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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
19/209

色々手続きします⑦

 店員が持って来た水をゆっくり飲み干したローランは、冷静さを取り戻した。

「一体何なのじゃさっきから、ワシらも訳がわからんぞ。」


「それは私が説明いたしましょう。」

 何事もなかったかのように、さっきの微笑みに戻っているローラン。

「その前にまず一つ、こちらのトールさんは、演技ではなく本物の馬鹿です。」

「ちょっ! 何言い出すんだよローラン! ひどすぎるでしょそんな目で見てたの!?」

 極悪人はトールというのか、そして馬鹿なのか。


「はい、出会った当初から常にそんな目で見ておりましたよ。トールさん、本当にとんでもない馬鹿なんですもの。」

 見かねた家具屋の店主が、擁護するつもりなのか口を開く。

「ええ、うちの弟は本当にご覧の通りの馬鹿でして、それで私がお客様の斡旋をしておりました。」

 全然擁護しなかった。


「えええ、兄貴までひどくない……?」

 まだ全部信じた訳じゃないが、ちょっと可哀想になってきた。家具屋に客を斡旋される人材斡旋業って。


「ただし、救いようのない馬鹿ではあるもののその心は優しく、正直で、このお仕事を始められたのは、本当に困っている人と人の架け橋になりたいとの思いからです。愛すべき馬鹿なのですよ。」

 ちょいちょい馬鹿って単語を入れて来るせいで、褒めているのか貶しているのかまったくわからない。


「小声でお話されておりましたが、私読唇術を少々嗜んでおりますので、貴方様方の会話はすべて把握しております。何が、とは申しませんが、私に関しては概ね正解でございます。」

 アサシンってそんな事もできるのか。ていうかむしろアサシンならできそうなもんだな、油断した。

「ですから、私は最初はトールさんを利用しておりました、働いてみたいお屋敷に紹介していただく為に。」

 事実を聞かれては困る相手がいる以上ハッキリとは言わないが、つまりはやっぱりメイドとして潜り込んで標的を始末していたんじゃないか。


「そうそう私、汚れるのが嫌いでございまして。血の汚れなんて中々落ちないから特に。護身術は習っておりますが。」

 これは暗に殺しはしてないって言ってるのかな、よくわからなくなってきたぞ。


「ふふ、脱線してしまいましたね、先程話しましたように、トールさんを利用していた私ですが、トールさんの余りの馬鹿さ加減に辟易してしまいましてね。見切りをつけた……、訳ではなく、お手伝いをする事にしたのです。」

「そうそう、ローランが来るまでは毎月赤字だったんだけど、事務とか色々やってくれるようになって、今は何故か黒字なんすよ、不思議っすよね~。」


「不思議でもなんでもありませんわ、すべて私が管理しているんですもの。」

「そうか~、それは知らなかったよ。ありがとうローラン。」

「ほら、馬鹿で正直でしょう?」

 演技じゃないとしたら確かに馬鹿だな、納得。 


「さて、以上を踏まえて、そちらの方が勘違いした内容はといいますと……。」

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