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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
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火龍に会いに行きます④

「ここからは歩きになる。訓練された名馬と言えど、流石に山に入ろうとはしないからな。」

 そう言ってハバキは俺を馬から降ろす。

「いやありがとう、助かったよ。随分短縮できた。」

 ハバキに礼を言って握手をしてから、来た道を帰るハバキを見送った。

 またあの森を抜けるのだろうが、ハバキの剣を両断した何かが悪いものでなければいいが。


 毒のせいで山に魔物は殆どいないらしいが、むしろ俺からすれば幸運だとも考えられるな。

 戦闘も不得意とまでは言わないが、出来ればやりたくない。


 整備された登山道を登り、龍の穴を目指す。

 龍の穴への行き方はココノエさんに聞いておいたのでわかるが、暗いので慎重に進む事にした。

 封鎖された場所までは難なく辿り着いたのだが、ここからは登山道を外れる事になる。


 世界中至る所にそれっぽい場所はあるので、龍の穴という名称自体はありふれているし、この山も龍が住んでいるらしいという事は言われているが、本当に龍が住んでいると思っている者はあまり居ないらしい。

 トビーは勿論、何代も前の王から龍との約束でお互い保護をしているので、ここを観光地にする話が出れば全て裏で潰して来たという事だ。

 あくまでもそれっぽい洞窟がある、若しくは昔は住んでいた。

 それを旅人や商人に面白おかしく話して聞かせる者がいるが、聞かされる方にも当然そんなもの頭から信じる者はいない。


 封鎖している門をよじ登り、しばらくは道なりに進む。

 毒が空気中に存在しているのだろう、少しずつ息苦しくなってくる。

 やがて足元にサツマタケが少しずつ見付けられるようになり、毒もその強さを増す。


 息をする度に喉に痛みが走る。

(そろそろ普通なら死ぬ頃だな……。)

 そう考えながら倦怠感と痛みに耐え歩を進めると、俺の目線くらいの高さで三つに大きく枝分かれした大木の元に着いた。

 この大木に向かって右に登山道は続いているが、獣道すら見当たらない左へ向かえば、一つ目の龍の穴へ辿り着くらしい。


 一つ目というのは、要は物好きが探しに来た時の為の偽物で、それっぽいものを龍が作ったのだそうだ。



 悪い視界に何度か足を取られながらも、何とか偽物の龍の穴へ到着する事ができた。

 目的の龍の穴へはこれで半分程という話だ。

 ここに来るまでに焚火に使えそうな枝も集めておいたので、今夜はここで休息を取る事にする。



(しかしまあ、偽物なのに随分でかいな。)

 確かに龍が住んでいると言われても納得してしまう巨大な洞窟。

 横にも縦にも広いし、暗くて見えないが奥にも結構続いてそうだ。


 洞窟内はむき出しの岩肌なので、サツマタケは生えていない。

 ここに龍が居ない事はわかりきっているし、毒の薄い所まで入り込んで焚火の準備を始める。


 喉の痛みは仕方ないが、倦怠感が酷い。

 使うつもりは無かったが正直ここまできついと思っていなかったので、仕方なく解毒薬を一本取り出して飲む。

 勢いだったとはいえ、三本買っておいてよかったな……。




 焚火をボーっと眺めていると、少しずつ喉の痛みが引いて来た。

 どうやら活性状態の毒が消え、喉の再生が始まっているらしい。

 今治ったところで明日また毒の中を歩くことになるんだが、取り敢えずぐっすり眠る事は出来そうだ。


 燃え移る物もなさそうだし、そのまま横になって眠りに入る事にする。




 どのくらい経っただろうか。

 俺を照らしていた火はとっくに消え、月明りも届かない暗闇の中で、何かが動く気配を感じ目が覚める。


「誰だ!?」

 咄嗟に構えようとしたが、短剣はハバキに貸したので無い。

 俺の声を聞いて何かの影が動いた瞬間、俺は右肩をえぐられ痛みにうずくまる。

「いってええええ!!」

 まさか魔物が居たのか?

 いや、ここは毒が届いていないからあり得る事だ……。

 逃げ遅れた魔物がここに避難して、飢えに耐えながら何とか生きながらえていたところに、俺が無防備で現れた。

 くそっ、油断した、考えが浅すぎた。



 このままでは魔物の餌になっちまう、死にはしないが再生すればするだけ餌を提供してるのと同じだ、サツマタケの時期が終わるまでひたすら食われ続けるのかよ……。



 武器になりそうな物はないかと、どうにか動かせるくらいまで再生した肩を押さえ辺りを探る。

 薪は全部燃やしてしまったので無い。

 どうやら鞄を取られたらしい、ハバキと馬上で食べたあれの匂いでも残っていたのだろうか。


 逃げ出すなら今しかないかもしれない、龍への土産はなくなるが仕方ない。


 しかしなるべく足音を消して洞窟を出ようと歩き始めた時、突然後ろから声を掛けられた。

「すまない! 待ってくれ!」

 魔物が居ると思っていた俺の耳に入って来たのは、間違いなく人間の言葉。

 驚いてゆっくり振り返ると、目の前に獣人の男が立っていた。

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