↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
20/209

メイド雇いました①

 夜、いつものように食堂で飲んでいる俺達だが、何故か俺の後ろにはローランもいる。

 宿屋生活も今日で最後になりそうなので、まだ飲んだ事のない酒をすべて頼んだ。


「しかしまあアレンがあそこまで暴走するとはな、驚いたぜ。」

「やめてくれ、もう忘れてくれ。」

「ローランの説明で勘違いだと気付いた時の、お主のあの顔は忘れられんわ。」

「すいませんでした、俺が悪かったです。」

「全くです、あれほど笑った事はここ数年ありませんでしたよ。」

「なんでローランもいるんだよ。」

「あら、私はアレン様の使用人ですもの、まだお屋敷がないのでここで見守っております。」


 そう、恥ずかしい勘違いを指摘され顔から火が出る程の思いをした俺は、大笑いされながらトールさんに謝り倒したのだ。


「あ、いっすよいっすよ、ぶっちゃけローランの話よく分かんなかったんで。間違いは誰でもありますよ!」

 と、トールさんはわかってて許してくれたのか本当にわかってないのか、よくわからない返答をしてくれた。

 弟を極悪人扱いされ、家具屋の店主は少し怒っていたのだが、トールさんの店を積極的に利用します、という約束で許してもらえた。


「まさかあの場でローランとの契約を取り付けようとするとはの、トールという男も変わった奴じゃの。」

「ええ、トールさんは馬鹿でお人好しの馬鹿ですから。」

「なんだ、おまえさんあいつに惚れてんのか?」

「ありえませんね。人間としては好きですが、トールさんに恋心を抱いたことなど、火薬の一粒程もございません。これからも一切ないでしょう。」

 可哀想なトールさんは置いといて、ローランはたった数時間で恐ろしいくらいに馴染んでいた。


「いくら使用人と言っても、そこに居られたら落ち着かないからローランも座ってくれないかな。」

「ありがとうございますアレン様、ですがお気持ちだけで結構ですよ。」

「いや、ローランを気遣ってるわけじゃなくて……。」

 頑なに使用人の姿勢を崩そうとしないローランに少し困っていると、閃いた顔をしてキイが救いの手を差し伸べてくれた。


「今日の契約はここまでじゃ、この先はただの奢りじゃから遠慮無く飲んでくれて構わんのじゃよ?」

 それを聞いたローランは、隣のテーブルから椅子を一脚持ってきて俺とキイの間に座る。

「では私も頂きますね。あと、遠慮なくとおっしゃいましたね、後悔しますよ?」

 さっきまでの張り付けたような微笑みは無くなり、ニコニコとお品書きをめくるローラン。


「こりゃまた……、たまげたのう。お主ちとメリハリが効き過ぎておらんか。」

「ふふふ、本業の方の癖でございます、仕事に徹してしまうのは。あ、店員さん、この店で一番強いお酒

どれかしら?」

 呼び止めた店員に尋ねるローラン。


「それでしたら今シヴさんが飲んでいるやつですよ、飲みやすいとは言えないのであまり女性の方にはお勧めしていないですが……。」

 当たり前だが毎日顔を合わせるし、酒も食事も大量にいつも頼むので、食堂の女給もしている宿屋の娘さんとはすっかり仲良くなってしまった。


「構いません、それを一番大きなグラスで。それと料理を上から……、そうですね、10品順番にいいかしら?」

 ローランはその本業で鍛えられているんだろう、スラッと背は高いが細身な体つきをしている。その細い体のどこにそんなに入るんだよ、悪ふざけをするとも思えないし。


「酒に関しちゃまあ誰かが飲むからいいけどよ、お前さんそんなに食えんのか? 一口ずつ食べて残します、って金持ちの道楽みたいな腹積もりなら俺も黙っちゃいねーぞ?」

「ご心配ありがとうございます。私、料理は作るのも食べるのも大好きですからそれには及びませんよ。それよりもお支払いの方を心配された方がいいと思いますが。」

 え、10品で終わるんじゃないの? アサシン凄いな。


「支払いなら大丈夫じゃよ、気にしなくてよい。それよりそろそろ聞きたい事を聞いても良いかの?」

 キイはもう満腹なようで、ゆっくりと果実酒を飲んでいる。


「ええ、答えられる範囲ならお答えします。ちょっと店員さん、一番大きなグラスでと言った筈ですが?」

「本当に強いお酒だからまずはそれで飲んでもらってから様子を見ろってお父さんが……。」

「そうですか、わかりました。」

 シヴが飲んでいたグラスと同じサイズのグラスで来た酒。強がりや勢いで頼んだ客に倒れられても困るだろうから賢明な判断だと思う。しかし、そのグラスをおもむろに掴んだローランは、一気に飲み干してしまった。


「いかがでしょうか?」

 顔色一つ変わらないローランを見て、絶句して厨房に向かう娘さん。

「やるじゃねーか、中々きついぜこの酒?」

 同じものを飲んでいたシヴがニヤついている。


「お褒めにあずかり光栄です。ところで……。」

 ローランが肉を口に運びながらキイの方を見る。


「うむ、答えたくないものは別に答えなくても構わん。その代わり嘘をつくのは無しじゃ。良いか?」

「あら、嘘をついたかどうかはわからないのではありませんか? どれほどその口約束に効果があるか。」

「そうじゃな、本当のところはわからんが、約束してくれるならワシはそれを信じるとしよう。」

「お優しいのですね、嘘しか言わないかもしれませんよ? それでも構わないとおっしゃいますか。」

 喋りながら隙を見てはどんどんとテーブルの上の料理を片付けていくローラン。

 

「答えないのは構わん、この場で嘘をつくのも判断しようがないから止められはせん。しかし……。」

「しかし?」

「後々嘘だとわかった時には、そこのオウルが黙っておらんぞ。」

 チラリとキイはシヴを見る。シヴはローランに触発されたのか麺料理を口いっぱいに頬張っていた。


「これは弱りましたねえ、朝お会いした感じですと……。私見たままか弱い乙女ですから、シヴ様に勝てるとは思えませんものね。」

「おう、面倒そうだとは思うけどよ、俺もおまえさんにゃ負ける気しねーな。飛び道具ありったけ持っててもゲンコツくれてやらあ。」 

「フフ、わかりました、お約束いたしましょう。質問をどうぞ。」


 それでも進度を崩さず料理を減らしていくローラン。

 キイも特に警戒しているわけではなさそうなんだが、メイドとして雇ったからには、週に2日とはいえ同じ空間で過ごす事になるし、そもそもアサシンだって認めちゃってるからな。確かめておきたい事は沢山あるだろう。俺だってあるし。


「よし、では最初の質問じゃ。お主の飼い主は誰じゃ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。