御神櫻の朝
ちょっと逃避してたら浮かんだので書いてみました。そんなに長くなりませんが、気長に読んでくださいませ。
御神櫻の朝は早い。
というのも家には両親と弟三人と妹三人、更に祖父母に曾祖父母、叔母の14人が暮らしているからだ。
当然ながら母の手が回らないところを手伝わないことにはまともに学校にも行けない。
玄関や外回りの掃除は祖父母がしてくれるので、櫻は弟妹を起こすのが先ず一仕事。
長男・楓、次男・榊、三男・樒の三人は家畜の餌やりが朝の仕事。犬の力丸の散歩も含まれる。鶏につつかれながら生みたて卵を回収して、また鶏を小屋に追い込むのが大変で毎朝じゃんけんが白熱する。
それから櫻は次女の椿と幼稚園児の桃と杏の双子を着替えさせて洗濯機を回し、食堂に連れて行く。
ご飯味噌汁お茶、一人前づつ盛り付けたおかずを配った後は弁当を詰めていく。今朝は父と自分と年子の弟・楓の三人分。弁当希望者は冷蔵庫のホワイトボードに記名することになっている。
その間に早々に食べ終わった子から順に洗面に向かうので空いた席に座りやっと朝食にありつく。
とは言え時間はない。掻き込んだ後は山のような食器を食洗機に次々放り込んで台所を後にし、末の双子の妹を幼稚園に送り高校へと向かう。
ここからやっと櫻も普通の女子高生らしくなりたいところだが、朝の戦場を駆け抜けた後は脱力していて今どきの女子高生のノリにはついていけない。
私の青春どこ行った???
と思わないでもないが、すっかり枯れた感じが漂っているのが現実だ。
櫻の通う高校は自宅から徒歩七分。この近さが選択の理由だが実は県下トップレベルの偏差値を誇る進学校だったりする。
自主自立を掲げてはいるが、校則はない。あくまでも生徒の判断にお任せだが、そこはやはり今どきの女子高生達。式典時の式服は決まっているが普段は私服でも式服でも何を着ても構わない。おしゃれな"制服"もどきを着てスカート丈の短さを競っている。
櫻は私服は毎日のコーディネートが面倒臭いし洗濯物が増える、だがしかし式服の清楚な紺色のワンピースは自分のイメージとはかけ離れているような気がしてブレザーの制服もどきを着用している。これが一番楽なのだ。
適当に挨拶をしながら下駄箱に着けば幼馴染み兼生徒会長の清水葵が待ち構えていた。
途端に危険信号が点滅する。これは面倒事しかない。
「おはようございます〜」
そそくさと階段へと向かおうとすれば、すかさず後ろから襟首を掴まえられる。
私は猫か!?
と思うが勿論口には出さない。
「俺を無視して行こうとは、良い度胸じゃないか。御神副会長」




