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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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孤児院を09

 大きな黒塗りの馬車から、次々と子供達が降りて来る。今日は、子供達が孤児院に引っ越しをする日だ。


 華達があれこれすったもんだしている間も、子供達はドーム一号で規則正しい生活の第一歩となる生活を行わされていた。おかげでまるまると太った健康優良児、とはいかないものの、骨と皮のような子供はもういない。多少スレンダーかな、という気はまだするが、見た目だけはかなり改善された。


 過酷な環境下におかれていたせいか、最初、子供の中には下痢や咳をするもの、皮膚や目に異常が見られるものもいたが、衛生面に気を配られ、薬効のあるピケを与えたりした結果、かなりよくなったと聞いている。


「俺達、ここで暮らすのか?」


「おい、違うだろ。人に聞く時は、言葉の後ろに、ですか、をつけないと。」


 孤児達の中に、ペトル兄弟がまじっている。言葉使いの指導をしているのは、弟のデニスだ。兄弟には、しばらく前から孤児達と交流を持ってもらっている。二人ともずっとドーム一号で暮らしていて、黒騎士やシンロクの手伝いをしていた。


 ペトル兄弟のうち兄のイザークは、しばらくしたら王都で試験を受け、上の学校に進む予定になっている。ちなみに彼は、華がユリウスから借りている離れに住み、そこで下働きをしながら学校に通う。


 弟のデニスをどうするか華は考えたが、とりあえず彼はこの孤児院に住むことになった。兄弟を一緒に王都につれていこうと思っていたが、デニスは華が今までにない、変わった孤児院を作ると聞き、興味を持ってくれたのだ。


「俺がこのまま兄ちゃんと王都に行っても、それじゃ今までと変わらず、兄ちゃんのお荷物のままだと思うんだ。俺だってちゃんと、人の役に立ちたい。」


 ドームで過ごし、騎士達の手伝いをしていたデニスは、彼等にとてもかわいがられていた。手伝ううちデニスは、自分にも何かできるという手ごたえを感じとったようだ。それもあってか、彼は自分と同じ子供達の面倒を率先してみていた。その子供達が、学力アップにかなり力をいれた孤児院に行くことを聞き、彼は自分からそこに行きたいと希望してきた。


「あいつら、全部が全部いいやつじゃないし、乱暴なやつや、いけすかないやつもいる。でも、いいやつもいる。そいつは、学校に行きたくても行けなかったって言ってた。


俺と兄ちゃんは、カーデュエルの主様や陛下に救われた。だから俺も、誰かの助けになれたらいいなって思ったんだ。」


 デニスの中にあったのは、少年らしい純粋な思いだ。シンロクからデニスの言葉を聞かされ、華は彼の成長に目を見張った。最初に彼に会った時は、喚き散らすことしかできない少年だと思ったが、短い間にずいぶん色々なことを考えるようになったものだ、と感心させられた。


「でも、デニスがそう言っていても、イザークが反対するんじゃない?」


 兄のイザークは、弟が孤児院に入れられることをとても恐れていた。その弟が恐れていないのだから、おかしなものだ。そうはいっても、孤児院に入ることには抵抗があるだろう。世間は孤児に優しくは無い。


 華がシンロクにイザークの反応を聞くと、彼は弟の言葉にかなり驚いたようだが、意外にも賛成したそうだ。華は、そのことにも驚かされた。だが、彼が賛成したのは、その孤児院の運営を華が行うからだろう。それだけ二人が、自分達のことを信頼してくれているということ。華は身の引き締まる思いだ。


「わかったわ。では、イザークにも王都に行くまで孤児院に寝泊まりしてもらいましょう。彼にはドームと孤児院の手伝い、どちらでも希望するほうをお願いして。


孤児院の立ち上げに人手がいるし、二人が彼等のお手本になってくれるのは、本当に助かる。


二人には、孤児たちと新しい孤児院でどのような生活をするかを話しあってもらってほしい。


生活するのに何が必要か、どんなことをすればいいか考えるきっかけになるし、孤児院でのルールを自分達で考えてもらうのもいいかもしれないから。」


 その言葉は兄弟に伝えられ、二人はドームに行く前に孤児院メンバーとシンロクをまじえ、話しあうことになった。




 


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