044:社畜、解明する
世界が改変できたら普通はどうします?
チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!
ここにいるのは恐怖する社畜
今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる
問題の原点であるUSBメモリーは本当に盗難なのだろうか。
会議室に戻り、椅子に座って考える。
……小山が施錠したのは防犯カメラの映像で確認できた。
だとしたら、誰かが鍵を開けて侵入したと考える方が正しいだろう。
確かめるにはビルの入口の防犯カメラで確認すればいい。
……警察沙汰になっていないから多分見せてはもらえないだろうけど。
そして今判明している紛失物は本社との連絡用USBメモリー1個のみ。
『確かにそうだよね。普通ならUSBメモリー全部とかパソコンとか持っていきそうだもの』
突然机の上にネズミが飛び乗ってきた。
「うわっ。いきなり出てくるなよ。びっくりするじゃないか!」
『そんなこと言うなよ〜。スマホ見るの面倒みたいだからわざわざ申請して来てやったんだぜ』
「いらん……と言いたいとこだが、確かに話し相手がいた方が考えは整理できるな」
『ほら。来たかいがあったでしょ?』
ネズミもどきが胸を張る。
『それで佐藤匠海はどう思うのかなぁ。この事件』
「怪しいんだよな。出来過ぎてる」
『例えば?』
「小山が残業した日に事件が起きてる。……それに眼鏡がサーバー室に置いてあったんだぞ」
『僕なら証拠なんて残さないけどな』
ネズミもどきの言葉で急に思考の回路が一気に繋がった気がした。
「あぁそうか。これはきっと仕組まれた事件なんだ。壮大なドッキリと言ってもいい」
『何のために?』
「……何のため?そりゃあいつを陥れるためだろう」
そうだよな。それなら説明がつく。
これでUSBメモリーのありかが分かれば犯人が誰かの目星はつくんだがな……。
『探してみるといいよ。こういう時のための検索機能じゃないかな』
……なるほど、アパートみたいな狭いところだと使えないけど、広いとこなら使える可能性があるのか。
そう思いついて管理者アプリを立ち上げる。
「なぁ。お前犯人とか全部知ってるよな?」
『何のこと?僕わかんない』
その姿で可愛い子ぶるな。どんなにブリっ子ポーズを取ったところで、どう見てもただのネズ公だ。
Object.USBMemory
気を取り直して検索してみる。
……そういえばここは腐っても開発専門の事務所だった。USBメモリーなんか唸るほどあるよな……。
少し歩き回ってみて気がついた。
こんな当たり前の事に気づかないのは疲れているからかもしれないな。
そもそも検索にヒットするオブジェクトの数が多すぎる。これでは探す気にもならない……。
『おかしいなぁ……いい案だと思ったのに……』
「お前は黙っててくれ……」
……そういえば試していないことがある。
管理者アプリでSDカードの消えたデータは復元できないだろうか……。
「なぁ。消されたデータってアプリで復元できないのか?」
『できるよ。当たり前でしょ』
俺の疑問にネズミもどきは胸を張って答えた。
それならやってみるしかない。
おそらくだが鍵を開けて分電盤でカメラの電源を落とし、ケーブルに細工したあとカメラの映像を消したやつがいるはずだ。
管理者アプリで防犯カメラのストレージにアクセス。
該当する日時を確認すると削除フラグの付いた動画が見つかった。
削除フラグを消せば良いのか……ありゃ?消えないぞ?
「なぁ。削除フラグが消えないんだが」
『あぁそれは消えないよ。見たいならストリームの方を遡るしか。そっちならできると思うよ』
……相変わらずやりたいことに制限がかかるクソアプリだな……。
俺はStream側に切り替える。
……大体こういうのってそれなりにしか遡れないんじゃないの?まぁいいや、試してみよう。
……なんだこれ。一番端まで戻したら療養中の課長とか映ってるんですけど。怖っ。
『そのデータの取得元、外のサーバーだからね。全記録あるよ』
ネズミもどきは何故か誇らしげだ。
……間違いなくお前の手柄じゃないけどな。
バーが長すぎて目的の時間に合わせるのがとても大変だったが、目当ての時間の映像を確認することはできた。
……正直見なければ良かった。
感想として言えるのは、本社怖っ!近寄らんとこ。である。
そしてこの事実は『解析できました〜。』と書類に書ける内容ではない。
心折れたからもう帰ろうかな……。
そう思いつつ目の合ったネズミもどきに思わず恨み言を言う。
「お前、全部知ってたな?」
『何のこと?僕知らないよ』
ネズミもどきはあさっての方を向き口笛を吹く真似をした。
「吹けてないし。わざとらしいし」
俺が突っ込むとネズミはチュウと一声鳴いてどこかへと走り去った。
……逃げやがった。
やっぱりアイツは信用してはいけない……。
インシデント編はこれで一区切りです。
少し閑話をはさみます。
章立てとか合わない作品なので、まぁそんなもんかなと思っていただければ。
今後もその場のノリと勢いだけで邁進します。




