『ボスとの180分』
洋館の扉が閉まる瞬間、リリアはアッシュを助ける為風の力を発動しようとする。
しかし、力が洋館自体に吸い取られてしまった。
「!?え、なに??」
リリアの風の力は不発に終わる。
『ドォン……』と洋館の扉は重い音を立ててアッシュを飲み込み完全に閉まる。
リリアはアッシュを追おうと扉に近付くが、一定距離から先に進めない。
「…………結界?……妖精避けの結界が張ってあるわ。…………アッシュ………………。」
リリアは不安な表情を浮かべるがアッシュがこの洋館に幽閉されている限り手が出せない。
ドウズは思惑通りとばかりにニヤつくのを押し殺したような表情で洋館から立ち去る。
洋館に手が出せないと理解したリリアは取り敢えずアッシュ奪還のヒントとチャンスは無いかとドウズに付いて行く事にした。
ドウズは洋館から少し離れた『酒場レストラン
蟒 虫〜它 ヤン』へと入って行く。
店内は暗過ぎない程度に調整された間接照明と深い赤と黒を基調としたオシャレな内装だ。
「ウワバ〜ミヤンへようこそいらっしゃいました。」と黒服の紳士的な店員が軽く頭を下げながら挨拶をする。
「これは、ドウズ様。奥のお席にお連れ様がお待ちですよ。」
と店員の指先までピンと伸ばされた腕の方向へとドウズは誘導された。
ドウズは店員に「いつもの」とだけ言って案内された奥のテーブルへと向かう。
リリアもドウズの頭の上やや後方を付いて飛ぶ。
奥のボックス席ではアッシュが街中で見掛けたドウズの仲間らしき男達が既にアルコールをやりながらテーブルを囲っていた。
「それで……?どうだった??」
眼帯の男がドウズに状況を問う。
「あぁ、手筈通りに頼んで来たぜ。あとは任せておけば大丈夫さ。」
ドウズは端の空いている席に座りながら答える。
「でもやはり、借りは直接ザウス本人に返してやりたかったな。」
義足の男はやや不満気に言う。
「アッシュの話ではザウスは今、どうやらモンスターに拐われて行方不明らしい。取り敢えずは仮に息子で借りを返しておいて、ザウスが見つかればまた本人に直接って事で…………………」
とドウズはグラスの琥珀色の液体を一口、喉を通す。
「しかしな、金はどうするんだ?息子のアレだってかなりの値段だったんだぞ…………」
小太りの丸レンズ黒眼鏡が言う。
「お前はいつもすぐに金の話だ。金なんざ二の次だ。ザウスにはまた別の手段でも構わない。」
褐色で長身の男が割って入る。
(コイツら、元々はザウス狙いだったのね。)
(でも狙うって事は、あのザウスと同等かそれ以上の力が有るって事??)
(または、それが可能な人物か組織と繋がっている。)
リリアは会話から何とか使えそうな情報を探し出そうとするが、アッシュ救出に使えそうな情報は出てこない。
「ところでボスはあの店を利用した事は有るのか?」
義足が問う。
「いや、俺は無いが…………腕の良さはその世界では評判なのはお前も知ってるだろ。『シゴト』はしっかりやってくれる。」
長身の男が答えた。
長身が答えた事によりリリアはこの男が『ボス』だと知る。
「まぁ、焦らず待とうや。いずれ『結果』はここに届く。」
と眼帯。
「まぁ、今は待つ事だな。それよりこの待ち時間でお互い発見した商品や新しい流通ルートの情報交換でもしようや。」
とドウズの提案でその後180分はただの商売人同士の話が続いた………………………………。




