孤児院を06
「教会附属孤児院と新しい孤児院とでは、今後のあなた方の生活が大きく違うものになります。そのため、自分でよく考えて選んでください。
どちらの孤児院も、同じ孤児である仲間と共に、共同生活を送りながら学校に通い、勉強をし、将来、社会に出て職業につくために必要なことを学ぶ場です。あなた方が義務教育を受ける間の食費、学費などはいっさいかかりません。
ですが、この二つの孤児院には大きな違いがあります。まず、教会附属の孤児院では、あなた方のファミリーネームはチャペルとなります。
私の作る孤児院はかなり特殊な孤児院です。教会附属でないため、子供達の名前はチャペルになりません。そこにまず、大きな違いがあります。
そして、私の作る孤児院のほうでは、教会附属の孤児院にいるよりもずっと、たくさんの勉強をしてもらう予定です。優秀な成績をおさめた人には、さらに上の学校に行く援助も考えています。
援助する人数は、決めていません。よい成績をおさめられなければ少ない人数となりますが、逆に、たくさんの人がよい成績をおさめれば、その人数は増えます。
その成績の中に、魔力量の多さ、少なさをふくみません。魔力が少なくても、純粋に成績で決めたいと思います。
つまり、新しい孤児院は、単に孤児達に義務教育の間、衣食住を提供する場にするだけでなく、その将来をよりよいものにするため、勉学に重点を置くことにしているのです。
先日、私は新しく作る孤児院について相談しようと村役場を訪れました。役場の職員はこう言いました。
孤児を学校に通わせても、せいぜい労務者になるのが関の山。そんな子供を育てるメリットがどこにあるのか、と。
私には親がいません。そのせいでしょう、この言葉に怒りを覚えました。私は、あなた方の中から、この言葉を思い切り否定できる人間が出て来ることを期待しています。
ですが、これは私個人の希望にすぎません。私のすることは、あなた方にとっては、迷惑な押し付けになりかねません。
だから、この場であなた方の希望を聞きます。どちらにしろ、あなた方は将来、一人立ちしなくてはならなくなります。将来、自分でどうしたか、考えてください。」
華はそう言って、質問を受け付けることにした。
最初に質問したのは、華に対して終始そっぽを向いていた男子だった。
「あんたの作る孤児院に行かなかったら、俺達はどうなるんだ?」
「別にペナルティはありません。その場合は、教会附属の孤児院に行くことになるだけです。」
「あんたのとこに行けば、本当にチャペルにはならないんだな?」
「ええ。あなたが本来持つ名前のままで結構です。」
「学校に、行かせてくれるのか?」
「ええ。どちらの孤児院に行くにしろ、学校には必ず行くことになります。義務教育ですから。それに、読み書きができないと困ることになるのは、あなた自身です。
普通の孤児院では午前中に学校に通い、午後はそれぞれ自分で働き口を探して働き、お金を稼いでいるようでしたよ。
食事などは当番制で、年長の子供が年下の子の世話をしながら暮らしていました。」
「金は稼げるのか?」
「そうですねぇ。それについてはあまり考えていなかったのですが…。私としては、義務教育期間に稼ぐ小銭よりも、将来稼ぐであろうお金について考えてほしいですねぇ。」
「はっ、そんなもん、あてになるかよ。孤児にやらせてもらえる仕事なんて、どうせたいした稼ぎにならない。」
「あなたがそういう認識でいるなら、そうなのでしょう。目先の小銭が大事なら、それを信じ、せいぜい大事になさい。目の前にある確かなものを大切にするということも大事なことです。
ですが私は同じ孤児として、あなた方の未来の可能性をつぶしたくはありません。孤児に関する思いこみや既成概念は壊してしまいたいと思っています。
だから、勉強に限らず、料理人でも職人でもなんでも、やる気があるのなら出来る限り応援するつもりです。
選んだ職業が商売人だろうが職人だろうが、より多くの知識を持っている者のほうが有利です。新しい孤児院に行くことを希望する人は、こういう人になりたい、という目標を持ってください。
今すぐやりたい事が見つからない人は、孤児院に行ってから考えてもかまいません。ただし、希望するからには、徹底的にやってもらいます。途中で勉強がいやだとか、文句を言わないように。
こういった試みを孤児院で行うことは、はじめてのことです。大変かもしれませんが、そこで学んだことは必ずあなた方の将来に役立ちます。
これから私は、少しずつ色々なものを改革していきます。それに伴って、社会も変化していくでしょう。根気とエネルギーのいる仕事です。とても一人でできるものではありません。
私は今、私の仕事を手伝ってくれる人材がほしい。あなた方の中から、一人でも多く、私を手伝ってくれる人がでてきてくれたら、と希望します。」




