入居します⑬
「という訳でして、国王陛下と人材斡旋業者社長がイケてる服装を語り合うのを、ガチガチに緊張した家具屋の社長が見守るという状況になっております。」
「そ、そっか、仲良くなっちゃったか。」
何がとは言わないが共鳴してしまったか。
「あー、でもよ、家具屋がそこに拘束されちまったら次の便が困るんじゃねーのか?」
シヴに言われて気付いたが、司令塔を奪ってしまったせいで滞られたんじゃ元も子もないな。
「……考えてなかったって面だな。どうせ手が空いてんだ、家具屋に今日の予定だけ聞いて手伝ってくるとするか。」
そう言い残すと、シヴは庭の方に向かって歩いて行った。
「では私も家具の設置をさせていただきますね、どの部屋が私の部屋でしょうか。」
「え?」
「え? って、私の部屋はどこでしょうか。」
「いや、そこだけど。」
俺は使用人室を指差す。使用人用の部屋なんだからここでいいんじゃないのか。
「あの、もしかして詰め所に家具を入れられたんですか?」
「ごめん、間違ってたのかな……?」
ローランは一つ溜息を漏らして、俺達が家具を入れた部屋を見ながら言う。
「アレン様、その部屋は使用人が休憩や支度をするための部屋でしてね……。簡単に言えば使用人の事務所のようなものですから、一メイドごときに与えるような居住スペースとしては豪華すぎます。」
……なんだ、心配して損したな。
「じゃあいいじゃないか、不満がある訳じゃないんだろ? どうせ今メイドはローランしか居ないんだし、仮に後から誰か入ってきたとしたらそのままメイド長じゃないか、長には豪華な部屋があって当たり前なんじゃないのか?」
「執事長を務める師匠ですら、領主館ではあの部屋の半分程しかない部屋に住んでいるのですが……。」
「いいからいいから、家具の配置しちゃってよ。」
「……わかりました。」
戸惑いながら使用人室、というか自分の部屋に入って行くローラン。使用人って意外と扱いが酷いんだな、知らなかった。まあ他所は他所、うちはうちだ、うちのメイドの部屋は大きい、それだけの話だ。
と、間違いを認めたくないし、家具を運びなおすのも面倒なので無理やり納得しようとしていたら、キイを先頭に先程ベッドを運んで来た男達が上がってきた。
「お主達、トビーはどうしたのじゃ?」
「ああ、何か友達が出来たみたいだから放置してる。」
「友達……? よくわからんがまあ良いか。シヴはどうしたのじゃ?」
「シヴは残りの家具を運ぶのを手伝うって出て行ったよ。すいません、シヴといううちの者も手伝うらしいので、仲間に入れてあげて下さい。」
キイの後ろの男達にシヴの話をするも、キイの後ろで男達は動かずじっとしている。そして、何故か何人かはたまに俺に変な視線を飛ばしてくる。
「聞いた通りじゃお主達、すまんが頼んだのじゃ。」
キイがそう言うと男達は我先にと出て行った。
「喜んで!」
「俺が先だ!」
とか言いながら。
「何なんだあれ……。」
「ワシにもよくわからんのじゃ。」
「魅了されたのでございましょう。」
部屋に行った筈のローランが唐突に現れた。
「キイ様はエルフの中でもとりわけお美しいですからね。ベッドを運んで、大方変な想像でもしてしまったのでしょう。」
「ああ、じゃあ俺に向けられてたのは嫉妬とかそういう類か。」
「二人して訳の分からんことを。つまらん世辞は聞き飽きたのじゃ、次が届くまでやる事もないし、ワシもローランの部屋を手伝うのじゃ。」
それを聞いたローランは目を丸くして俺に耳打ちする。
「あの……、キイ様はまったくご自覚ないのですか?」
「ああ、そういうのは恐ろしく鈍感だね。ローランはどうなの?」
「私は自分の容姿くらい客観的に見られますよ。男性の心を掴むくらい雑作も無いでしょう。」
「自己陶酔者なの?」
「客観的にと言いましたでしょう? 自己評価とはまた別の話です。」
「何をしておるのじゃ、早く片付けてしまって食事にするのじゃ。」
ローランの部屋から顔だけ出したキイがそう言うので、俺達も下らない話はやめてさっさと手伝う事にした。




