入居します⑫
家具屋の店主が地下から上がってきたところに鉢合わせたので、現状を説明しておすすめの家具を手配してもらう事にした。エルフ建築の方はキイがある程度注文はしていたので、それが届けばそれなりの見た目にはなるらしいが、予想外だった増築された方の建物には物がない状態なので、昨日のお詫びも込めて「値段に制限なしで落ち着ける色合いの物を」と一式任せたら逆に恐縮されてしまった。
というやりとりを玄関でしていたら、見覚えのある日焼けしたチャラいおっさんが、真っ白な歯を見せながら歩いて来た。
「トールさんじゃないですか、どうしました。」
「こんちゃーす、兄貴の店の配送に手が要るって言われたんでうちから何人か使って貰ってるんすよ。様子見にきたんすけどどっすか、みんな真面目にやってますかね?」
「お前より使えない人は居ないから安心しなさい。」
ちょっと嫌味混じりに店主さんが言い放ったけど、そんな事言いながらも兄としてしっかり面倒みてんだよな、こっちはこっちでいい人オーラが出てる。
「良かったー、家具に傷付けちゃったらどうしようとかさっき思って、慌てて歩いて来たよ。」
「最初に考える事だし、慌てたんなら走って来なさい。」
本当にこの人はローランに出会えて良かったよな、シヴよりは下だろうけど、そこそこ年齢もいってそうだし、こんな派手な格好で……、日焼けして……、派手な格好で日焼け?
「あの、トールさん、もしかして獣人に食べ物あげてません?」
「えっ!? なんで知ってるんすか? 見てたんすか?」
ピーニャの言ってた派手な黒い人ってこの人か……。
「ピーニャから直接聞いたんですよ、はで……優しい人がご飯をくれるって。」
「えー、そんな事言ってたんすかあの子、照れるっすね。」
照れる事かどうかはわからないけど、やっぱりいい人ではあるんだな。
「でもあの子凄いんすよ、重い物もひょいひょい運んじゃうんす。だから最初はうちで働かないかって誘ってたんすけど、フラれてばっかりすね。」
「あぁ、あの獣人の娘さんの話か。獣人なのだから人間より筋力があるのは当然じゃないか。」
どうやらピーニャの事はお兄さんも知っているらしい。
「え、そうなの? 獣人って凄いんだなあ。」
この人には差別意識なんか微塵もないだろうけど、獣人というだけで嫌う人間も多いから、人材斡旋に雇うと余計な厄介事も舞い込んで来そうだな。この町ではあまり心配無さそうだけど、酷い町は酷かったんだよな、鎖で繋がれた奴隷とかも居て、あれは見ていて気分のいいものじゃなかった。
「そういえばローランは真面目にやってるすか?」
「はい、今は奥で封印作業してもらってますよ。」
「封印作業すか?」
「封印作業です。」
「何か幽霊とか出るんすか?」
「もっと悪い物が出ます。」
「えっ! 怖いすね……。」
「見てくるといいですよ、今は封印中だから何も悪いことはしないと思います。庭から行くとすぐ見つかる筈です。」
「マジすか? 怖いけど見てくるっす、兄貴もついてきてくれない?」
「何で私が……、私は忙しいんだよ。アレンさんもうちの弟をあまりからかわないで下さいよ……。」
「いえ、からかってないです、本当に封印中ですよ。」
「ほら兄貴、嘘だったら怒ればいいじゃない、ちょっとだけ見に行こうよ。」
「……仕方ない、ちょっとだぞ。ローランさんに挨拶したらすぐ仕事に戻るからな?」
そう言って二人はローランに会いに向かった。
その数分後、何故かローランだけが戻ってきた。
「あれ、何でローランがここに?」
「人が悪いですねアレン様も。トールさんは馬鹿だって知ってるでしょうに。おかげでまた面白い物が見られましたけど。」
「え、どうなったの?」
「それはですね……」




