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御神櫻の放課後

 櫻の通う高校では毎年春にクラス単位の一日旅行が行われる。

 予算は一人五千円、クラス全員+担任参加、どこへ行っても何をしても良い。

 バスをチャーターして旅行に行くクラスもあれば、◯◯体験会、ボーリングやカラオケ大会、近場の河原でバーベキューというクラスもある。


 学級委員がリードして企画をまとめていくのだがこれがまた大変で、多数決で決まっても予算内に収まらなければ実行できない。あちこち検討しながら値段交渉も必要で、クラス内の身内のつても頼って計画していく。知らず知らず色々鍛えられるイベントではある。

 近頃では話し合いながらネットで次々検索出来るから昔の学生に比べれば格段に合理的かつ効率的だ。


 そしてその経過を各クラスごとに企画書にまとめ定期的に生徒会に提出することになっていて、その内容をチェックするのも生徒会役員の仕事となっている。


 学級担任も話し合いの場にいるが、決して内容に口を挟むことはない。あくまでも生徒の自主性に任せ教師はそれについて行くだけだ。

 なので、まさかないとは思うがクラスの暴走の歯止めとしていちおう生徒会がある。




「お前のクラス、えらく豪勢だな」


 葵が企画書をめくりながら呟く。

 それはそうだろう。バスをチャーターしたところで遠方は時間も金もかかる。せいぜい県北の高原や隣県境で森林浴やトレッキング、バーベキューか世界遺産見学、海辺で潮干狩り。


 それが櫻のクラスは日帰り京都旅行だ。しかも結構有名どころで昼食付き。


「松元君と永瀬さんがいるからね」

「ああ、なるほど」


 松元君のおじい様はバス電車タクシー等、県内の交通機関を掌握する企業の会長で永瀬さんのおばあ様は京都の有名料亭の女将だ。


「ガソリン代と高速代だけ支払うことになった。となると交通費は一人数百円だし、お昼は豪勢にとは言えランチなので価格は押さえめ、マナー教室付き」

「それはそれは………」


 そう、それはもう文句のつけようがないくらい上出来なコースなのだが、懸案事項が約一点。

 名簿を眺めていた葵も気付いたのかニヤリと笑う。


「ほぉ〜、八嶋ね。しかも、また京都ときた」

「言わないでくれる?憂鬱なんだから………」

「すっかり疫病神だな」

「疫病神でしょ!」


 くくくっ………と笑う葵の横で櫻は頭を抱えた。


 やっぱりこんな男、大嫌いだぁ〜!

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