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異世界転生って性別も変わるんですか?  作者: 幻影の夜桜
やはり俺の性別は間違っている
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第2話 S級魔法 ②

七夕ですね。


7/7に7話を投稿するという、ラッキーな日でもあります。

「この卵焼き美味しいね!」

「それはミラちゃんが作ってくれたんだ」

「そうなの!? ミラちゃん魔法使いな上に料理もできるなんて、いいなぁ〜」

「か、簡単なのしかできないけどね」


 すっかり目も覚めて元気になった少女に卵焼きの味を褒められている。自信もあったし普通に嬉しくはあるのだが、朝の出来事のせいで何か妙に複雑な気持ちになっていた。

 実はこの子、とんでもない逸材なのではないだろうか。

 俺はそんなことを、幸せそうに卵焼きを頬張る一人の少女を見ながら考えていた。


「ねぇミスト! これならミラちゃんにも料理当番やってもらったらどう!?」

「賛成だな。生姜とからしを間違えるどこかの誰かのせいで、ミストに頼りっぱなしだったしな」


 ……えっ。砂糖と塩はよく聞く話だけど、生姜とからし? さすがに嘘だろ。


「なっ……。え、エルヴァだってロクに料理出来ないくせに!」

「俺は男だからいいんだよ」

「男女なんて関係ないんだよっ!」


 本当らしい。どうしよう、この子、お嫁に行けるのだろうか。

 さすがに生姜とからしを間違えるのは重症である。生姜焼きを作ったつもりが、実はからし焼きでしたなんてことを想像すると、なかなかのテロのようにしか思えない。


「ミラちゃんは、料理当番任せても大丈夫?」

「えっ。あ、うん。大丈夫だよ」


 自分のことを棚に上げて、一人勝手にシルヴィアの将来の心配をしていたところ、突然話を振られて戸惑いながらも返事を絞り出す。

 あれ、俺こっちに来てからまともに第一声放てたことあったっけ。


「じゃあ今度、みんなで当番を決め直そうか」

「やったー! 仕事が減るー!」


 ミストの提案に、シルヴィアが誰よりも無邪気な笑みを浮かべた。

 多分当番というのは家事の話だろう。考えてみればシェアハウスみたいなものであるから、住んでる人達で家事を分担するというのは、至極当たり前のことだ。


「それじゃあ、いつ決める?」

「悪い。俺朝は用があるんだ」

「僕も昼からは用があるから……」


 もしかしなくても、ミストの用は俺のことだろう。なら俺は用の有無を言う必要もあるまい。


「夜はどう?」

「大丈夫……だけど……」

「けど?」


 ミストの自然な提案に、シルヴィアが何かを言いだけに口を動かす。

 少しごにょごにょとしたシルヴィアは、おずおずとミストを見ながら。


「その……今日のお風呂掃除とか、私当番だから……」

「よし、夜で決まりだな」

「ちょ、ちょっとエルヴァッッ!」


 やかましいなぁ。

 チラッと隣で食べるミストに目をやると、夜に決まったと見てまた食事に戻っていた。

 どうやら普段からこんな感じらしい。

 しかし二人並んで食べてるあたり、仲は良いのだろう。


 そんな様子がトリガーになった訳ではないが、ふと昨晩見ていた冒険者カードのことを思い出したので、正面でうるさい二人をよそに俺は隣に座るミストに疑問をぶつけることにした。


「ミスト。これって何?」


 俺は冒険者カードを取り出すと、こちらに意識を向けたミストにそれを見せた。

 俺が知りたいのは、最大値が100ではない、HPやMP、GPなどとアルファベット2文字で表された大きい方の数値である。


「ああ、これは基礎値を基にしたステータスだね。これは直接戦闘に関係する数値なんだ。例えばHPは Health Point の略で体力って意味なんだけど、これが0になると死ぬ、みたいにね」

「え、じゃあこれリアルタイムな数値が反映されるの?」

「そうだね。ミラちゃんの今の値はほとんど最大値だと思う。あ、でもポーチの分ちょっとMPは減ってるのかな」

「最大値ってレベルが上がったら大きくなる感じ?」

「れべる?」


 えっ。何その「何言ってるの?」みたいな反応。

 もしかしてそんな概念がないって意味ですか?

 異世界なのに? ファンタジーなのに?


「ご、ごめん。何でもない。えっと、じゃあもうここから上がらないの?」

「いや、もちろん練習や実戦経験で上がるよ。それに、ステータスは上限値が無いのも特徴的だね」

「え、そうなの!?」

「うん、一応ね。もちろんどんどん上がりにくくなるけど……」

「へぇ〜。ちなみに私のステータスはどう?」


 どうやらレベルという言葉がないだけで、実質経験値みたいなものは存在するらしい。

 そして何でも答えてくれるミストに甘えて、俺は話のついでに自分のステータスの良し悪しも聞いてみることにした。

 純粋に自分のステータスがどんなものかを聞きたかったのだが、きっとバカみたいに高いはずの魔力で驚かせ、褒められたかったというのもちょっとある。

 そして当のミストは突然の振りにも関わらず、じっと俺のカードを見ると少しだけ驚いたような表情を見せる。

 そう、それ。それが見たかったの。ごめんね、意地悪いことして。


「うん。16歳にしては少し魔力が高いね。その他も特別低いものはないし、良いステータスじゃないかな」


 ……あれ?

 もう少し興奮して欲しかったのだが、性格的にあまり興奮しないのだろうか。もしかしたらいつも冷静沈着で物事にあまり動じないのかもしれない。

 しかし仮にそうだとしても、シルヴィアほどじゃないが、「こんなに魔力あるなんてすごいよ!」くらいの反応を期待していたので少し残念だ。


「それにしても、信仰力、本当に100なんだね。驚いたよ」


 あー、それ! そういう反応が欲しかった!

 ……のだが、この反応が魔力ではなく、信仰力に関してのみなのが、俺は少し引っかかりを覚えた。

 今この反応を見せたということは、すなわちこれくらいの反応ならするということである。

 しかしこの反応は魔力には無かった。


 ミストは相変わらず柔らかな笑みを浮かべて会話相手の俺を見つめているが、正直もうちょっとどうでもよくなってきている。


 魔力・075

 MP・763


 俺のカードに書かれた数値はそれだった。

 MPの相場は分からないが、魔力が3/4というのは、7割が魔法使いの基準の時点で、少なくとも「たっぷり」とは言えないだろう。


 この後あのバカのセインにどうして聞き出してやろうかとのシミュレートを繰り返しながら、食事を胃に流し込んだ。

人物No.3

名   前:ミスト

性別・年齢:男・18

誕 生 日:7/25

職   業:戦士

ミラの所見:

なんでもできる、世界に必ずひとりは居る天才だな。

俺の髪まで結ってしまうし、多分できないことはないと思う。

生活的にもめちゃくちゃ助かってるし、こいつに拾われて心底良かったと思ってる。

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