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Jet Black Witches  作者: AZO
4−3.萠動編 − 暗躍のうねり
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光粒子エネルギー砲 〜 暗躍のうねり lxxvj

 エオに付いていくことを告げたジンを前に、泣き崩れる一歩手前で、堪(こら)え啜(すす)るような吐息を漏らすエオ。ジンは丁寧に、言葉を繕(つくろ)うようにゆっくり優しく語ってみせる。


 そのやり取りの結果わかったことは、エオはただ意図を解せていなかったということだった。エオに気付きを得て欲しい願いではないかとのジンの言に1万年の時を経て、ようやく響き渡り、エオは揺さぶられ、心が洗われていく。


「エオが何をやらかしたのかは知らないが、今日まで頑張ってきたんだ。もうそろそろ報われてもいい頃だって、思ってもバチは当たらないだろ。こうして知り合えたのも何かの縁。まぁ乗りかかった船とも言うからな。この出会いは、きっとエオが報われるための、神さまへのそんな合図だったんじゃないか?」


  〔ぅぅぅ……どうしてそこまで……ズビッ……人間なんて心が矮小で狡賢くて損得勘定ばかりする生き物じゃなかったの? 貴方みたいな人間は初めてよ? あれ? そういえばここは東の果てよね? 漆黒に染まる髪・瞳、そして特殊な力を秘めているなんて……もしかして、ディアプロペスさまの子孫なのかしら〕


 姿は視えないが、エオはどうやら泣いているような素振りだとジンには思えた。


 人の悪評なる特徴を掲げられるのも複雑な思いに駆られるが、それとは別だと思ってくれたことに『よしよし』と思いながらジンは少し頰を緩ませる。


 ふとその後に続く人の名前らしきものに引っかかりを覚えたジンは尋ねる。


「え? 誰?」


  〔え? あぁ、ううん。なんでもないわ。忘れて……仮にそうだとしても、これだけ時が流れていたなら確かめようもないことね。でもあの御方なら……〕


「ん? 『あの御方』って?」


 誰かの子孫と漏らした名前は遥か昔の人物で、確かめようもないとエオは打ち消しジンも流すが、続くもう一人の人物像に意識が留まったジンはまたも尋ねる。


  〔あー。これから貴方に会ってもらいたい相手よ? 最後まで伏せておきたかったけれど、仕方ないか。これ言ったら覆るかもで怖いけど……その相手って、いわゆる神さま?〕


 今度はこれから会う相手で、しかも神さまであることをエオは漏らす。流石のジンも神さまと聞いて、目を大きく見開き、途轍もなく驚く。


「え? オ、オ、オ、オレはこれから神さまに会うの? それはヤバい。ほんとにいたんだ、神さま。エオ、やっぱ無理だわ」


  〔え? あ、そうよね……やっぱり無理だよね。仕方ないことだもんね? ……わかった。このことは忘れ……〕


 驚きに任せて、ジンの口からは『無理』の一言が飛び出す。もちろん、直感が吐き出した言葉だが、直ぐに今までの会話を振り返り思い直す。しかし既に言葉で吐き出してしまったこともあるが、ちょっとした意地悪心でエオを弄りたくなったのか、エオの悲観の言葉を誘ったようだ。もちろん、エオが言い終わる前に、ジンは被せるように、意地悪そうな顔付きで打ち消す言葉を投げかける。


「なぁーーんて、言うと思った? 嘘だよ。思いっきり驚いたのは事実だけれど、神さまの御前にて拝謁を賜り、神意を仰げるのなら、この命を賭ける価値はあるかもだ。というかこんな命では足りないかもしれないけどね? ところでその神さまってどなたなの? 知ってる神さまだろうか?」


 しかし、そうは言ってもその神さまが誰かは気になるジンで、せめて知っているような有名な神さまなのかを尋ねてみたようだ。


  〔あー、そうだね。たぶん知ってると思う。でもそれは直前に教えるね。神さまの名前って不必要に唱えるものではないと思うから。そんなことより、ジン! 本当に行ってくれるのね? ありがとう。ありがとう。さっきも言ったけど、わたしが絶対護るから心配しないでね? それに解放が叶ったら、貴方に尽くすことを誓うわ〕


「あー、いいよいいよ。オレなんかに尽くす必要なんてない。貴女は貴女の生を全うして、沢山の楽しいことを享受して欲しいだけだから」


 どうやら有名な神さまらしいことはわかったため、ジンはひとまず心積もりをしておくようでそれ以上は尋ねなかった。エオは改めて感謝の意と尽くすことを誓うが、ジンは尽くす必要性を打ち消して返す。


  〔あー、もぅ。そうね。もしも叶ったなら、わたしはわたしの好きに生きるとするわ。えっと、この時代のそうゆうの……確かストーカーって言ったかしら? そんな生き方もきっとオツよね?〕


「あぁぁ、もう、変な言葉ばっかり覚えて。でもまあ誰にも迷惑かけないで楽しめるなら何だっていいさ」


 どうやらエオの心は揺るがなかったようだ。


  〔ふふっ。冗談よ。でもゆっくり降りてきたつもりだけど早いわね。そろそろ最初の海に近付くわ。衝撃があるから気を付けてね?〕


 そうして、いよいよ海面が迫ってきていたため、エオは注意喚起して突入に備え始める。ジンも気を引き締めて海面を見下ろし様子を伺う。


「わかった。海面に突入するってことだな? どう動くのかはわからないけど、後は任せていいんだな?」


  〔ええ。任せて!〕


 突入はエオに任せることを共有すると直ぐに、ジンは下方視界に異変を感じ声を上げる。何らかの飛行物体がいるようだ。


「エオ、何か近くにいるぞ、気をつけろ! ヘリではなさそうだが……」


  〔ホントね。何かしら? でもこの落下コースからは少し離れているから問題なさそうね〕


「わかった。オレも見とくよ。もうすぐ真横あたりだな。ん? アレは……」


 接近する物体の姿にどうやらジンは心当たりがあるようだ。そう思いながらその真横付近を通過する。


 しゅっ!


  『パパ?』


  『マコト? そこにいるのか?』


 それは、マコトを包む流線型の飛翔体だった。先に気付いたマコトが声を掛け、ジンもそれに返す。思いがけず娘の声を聞けたことにジンの頰は緩み、嬉しさを滲ませる。


「ははは。娘たちがいたようだ。たぶんオレの救出に来てくれたんだな? 嬉しいなぁ」


  〔さっき言ってた貴方の娘ね? いいわね、家族って。心温まるってこういうことなのね〕


 ずっと一人で過ごしてきたエオには、父を思い駆けつけ声を掛ける、そんなやり取りが眩しく映ったようだ。エオは羨ましそうに呟く。ジンはひとりぼっちだったエオのこれまでから、自らの意思で脱却させたい意図も絡めて、思いっきり自慢で返す。


「そうだな。自慢の娘。妻やほかの数人含めて、自慢の家族だよ」


  〔そうなのね〕


  『パパ……☆△□◇夫?』

  『マコト!』


 しかし、高速で離れる方向であることと、カプセルの念話に対する遮蔽傾向から、距離が開くと念話も途切れていくようだ。


 付いてくると言ったジンに、エオは家族の接近で心変わりがないかを確かめる。


  〔……戻れないからね?〕

「……わかってる。最後に声聞けてよかったよ」


 それはジンもわかっているようで、付いていくことに変更がないこと、家族との会話にひとまずのピリオドを打つことをジンは言葉に表したようだ。


  〔そう……じゃあ、海面に突っ込むわよ!〕

「あぁ、大丈夫だ。行ってくれ!」


 突入直前の最終確認とともに二人は気持ちを切り替え、意識を海中に向ける。


 ずぱぁぁぁぁぁん。


 きゅぃぃーん。ゴボゴボゴボッ。


 大きな水飛沫とともにカプセルは海中への突入を果たすと、海中音の臨場感に纏われる。少し潜ったところで海中での視界が拓け、エオは進む先を伝える。


  〔ジン、見えるかしら? あの海溝のずっと奥を目指していくわよ?〕


「わかった」


  〔ん? 何かが追っかけてくるわね。威嚇のために光粒子エネルギー砲を装填しておくわ〕


 すると、進行方向の後方に接近してくる何かにエオが気付き、カプセルに備わっているらしい光粒子エネルギー砲へのエネルギー装填を伝える。


「あー、アイツラの潜水艦なのか? 威嚇でいいけど、当てないようにな」


  〔わかってるわよ。よし照準はだいたい合ったわ。発射!〕


 ジンから当てずに威嚇と指示され、エオは了承を返すが、同時に発射した旨も付け加える。


「え? もう撃ったのか?」


  〔ええ、スイッチ押したけど、遥か旧世代の方式だからね。エネルギー溜まるのに少し時間かかるわ。あと25秒くらいかしら?〕


 確認する前に発射したエオに驚きを隠せないジンだが、旧世代方式により時間がかかることから、エオは先に発射したようだ。しかし、そのターゲットが実はマコトたちだったことが判明しジンは慌てる。


「バ、バカ! あれはオレの娘たちだぞ?」


  〔あ……でも止められないの。光だから、発射したらその瞬間にヒットするから回避不能よ。照準はズラせるけれど、何に当たるかわからないから不用意にはズラせない。でも撃つのがわかっているのだから、この隙に避けさせて!〕


 少しだけ時間に猶予があるのは幸いとしても、緊迫する状況には変わりなく、落ち着きは取り戻せたが、ジンはキビキビとマコトへの指示を開始する。


「わかった」


  『マコト? 聞こえるか?』

  『あ、パパ。今行くからね』

  『ダメだ。早く戻れ! ここは危険だ。パパなら大丈夫だから』

  『嫌だ。こればっかりは聞けない。一緒に帰ろ? ね?』

  『そうしたいところだが、そうもいかなくなったようなんだ。理由を説明している時間もなさそうだ』

  『え? どうして? 嫌だよぉ、パパ』


 避けさせるために帰ることを指示するが、マコトはテコでも動かない様子だった。時間の猶予は少ないが、マコトならやれるはずと、回避に向けた詳細状況と指示を投げる。


  『マコト、よく聞け。今、誤って光のビームみたいなのをコッチから発射するみたいなんだ。避けられるか? あと10秒もない』

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