↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/50

01 悪役令嬢の告発

「ロスティ・メモワール、ロスティ・メモワールは居るか?」


 絢爛豪華な舞踏会がアルベルト・リムナント様の凛とした声で静まり返る。

 私、フィリア・オブリビオンの視線の先で彼の方が白石の床へ靴音を鳴らし、舞踏会の中央へと進んだ。


「ロスティ、居るのだろう? 出てきたまえ」


 太陽を吸った様な金髪を揺らし、青空を映した様な蒼玉の瞳を細めて、アルベルト様は婚約者を呼ぶ。ただならない雰囲気だった。

 今日はアルベルト様の成人を祝した前夜祭。この国の第二王子の記念すべき夜。

 それに似つかわしくない重々しい空気を彼の方は纏っていた


「……ロスティ様?」


 二つの蜂蜜酒を持ったまま、私は腰ほどまでに長い黒髪を左右に揺らしてロスティ様のお姿を探した。

 一体何が? バクバクと心臓が鳴っていた。きっと良くない事が起きる。良くない事が起きている。


「お呼びですか、アルベルト様」


 カツン。少しの時間を空けて、ロスティ様がアルベルト様の前に出た。

 星明りを移した様な銀の髪を膨らませ、夕暮れを吸った様な紅玉の瞳を大きく開き、背筋を伸ばしている。それはいつも通りのお姿だった。


 舞踏会の中心でロスティ様とアルベルト様の目が合う。

 銀と金の髪。紅と蒼の瞳。この舞踏会にあるどんな飾り付けよりも目を奪う。

 なのに、私が感じたのは張り詰める様な苦しさだった。


 群衆の感情が、私へ流れ込んでくる。困惑が主で、後は期待や恐怖。

 それらの感情の渦の中、アルベルト様の口が動く。


「ロスティ、僕に言うべき事がないか?」

「いいえ。何もございません」


 ロスティ様が首を振り、真っ直ぐにアルベルト様へ目を向けた。

 それにアルベルト様は「……そうか」とだけ短く呟いた後、魔石の指輪を付けた左手をロスティ様へと向けた。


「〝捉えろ〟」


 瞬間、その手から放たれた光輪にロスティ様が締め上げられた。

 今度こそ、舞踏会はざわめきに包まれる。第二王子が婚約者を公衆の面前で拘束するなどあってはならない。あってはならない事が起きてしまっている。


「ロスティ様!」


 蜂蜜酒が床に落ちる。私は魔石の杖をドレスの懐から出し、ロスティ様へと駆け寄った。

 何が起きているのかは分からない。だけど、ロスティ様が拘束されている。ならば、助けなければ。


 舞踏会を走り出す私の姿に周囲から声が聞こえる。


 あれは誰だ?

 ロスティ・メモワール唯一の取り巻きだ。

 ああ、心狂いのフィリア・オブリビオンか。


 声は遠い。私の頭にはロスティ様しか居なかった。

 ロスティ様の前に体を割り込ませ、私はアルベルト様へ魔石の杖を掲げた。


「アルベルト様! 一体何をしておられるのですか!?」

「下がりなさい、フィリア」

「いいえ、いいえロスティ様! これは何かの間違いです!」

「フィリア、もう一度言うわ。下がりなさい」


 ロスティ様から聞いた事も無い様な冷たい声が出る。でも、私は止まらなかった。

 この様なお姿はロスティ様に似合わない。この人に似合うのはいつもの様な高笑いだ。

 アルベルト様が舞踏会の会場に響かせる様な声を上げた。


「今ここに、アルベルト・リムナントはロスティ・メモワールの罪を告発する」


 罪? 言葉の意味が分からなかった。

 私の悪役令嬢が、あのロスティ様が、そんな事をする筈がないのだから。

記憶と感情を巡る悪役令嬢の物語の開始です。

もし「続きが気になる」と思ってもらえたなら、ブックマーク、評価、感想等をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。