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強盗
星空だけの夜は、やたらと暗い。
一寸先は闇とまではいかないが、5寸ほど先になればもう分からない。
「入るぞ」
野太い声は、この宿屋の店主の声だ。
「何の用だ」
犬が声をかける。
そのあたりは想定内だったらしく、冷静なままの声で答える。
「金だよ、実は、ちょいと計算を間違っていたようでな、犬は特別料金なんだ」
「ほう、いくらだい」
「お前の命だよ!」
腰に下げていた刀がきらめく。
その一閃、俺が寝ていたところに突き刺さった。
そこにいて声をかけていると思ったのだろう。
「この阿呆」
犬が声をかけて、振り向かせると、俺は彼の眉間をたたんだ状態の傘で勢いよくついた。