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宿2
ただ、ここでも人が完全に通らないというわけはなく、1軒だけ営業をしている宿を見つけた。
「やれやれ、これでどうにか夜露はしのげそうだ」
犬が言うが、俺は金勘定を気にしていた。
「なあ、金はあるのか」
「あるとも。気にするでない」
犬が自信ありげに、鼻を鳴らしながら言うが、本当にあるか心配だ。
だが、そんな心配を考える余裕は、宿に一歩足を踏み入れた途端に消えうせた。
「…らっしゃい」
人相書きが出回っていそうな顔つきの男連中が、ごろごろロビーのところにいた。