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社畜のパッチ生活 ―管理者権限で平和を守ります(※ただし自分の)  作者: 真坂野琉実


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48/53

048:社畜、弁解をする

世界が改変できたら普通はどうします?

チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!

ここにいるのは冷静な社畜

今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる


翌日出社すると、会社は普段の平穏を取り戻していた。

派遣の人たちも今日から出社だそうだ。

平穏じゃないのは、藤原補佐がいることぐらいか。

「おはようっ!皆さんっ!私は本社総務課の藤原健(たけし)だっ!開発2課の補佐を任されたからにはっ!全力でその任にあたるっ!みんなっ!よろしく頼む!」

藤原補佐は相変わらずスーツをミシミシ言わせながら、ポーズを取る。

派遣の人達も流石に圧倒されているな。

……そりゃそうだろう。俺達だって最初はドン引きしたんだからな。

約1名あちら側に行ってしまった奴がいるけど……。

何だか体をピクピク動かしている高橋を見ながら俺は両手の拳を握りしめ、再度固く決意する。

『俺はあっち側には絶対にいかない!』

俺の仕草を見て、藤原補佐がとてもいい笑顔を向ける。

「佐藤くん。いい気合だ。今日も筋トレ……いや、仕事を頑張って良い筋肉を作ろうなっ!」

……いや、違う。ポーズを取ってるんじゃないって。誤解ですから。

俺の焦りを無視するように藤原補佐がのしのしと近寄ってきた。

それを阻むように、更に強い気配が俺に襲いかかる。

「佐藤さん!いますかっ!」

振り返ると事務所の入口に頬を上気させ、目が若干細くなった峯本さんが立っていた。

……扉変えといて良かったな。前のドアだったら絶対壊れてたぞ。

そして峯本さんは絶対怒ってる。目が細くなるのは怒りのサインだからな。

「いますけど……何かありましたか?」

俺は努めて平静に返した。

「藤原さん。ちょっと佐藤さんと会議室を借ります」

「うむっ!存分に語り合いたまえっ!会話は心の筋肉を作る良いトレーニングだからなっ!」

……えっと、峯本さん全く話を聞かずにそのまま会議室に行きましたけど……。

……まぁいいか、俺もすぐに向かわないと怒られそうだ。

俺も峯本さんの後を追って会議室に直行した。

◇

会議室に入ると既に峯本さんが席についていた。

俺は正面の席を選び座る。

峯本さんは紅潮した頬のまま何かを抑え込んでいるように見える。

……どう見ても怒りを抑えきれていない様子ですが、俺はなにかやってしまったんですかね?

考えられるとしたら例のレポートだが、事実しか書いていないんだよな。

……さすがに真実は書けなかったけどな。

「確認したいことがあります」

「はい」

「こちらのレポートに書かれていることは佐藤さんが調査したものですか?」

……あ、やっぱりその話なのか。

「はい。調査して確認したものです。動画もアーカイブの中に入れておいたので、確認できたと思いますが」

「この動画はどこから入手したのですか?」

「実機です。この型のカメラはストリームと長期記録用の保存領域を持ってますから。確認したところ、一部のデータが欠損していたので復元ソフトでデータを復元しました。」

……こういう時は冷静に話すに限る。

俺の経験上アツくなったら負け。正直なところ今の状況はアツくなってる峯本さんが不利だ。

こちらが淡々と述べるので、峯本さんも少し冷静になってきたようだ。

紅潮していた頬が少し元に戻っている。

……薄化粧なんだな。この人。

「あ、復元できなかった時間帯もあります。電源が故意に落とされたか、停電だったのか。残念ながらそこは分からなかったです。報告書には書いておきましたけど……」

俺は決定的瞬間は見てないことをアピールする。

「……なるほど。佐藤さんがとても優秀であることは分かりました」

それは皮肉なのか何なのか……。

「……ありがとうございます」

一応定型の返答はしておく。

「本社としては、本レポートを受けまして、何者かの侵入であるという判断をしました」

……おっと、流れが変わってきたぞ。

「では盗難ですか?」

俺が聞くと、峯本さんはポケットから何かを取り出し、机の上に置いた。

「いえ。実は、紛失したと思われていたUSBメモリーが見つかったのです」

「え?どこからですか?」

「……郵便が遅延していたようです。3日前に届きました」

……これは多分、俺が何か知っているかどうかのカマかけだったな?

「郵便遅延ですか。人騒がせですね」

俺の言葉に、峯本さんの目がスッと細くなる。

……おっと地雷を踏んでしまったらしい。

「これで小山課長代理がサーバー室で防犯カメラのケーブルを抜いたことのみがインシデントとなりました」

「はぁ……」

「本社としては、しっかりと研修を受けていただく方針には変わりないですけど」

そう言って微笑む。

……いや、怖いって。それは『逃さないぞテメェ』ってことだろ……。

そして峯本さんはさらに続ける。

「……優秀な佐藤さんを見込んでお願いがあります」

あ、もしかして『逃さないぞリスト』に俺も入ってるのか……。

……というわけで、新章スタートです。

とはいっても章の区切りなんかこのお話には全く関係ないですけどね。

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