通に生活してるからね。意味もなく男に手を伸ばされたらセクハラだよね。つうか痴漢と同じ扱いだよね。私、悪くないよね。


「………。」


 私は、どうやら結構な男性恐怖症の様である。と云うか、接触嫌悪症?いや、男性接触嫌悪症だな。同性なら平気だもん。

 やはり、生前友人にヤられちゃったのがトラウマなのだろうか?コイツは決して私をソンナ目で見ないと知ってるのに、つい殴ってしまいました。


 イベントなのにね。ゴメンね。しかし、恋人でも無い異性を抱き締めるのは、どうかと思う。


「…………言い訳なら聞いて差し上げますけど?」

「い……言い訳?」

「然して親しくも無い男性から、イキナリ抱き締められそうになった私としては………殺しても良いくらいの気持ちですけど。所詮、あなたもツマラナイ男と云う事かしらね。」


 つうかイベントだと知ってるから、一応抑えたけど。

 どう考えても、コイツの行動オカシイからね?

 試すのがそもそも失礼極まりないよね。試し方も失礼だよね。女という女が、総て自分に靡くと思うなよ?何て恥ずかしい自惚れ野郎だ。

 思わず冷ややかに見下ろしてしまいました。


 うん。

 八つ当たりですね。又は自己正当化に努めた結果の……責任転換?いやいや。今は結局、高橋千夜としての現実な訳で、現実でこんなんされたら、やっぱり殴るだろう。だから、やっぱり悪くないよね?つらつら考えつつ見下ろした先で、生徒会長がゆっくり立ち上がった。

 前髪が影を作り、表情が見えない。しかしながら……僅かに口元に浮かんだ笑みが超怖いです。


――やっちゃった感満載っつうか。


 逃げるべき?いや、私悪くないから。大丈夫だから。

 でも思うに………現在の私が知る筈も無い情報だが………藤院家に喧嘩売ったと云う事か?これ?

 鷺沼を名乗る彼が藤院の後継なのは、ゲームをしていた私には当たり前の事実でしか無い。まあ結局彼は弟に後継の立場を押し付けて家を出るんだけどさ。でも、それは絶対での筋書じゃあ無い。ゲーム内でも当主になるパターンと成らないパターンのendがあったし。

 そして、当主になるendを迎えた場合は、例外なく血も涙も無い冷酷無比な男にシフトチェンジするのだ。それはその時々でランダムだったが、恐らくはこの時の『恋愛相談』イベントに拠って、決まる事なんだろう。

 藤院の冷酷当主バージョンに成るのか、後継の座を投げ出してしまうのか、つまりはイベントが起きない限りは調整のしょうがない。ここまで来て恋愛イベントが発生しないなんて事になれば、それは彼にキッチリ嫌われたって話でもある。


――ある意味で、死亡フラグなんだけど………。


 死亡フラグの無いイベントだなんて甘い考えだった。確かに死にはしないが、嫌われコースで冷酷バージョンendに進まれたら、ある意味で死ぬより性質が悪い結末が待っているのだ。まあendって云っても主役的なendでは無いので、end時のバージョンと呼ぶのが正しいのだろうけど……こいつは冷酷バージョンでend迎えると、エッグい噂の絶えない人になってんだよね。


 この世界を現実だと認識するなら、莫迦な真似をするんじゃ無かった。関わった己に、かなり泣きたくなった。


 しかし。


 ゆっくりと上がった左手が前髪を掻き上げ、ついと払った際に覗いた男の眸は、何だかとっても穏やかだった。僅かに苦痛の混じる、苦いものを飲み込んで、無理矢理浮かべたみたいな笑みに気付いた。


 もしかして、怒って無いのだろうか?

 冷酷バージョンにならなくても、自分に拳を入れた相手には漏れなく半殺しで返礼していた彼が?女相手にも容赦が無くて、平手を見舞うべく手を振り上げただけで、避けた癖して張り倒して蹴りを入れた、しかも何回も………そんな男が、殴られ、しかも膝をついたのに怒らない?許してくれちゃう?………………………………………何か、絶望的な気持ちになって来た。


 穏やかそうでも、狂犬みたいなもんだし、そういや狂犬て呼ばれてる男の子はマゾッ子だけど、こいつサドッ子だし。もはや希望なんか欠片も無く、私は彼の口元が動くのを死刑宣告でも待つ心境で視つめた。




「俺も……うんざりしてた筈なんだがな。同じ事を自分がするとはな。」


 うん?自嘲の笑み???かな?え……どうしよう、大丈夫?マジ?

 から喜びにならない?

 ドッキドキな私に、会長は礼儀正しく謝罪した。


 真っ直ぐに誠意ある眼差しで「悪かった。」とか、ぶっきらぼうだけど真剣に……云われてしまった。どうしよう。


「………まあ良いわ。あなたも大変だったと思って水に流しましょう。」


 でも良かった……よね。うん。そこは良かったよ。マジで。もう出来るだけ関わらない様にしよう。

 取り敢えず、イベントどうでも良いや。いや、ちょっと気になるっちゃ気になるけど、何か怖いし。やっぱり現実だって事を噛み締めて、今まで以上に安全を心掛けなきゃだよね。

 なまじっか、生活は生前みたいに普通で、その割にゲームならではの血みどろなお化け満載で、現実感の無さと生前の平和な世界が見事な調和で、実感を薄くしていた。甘く見てた。

 神様だなんだと関わる時は恐怖でガクブルだが、そんなモノ以前に、此処は死亡フラグ満載のゲーム世界なんだよね。そのくせリセットは利かないのだから……私はもっと慎重に生きるべきなんだ。


 そう考えて、だとしたら、この世界でチカラを持つ一族の後継ぎなんかには、やはり近付くべきでは無かったと云えるだろう。うん。せめて相談受ける前で良かった。

 相談受けたら親友コースだもんね。権力ある親友は便利だけど、面倒だよ。

 さて。無かった事にしようかね。





 なんて。

 思ったけど。


 リセットが利かないと云ったばかりだもんね。何となく……不穏な空気は感じてたよ?


 大体。

 恋人と親友以外には絶対に謝罪をした事の無い生涯を送る……とキャラ設定に書いてある男だもんね。





 あはは。



 何だか切なくなりました。とってもとっても切なくなりましたよ。


 泣いても良いかな?


 人はこれを自業自得と呼ぶのだろうか?



 俺様で暴力的で、地域でも有名な不良グループの頭で、こっそりと云う言葉が恥じらって消え入る程におおっぴらに不良な癖に、しっかり学園では生徒会長として君臨している男。なんとも中2臭い上に、共学なのに王道かよと云わんばかりの腐設定キャラ。ゲームの御約束なのか何なのか、こやつが有名な不良だなんて事は、知られざる事実である。


 まあ私は反則チートだから知ってるけどな。


 そんな人が、私の親友になりました。


 狙ったみたいな………中2疑惑な立場に泣きたい。




 でもさ。

 実は私の親友はもう既に一人居るのよね。


 未来のヤンデレにして魔界の女帝。


 魔王に遭遇するまでは、冷めてて面倒臭がりで、誰にも心を開かない……………『筈』の、彼女。


 好意とかそんな当たり前の言葉で表すのを躊躇するほど、私に執着している彼女。




「千夜ちゃんは私の親友です。後から来て割り込まないでくれませんか?」

「高橋は俺の大切な友人だ。貴様に否定される謂れは無い。」


 何だろうコレ?

 神様は何がしたいのかな。アレだよね。これはきっと、この世界に私を放り込んだ神様が設定してるんだよね。




 まさか。

 私の所為じゃ無いよね……………。




 本当に、チートとか逆ハーとかヤンデレとか、そんなもんは…………現実に持ち込まないで欲しいです。此処が現実じゃないなら仕方ないけど、なら、ちゃんとリセット機能付けて下さい。


 いや。マジで。


 切実に、そう思った。


☆☆☆





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