prologue〜episode.1
(prologue)
小国だが平和な国・ルーンデルク。
心優しい王・ランズベルトのもと、民は貧しくも穏やかに暮らせていた。
ある日の深夜、蛮族の奇襲に遭い城が攻め落とされるまでは。
城に入ってくる暴虐無人で野蛮な戦士たち。
その国には美しい姫がいた。名はアンナ・ソフィアライト。
姫とわかったらなぶりものにされる……そう思った母で王女のマリアはアンナにみすぼらしい町娘の格好をさせ裏門から脱出させる。
母の最後の言葉は「自分の身分は絶対に隠し通すのよ。もし知られたらあなたの身に何が起こるか…」
母の心配は当たる。アンナは捕まってしまい、そのまま連れ去られてしまった。
(episode.1)
アンナを待っていたのは風呂もない、巨大な地下牢。
汚い環境の中、みながぎりぎりの状態で生きている。
どうやらいろんな国の人間が集められているようだ。
皆は知らない。姫が同じ地下牢で自由を奪われていることを。
そこで分け与えられるのは貧しい食事。
衰弱して死ぬ者も現れる中、アンナはその食事を子供や老人に分け与える。
アンナに一人の女性が近づく。
「ねえ、ちょっといいかしら?」
女の名前はカレンといった。
カレンはアンナを地下牢の中のレンガの壁に連れて行く。
他の皆からは見えない死角だ。
「いい子ぶっちゃって。この偽善者!」
カレンは目を細め口を歪めて吐き捨てた。
「こんなとこで誰に何のために媚び売ってんのよ?気持ち悪いのよあんた!」
アンナは黙っている。
「………無視ってわけ?こっち見なさいよ。イライラするわね!」
アンナの頬かむりを奪い取り、壁に投げつけた。
アンナの顔を露わになる。
アンナは頬噛むりを拾うと、また頭に巻き出した。
何も話さない。
「………あ、そう。じゃあとことん虐めさせてもらうわ」
カレンの目配せで取り巻き二人がアンナの両手を持つ。
バチン!!
カレンの平手打ちがアンナの頬を打つ。
アンナは打たれた頬にそっと手を当てる。それでも下を向き黙っている。
「こいつ……!」
カレンが歯軋りをしたその時、牢の扉が開いた。
兵士たちが入ってくる。
「女はこっちに集まれ!おっと、若い女だけだ!」
牢に入れられてた理由をこの時皆は理解した。
アンナやカレン、その他の若い女たちは皆牢を出された。
連れて行かれたのは湯浴み場だった。
奴隷商人のもとで働く女性たちに、水をかけられ体の汚れを落とされきれいな姿に。
髪も洗われアンナの髪は元の美しい姿に戻った。
しかしそれは人身売買のオークションに奴隷として「出品」されるためだ。
オークションでより高値を付けられるように。
他の女性たちはアンナの美しいその姿に息を飲んだ。
「嘘でしょ……」
「あんな美しい子、町にいた?」
ざわめく女性たち。
カレンもまたアンナの美しさに驚きを隠せなかった。
「なにこの女。どこの村の女よ」「顔がきれいなだけで、どうせ文字も読めないバカ女でしょ」と悪態をつくのが関の山だ。
アンナを睨みながら「私はこれでも外国の言葉が話せるのよ」「私はきっと身分の高い人の元に行けるわ」と嘯いた。
オークション会場にゾロゾロ歩いていくアンナたち。
栄養不足で倒れ込むやせ細った若い娘。皆は助ける余裕がなく無視して歩いていく中、
アンナは戻って抱きかかえる。
すごい熱だ。
「なにをやってる!とっとと歩け!」奴隷商人は叫ぶ。
しかしアンナは通行人に水を求めにいく。
アンナ「どなたか水を!」しかし関わりたくないのか町の皆は無視。
そんな中、身なりの良い男が馬から降りて水筒を渡す。
身なりの良い男「これを」
アンナ「ありがとうございます!」
奴隷商人はイライラしている。
「ほら、早く列に戻れ!ぶん殴るぞ!」
身なりの良い男「おいおい、傷付けたら商品価値が下がるんじゃないのか?」
その声の方に奴隷商人は顔を向ける。
(で……でけえ〜!それに……なんちゅう美青年……!何者だ!?)
奴隷商人はファランの容姿に動揺しながらも冷静を装う。
「ははは。どこの誰か知りませんけどね。余計なことはやめてくれます?こっちはこれが商売なんだ」
身なりの良い男「それはすまなかったな。ではその娘は私が買おう」
金貨の入った袋を取り出し、奴隷商人に渡す。
奴隷商人「1、2、3…………20……枚?……え?こんなに!?」
身なりの良い男「足りなかったか?」
(こいつ金持ちだな。どこぞの貴族のボンボンか?)欲を出す奴隷商人。
「旦那、この娘はとっておきの商品なんですよ。それはそれはもう、やんごとなき家柄の娘でして」適当なことを並びたてる奴隷商人。
身なりの良い男「なら20枚なら安い買い物だったな」
奴隷商人「「いえ、もう少しいただかないと……へへへ」
身なりの良い男「そうか。ならあとで王宮に来い、ちょうどこの国の王子と謁見予定だ」
奴隷商人「は?……王子……様と?」
身なりの良い男「王子の前でいくら欲しいか言ってみろ」
奴隷商人「く……」この国の王子は奴隷商売が嫌いだと聞いている。
王に即位したら領地内での奴隷売買を違法にして廃止するという噂もある。
奴隷商人は闇の職業ゆえ、王宮に入れるはずもない。
身なりの良い男「なら買うのをやめた方がいいか?」その場から立ち去ろうと馬の頭を触った。
奴隷商人、慌てて首を縦に振る「いえいえ!こちらの金額で結構です。ま、毎度あり〜」
そうしてアンナはその男に買われた。
なぜアンナを買ったのか?
身なりの良い男はアンナの自己犠牲の心に感心したのか?
それともただの気まぐれか?
この男こそ、生きながら伝説の騎士、ファラン・アーネスト。
三カ国で長く続いた100年戦争を終わらせた大騎士。爵位を断りひたすら剣を極めんとする求道者。
これは奴隷になった王女と英雄騎士との愛の物語だ。




