御神櫻の天敵
挨拶はしたじゃないか。という言葉は飲み込み引きつった笑顔を返すのをそのまま無視して言いたいことだけ畳み掛けてくる。つくづく嫌味な男だ。
「一日旅行の見積りが出ていないクラスがある。今日中に明細と共に一覧にまとめ、問題があるクラスを教えてくれ」
は???未提出?どこのクラスだ?
「未提出のクラス委員には既にメール済みだ。回収を頼む」
こちらの言葉がいらないようで何よりです。でも私にも都合ってものがあるのをわかるか?この俺様野郎!
「家の用事なら楓に事情を説明しておいた。快く家事は引き受けてくれた。心配ない」
それは無言の脅しだよね?楓のヘタレめ………
たまには根性見せてみろ〜!
まったく昔からいつでも葵のイエスマンで言いなりだ。もっともこの男はノーという言葉は受け付けないから同じことか………
いつでも勝手に外堀を埋めてくれる。有り難いこともあるが、あくまでもそれは俺様男の都合次第で自分の思惑でしか動かないきわめて自分勝手な奴だ。
「算段はついたか?放課後生徒会室で待っている。じゃあな」
言いたいことだけ勝手に宣って行きやがりました。
この間櫻は一言も喋らず。言葉を発しなくても会話が一方的に成り立つこの不思議。
清水一家とはいちおう遠縁にあたるとかで、幼い頃から交流はある。が、御神家の方が本家筋にあたり立場は上のはずなのにやり込められてばかりだ。もっとも立場うんぬんは当主達の序列であって子供達には関係無いことかもしれないが。
それにしたって酷くないか?
奴の優秀さは認めるが、私にだって人権はあるはず。なのに常に外堀埋められレールを敷かれ選択肢を与えてもらえない。
生徒会副会長だって、選挙で会長が圧勝した途端に強制指名された。回りは回りで当然のように受け止め「旦那」と「奥さん」とまで呼ばれている。これにも納得がいかない。
付き合っている覚えはない。もちろんヤツからそれらしきことを言われたこともない。
ただの幼馴染みだ。付き合いの長い分櫻の思考行動は読まれているし逆もまたしかり。
だいたいあんな頭は良くても性格の悪い男なんて願い下げだ。これっぽっちも恋愛感情はない。
なのに櫻が否定し喚いたところで生暖かい視線が返ってくるだけなのが悲しい。
ため息をついて教室へと向かった。




