同窓会~???にいる君へ~
YOH同窓会TIPS
SNSのCONNECT YOUは陽国の若者の間でよく使われている。
DM機能や投稿機能まで備わっている。
2035年1月15日 ??? 18:03
???
□山口 茶兎?
我ながら記憶力はいい方だと自負している。だから、目の前で白衣を着て泣いている女子─村上 花菜──が同窓会に<欠席>連絡をしていることは覚えていた。
「ここは?」
いつまでも寝ているわけにはいかないと思い、仰向けの状態から上半身を何とか起こそうとする。
そうすると頭にズキンという痛みが走り、思わず苦痛の声が漏れて体勢を崩してしまう。
「大丈夫?」
という、花菜の声に大丈夫、と答えながら、上半身を起こして周りを見渡す。
辺り一面が白い部屋だ。床も天井も白い。照明はなく部屋自らが発光しているかのようだ。部屋の形状は四角、というか正方形だろう。幅はよくわからないが10m位。
部屋の大体中心部に上半身だけを起こしている僕がいて、正面に白衣を着た花菜が今は体育座りをしている。
壁の4面、僕から見て左側の壁の中央部にはモニター。右側の壁には2つのドアがある。
ドアの上方には丸い窓が設置されていて中が見えるようだ。しかし、上半身を起こしているだけの今の状態では中の様子をうかがうことはできない。
不気味さを覚えるくらいに左右対称な配置だ。強いて言う違いと言えば、左側のドアに24、右側のドアに25に描かれているくらいだ。
そういえば、24が花菜の出席番号で、25番が自分だったな。何かの偶然だろうか。
そこまで部屋を観察すると目の前の花菜と目が合う。
ようやく落ち着いてきた様子の花菜にもう一度聞いてみる。
「ここは一体?」
「わからない。ウチ、今日、推しのライブ会場に行く途中に意識がボーっととして、目をつぶってヘタ~って座っちゃったの。そしたら、ここにいたの。」
そしたら倒れていたさとっちを見つけたの。
とまだ狼狽した様子で花菜は続ける。
どうやら状況を飲み込めていないのは僕と同じらしい。
自分はどうだったんだろうか。そういえば、同窓会で乾杯の合図をしようと思ってたらものすごい衝撃と衝撃と音がしたんだった。
頭をぶつけたんだっけか。
ハッと我に帰り、衝撃を受けたであろう部分を左手でさすってから見てみる。幸いなことに流血等はなかった。
「大丈夫?」
2回目となるその質問に、ああそうだな。と返しながらふと花菜の話に違和感を覚える。
「君は、推しのライブに<白衣>を着ていったのかい?」
そう、花菜のSNS(CONNECT YOU)の投稿は男性アイドルグループの推し活の様子で溢れている。
今日はそんな彼女の推しのライブの日。なのに、白衣というのはかなり違和感があった。
「え?」
そういいながら、花菜は下を向き自分の姿を確認する。その様子を見る限り、今僕が指摘して初めて気が付いた様子だ。
「ウチ、白衣なんてコレクションに入れてないし。それに──さとっちも白衣だよ?」
そう言われて、僕も自分の服装を確認する。
本当だ。同窓会にいたはずの先ほどまでスーツを着ていたはずなのに、今は無機質な白衣を着ている。
状況が本当につかめない。今何が起きているんだ?
他にいた同窓会に参加していた、クラスメイトはどこに行った?
なんで欠席だったはず──しかも推しのライブに行っていたはずの花菜が隣にいる?
疑問は尽きない。
そんな中、先ほどから何も映っていなかった左側のスクリーンからホワイトノイズが流れ始めた。
しばらくして、そのスクリーンに映し出されたのは、
丸い円の中で吠えている狼の絵だった。
続く
◇
この小説は配信アプリREALITYにて
前髪ナル さん
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