孤児院を14
小ぎれいな家の玄関に突然現れた大男に、子供達の身体は強張った。
「ん、どうした?入らないのか?」
子供達は、互いに顔を見合わせている。急に不安になったのだ。話がうますぎた、だまされたのかもしれない、と。
その時、怖そうな男の後ろから、女性が出てきた。
「どうしたの、ナダル?」
現れたのは、この孤児院で先生役を引き受けることになったオルガだ。彼女はざっとみなの顔を見渡すと、得心したように微笑んでみせた。
「あらあら、怖そうなおじさんが出て来て、ちょっと緊張しちゃったのね。でも、大丈夫よ。この人、見かけほど怖くないから。」
「な、おじさん?!どういうことだ。これでも俺は。」
騒ぐナダルを放ったまま、オルガはパンパン、と軽く手を叩いた。
「はいはい。いいからいいから。このちょっと怖そうな顔のおじさんは、ナダルよ。ここに住んで、みんなの世話をしてくれるの。
そして私はオルガ。みんなの先生役をすることになっているわ。さ、それじゃ、みんな中に入りなさい。」
二人の気安い様子にいくぶんほっとしたのか、子供達は身体を動かし始めた。子供達が警戒するのも無理は無い。彼等は皆、今までろくな大人に囲まれていなかった。
「二階があなた達の部屋よ。女の子は階段をあがって右の部屋、男の子は左の部屋。
扉の前に番号が書いてあるから、決められた部屋に行ってごらんなさい。陛下からみなに、プレゼントが置いてあるわよ。」
それを聞いた子供達は、みんないっせいに階段をかけあがっていく。
「こら、あわてるな!怪我するぞ!」
ドタドタという音とともに子供達は素早く二階に上がった子供達は、自分の部屋を確認しようとした。ところが、彼等は部屋の前に書いてある数字すら、よくわからない。
すかさずデニスが声をかけた。
「はい、それじゃ、奥の部屋から順番に名前を呼ぶから、みんな自分の部屋を覚えてくれよ。」
名前を呼ばれた者から順に部屋の扉を開け、中に入っていった。明るい壁紙の色、窓辺でゆれるカーテン。どの部屋も南向きで、北側が廊下になっている。
部屋の中には、人数分のベッドが置かれ、ベッドサイドには個人用の棚が置かれていた。棚にはそれぞれ、その子のサイズにあわせた着替えが用意されている。
棚の上には、革製の肩かけ鞄が置いてあった。ベッドの前にはチェストがあり、中には黒板ノートやペンなどの学用品の他、身だしなみを整えるための櫛やハンカチ、換えのシーツやタオルなど、様々な物が入っていた。
「すごい!この鞄、もらえるの?新しい服も?」
子供達は、キャーキャー言いながら騒いでいる。その様子をオルガとナダルが微笑みながら見ている。
「みんな、お部屋は確認できた?そこに置いてあるものは全部、陛下がそろえてくださった物よ。これからの生活に必要だからと、みんなの為に考えて、用意してくださったの。
さぁ、それじゃ、部屋も確認できたことだし、みんな手を洗ってらっしゃい。手洗いが終わったら、下の食堂でお茶をいただきましょう。
降りて来る時に、黒板ノートとペンを持ってきてね。みんな、チェストの中に入っているから。」




