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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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孤児院を13

 デニスは彼等と話しあった。部屋割をどうするか、掃除や料理の順番はどうするか、衛生に関すること、マナー、勉強について…。話し始めると、たくさんの問題があることに気づかされる。


「お前ら、まともに風呂も入ったことがなかったのか?」


 部屋割は、わりとすんなりと決まった。年長の子と年少の子の組み合わせで、二人から三人で一部屋を使う。年上の子が、年下の子の面倒を見られるようにだ。


 でも、それだと年下の子こきつかわれる恐れもある。だから、問題があればその都度話しあい、場合によってはメンバーをいれかえることにした。


 ここまではいい。問題は、風呂や掃除、料理など、生活に関することだった。


 デニスは村の子供で、平民だ。しかし、アルゼ村は薬草のおかげで潤っていたこともあったのだろう、個人宅に必ず風呂場があり、村人たちが競うように身綺麗にしていたせいか、家に風呂があるのが当り前という感覚だった。


 アルゼ村の村人は、金持ちではないものの小金は持っていた。こういった村には、村特有の近所つきあいがある。見栄のはりあいもあって、一軒が風呂を備えると、それはまたたく間に村中に広がる。


 ところが、子供達のほとんどは貧民街出身だ。ろくに風呂など入ったためしがない。せいぜい手や顔を洗うくらいが関の山だ。


「いったいこれまで、どうやっていたの?」


 疑問に思ったデニスが聞くと、子供達がそれぞれ身振り手振りで答える。


 ドボーン、ぶくぶく、バッシャーン、終了。


「なんだ、それは…。」


 よくよく聞いてみると、シンロクは風呂を嫌がる子供達を、否応なくまとめて大浴場に放り込み、魔法で彼等の全身を泡だて、一気にお湯を流す、という荒技を使っていたようだ。魔法による全自動全身洗濯。それもごく短時間ですむ。


 おかげで子供達の見た目は、それなりに小ぎれいになった。しかし、自分で顔や身体を洗う、風呂に入る、というごく当たり前のことができないままだ。


 食事に関してもそうだ。ドームで配膳されている料理は、もともとナーガラージャの収納内にあるストックだ。全てが大人用のため、量が多い。シンロクは魔法でそれらを半分の量にして配膳していた。


 しかし、カトラリーを置いても、村の子供と違って彼等はそれを使わない。パンを頬張り、スープは皿から直接すする。せいぜい肉を切り、突き刺す棒として、フォークやナイフが使用される程度。


 シンロクは、カーデュエルの主と華には、絶対的な忠誠を誓っている。しかし、子供達に関しては教育対象として見てはいても、あくまで仕事の一環だ。子供達の立場に立ち、将来のことを考えて教育しようという考えはない。シンロクの中にあるのは、子供達が主と華にとって役立つ存在にすることだけ。だから、どうしても彼等の教育は思想や信条のほうに片寄る。


 そこでペトル兄弟はシンロクと話しあい、孤児院に行くまでに少しでもましになるよう、子供達の中に入って自分のやり方を見せ、覚えさせることにした。兄弟は平民ではあったが、しばらくずっと黒騎士の側で手伝いをしていたせいか、食事マナーなども自然と影響を受けていた。彼等にとって幸いなことに、素晴らしくよい手本が目の前にあったおかげだ。


「これは大変だなぁ。」


 デニスはこぼしながらも、楽しそうだ。子供達の面倒をみることは、王である華から与えられた当面の課題だ。誰かに頼りにされている、そのことが、デニスにはとてもうれしいことなのだ。


 子供達はへたくそながらもカトラリーの種類、といってもナイフ、フォーク、スプーンの三種類しか置かれていないのだが、それらの使い方を覚え、風呂の使い方、身体の洗い方を覚え、掃除の仕方を習い、孤児院に意気揚々とやって来た。


「ここが、これから俺達の暮らすことになる孤児院か。」


 自分達の家となる屋敷を見て、子供達は実感した。家の硝子窓が一つも割れておらず、玄関扉はペンキ塗りたてのように色鮮やかだ。ところどころ開けられた窓からは、清潔そうなカーテンがゆらゆらゆれている。建物の周囲には、低い木製の柵がもうけられており、玄関ポーチの両脇の小さな花壇には、花や木が植えられている。


「きれいなおうち…。」


 少女がうっとりとした表情で言う。玄関ドアが開き、家には似つかわしくない、ちょっと強面の中年男性が、片足をひきずりながら出てきた。


「おお、来たな。さあ、みんな、家の中に入ってこい。」



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