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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
99/209

火龍と会いました⑤

「つまりその……、竜草という草を見付けてくればいいのか?」

 火龍に確認する。

「そうよ~。でも人間には難しいかも知れないわね。」

「何故だ?」

「竜草は世界樹の上の方に生えているからよ~。空が飛べないと無理だと思うわね。」


 世界樹を登るとそんなものが生えているのか。

 研究したくとも世界樹はエルフの聖地、登るどころか葉の一枚すら他種族は持ち帰れない。

「魔族には飛べる奴もいるけどどうなんだ?」

「魔族も多分無理ね~、高度を上げ過ぎると呼吸できなくなるでしょあの子達。」

 空を飛んだことは無いからそりゃそうだなとはならないが……。

 火龍がそういうならそうなのかもしれないな。


「じゃあそこに行ける生き物って……」

「そうね~、地上と行き来できるとなると飛竜か飛龍くらいね。」

 要は目の前の火龍にお願いするしかないって事だな今は。

「お願いしてもいいだろうか?」

「普通ならお断りするところだけど……。一つだけ条件があるわ。」

 なんだろう、ドルフ達みたいにまた紅茶を……、なんて言うつもりだろうか。


「アレン君が一緒に行く事よ。」

 これは流石に予想外だった。

「俺が行っても何かの役に立つとは思えないんだけど……。」

「勿論よ~、私だけで行けるもの~。」

 じゃあ何で……。

「だって独りだと寂しいじゃない、遠いんだもの……。」

 火龍は少し困った笑みでそう言った。

 作り出された偽物の見た目とわかっているが、これを断れる人間の男がいるだろうか……。


「う、わかった……。お供させてもらうよ……。」

「本当~? じゃあ獣人さんの所を終わらせたら迎えに行くわね!」

 エヌの身体にすぐに影響がないというのが先程の話で分かったので、とにかく優先してくれと頼む必要もなさそうだし、それでいいか。

「わかった、待ってるよ。」

「は~い、じゃあこれで一つ目は解決ね?」

「ああ、ここに来て良かった。希望が持てたよ。」


 俺がそう言うと火龍は満足そうに頷いた。

 そして紅茶のおかわりを淹れながら聞いてくる。

「それじゃあ最後のお願いをどうぞ~。」


 さて、色々な事があって後回しになってしまったが、そもそもこれが本来の俺の目的だったな。

「うん、実は火龍の牙が欲しいんだ。」

 途端に火龍が後ずさる。

 そして、変態を見る様な目でこちらを見て来る。


 何か変な事言ったか? 言ってないだろ?

 火山から集落を守ってくれ。

 世界樹の遥か上の方まで行って竜草を取って来てくれ。

 この二つを簡単に了承してくれたじゃないか。

 脱皮の時に出る何かをくれって言っただけなのにそんな目で俺を見ないでくれ……。


「アレン君……、本気で言ってるの?」

「そ、そりゃ勿論本気だけど……。」

 火龍は更に穴の奥へ。

「アレン、一体何なのだ火龍の牙とは、先程までの火龍とは思えないぞ?」

 ドルフが心配して俺に話しかけて来る。

 が、俺にもわからない、どうしたらいいんだ。


「その、ごめん! 何か良くない事を言ったのなら謝る、発言も撤回する! 許してくれないか?」

 火龍は黙ったままだ。

 そのまま光の届かない奥へと消えて行った。


「どうしよう、何かまずい事になったかもしれない……。」

 慌ててドルフの腕を掴んでしまった。

「落ち着けアレン、火龍の牙という物は何なのだ? 言葉そのままの意味か?」

「違う、火龍の牙っていうのは人間が勝手にそう呼んでるだけで、本当は火龍の内臓らしいんだ。」

「内臓をくれなんて言ったら怒られるに決まっているだろう?」

「いや、そうじゃなくて、内臓なんだけど脱皮すると自然に不要になるというか……、口から出て来るらしいというか……。」

「一回深呼吸しろアレン、俺達にわかるように頼む。」

 ドルフは俺の肩に手を置き、諭す様にそう言った。


 俺はゆっくりと深呼吸をして、頭に酸素を送り込む。

 しかし、もしかしたら俺の失言で獣人族の集落もエヌの命も、どちらも約束は反故にされるかもしれない……。

 そう思うと落ち着いてなんかいられなかった。


「いいぞ、大丈夫だ。ゆっくり話してくれ、火龍の牙というのは内臓の事なのか?」

「これの事よ~?」

 え?

 目の前には満面の笑みの火龍。

 え?

 差し出された手には凸凹とした、指二本でつまめそうな小石。

 え?

「ふん、謀られたようだな。」

 え?

「ごめんなさいね~、最後のお願いがあんまりにも大したことなかったからつい。」

 え?

「アレン、目を覚ませ、全て火龍の演技だ。」

「そうなのよ~、凄い顔してたわよ~アレン君。初めて会った時も私の演技のせいで酷い顔だったけど~。」

 ああ、やっぱりあれは演技だったのか。

 今更どうでもいいけど……。


「いくら何でも悪趣味が過ぎるぞ。アレンは私の友だ、今後はやめてもらいたい。」

「あらあら、私だってもうアレン君とはお友達よ~? ねえアレン君?」


 訳が分からないので取り敢えず頷いた。

 千年生きた龍の冗談を笑って受け止められる程、俺の心は頑丈じゃなかったみたいだ。

 天使の種の時もそうだったけど、一々心臓に悪いのでもう勘弁願いたい。

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