1/5
0-0
それはジメジメの空気と、優しく焼く日差しで飾られた彼女だった。
動かない腕を静かに動かしてその指で優しく——余分なモノを全て持たない彼女だからこその筆遣いが真っ白な紙を色付けていく。
「この絵、私が最後に描きたいテーマって覚えてる?」
僕たちがいる部屋は彼女の筆の音だけしかしない。そんな静寂な空間でも、彼女の声はそれにすら負けそうな程に静かだ。
「......覚えてるよ。最後のテーマは」
「ありがとう。これを描き上げた時、誰が見てもこの絵はそういう絵だって君に説明してもらいたいんだ。勘違いされたくないから」
「その絵の......そのテーマで描かれるモデルは僕だと思っていたけどね」
納得のいってない僕の口ぶりに微笑だけ返して、その柔らかい指先は少しずつ絵を完成させていく。
「これだけは誰にも譲らないって決めてるんだ。勿論大好きな君にもね」
「君のその頑固さは死んでも変わらないんだろうね」
「来世も人間になったら頑張るよ」
彼女の何かと引き換えに、絵は完成へと近づく。僕の仕事はただ見るだけ。
「こんな無に近い時間が無限に続けばいいのに」




