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社畜のパッチ生活 ―管理者権限で平和を守ります(※ただし自分の)  作者: 真坂野琉実


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40/53

040:社畜、押し切られる

世界が改変できたら普通はどうします?

チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!

ここにいるのは妥協する社畜

今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる


……いつの間にか気絶していたらしく、気がついたら朝だった。

微妙に筋肉痛だ。夜の大掃除は地味に効いたらしい……。

これを悟られないようにしないと、筋肉が寄ってくるな……気をつけよう。

少しギシギシいう身体をだましだまし動かし、会社に向かう。

ここのところ早い時間に帰っているので、多少は体調がいい気がする……これが一般人の景色なのかもしれんな。

◇

会社に着き、新しくなったドアをIDカードで開ける。

ピーッという音と緑色のランプに変化したLEDで鍵が開いたことがわかる一般的なやつだ。

……これは解錠したカードをサーバーに送るタイプだったはず。退勤時間の書き換え防止が確定するやつだ。

これで時間外の書き換えが不可能になった。何が鍵の重みこそが責任感だ。滅びてしまえ。

そんなことを考えながらドアを開ける。

「おはようっ!佐藤くんっ!今日もいい筋トレができそうな素晴らしい朝だなっ!」

俺を出迎えたのは、にこやかに白い歯を煌めかせながらスーツをミシミシいわせている藤原補佐だった。

「おはようございます。佐藤さん」

何故か横には峯本さんがいた。

……この人は社長室付きの秘書だったはずだが、暇なんだろうか……よく来るよな……。

「おはようございます。藤原さん。峯本さん」

俺は二人に当たり障りなく挨拶しておく。

……この二人に深入りすると絶対にロクなことにならない……。

俺はそっと自席に座った。

「佐藤さん。折り入って依頼したいことがありまして……」

俺はステルスのスキルを使って隠れたつもりだったのだが……発見されてしまったようだ……。

横を見ると峯本さんが頭を下げる脇に箱っぽい何かを肩に担いだマッチョ………藤原補佐が立っていた。

「折り入って……とは?」

「峯本さんは佐藤くんに是非ともとのことだ。私はキミならできると判断したっ!」

……いちいち暑苦しいな。

「このビルのものと同型の防犯カメラ一式を用意しました。是非とも佐藤さんの知識で動画が消えた経緯を調べてほしいのです」

「……はぁ、解析……ですか」

「難しいのは承知しています。ですが社長室としては本件を依頼できるのが、社内では佐藤さんしかいないと判断しました」

……しまったな。この間防犯カメラについて思わず語ってしまったのが裏目に出た形だ。

「……期限は……いつまでですか?」

俺は絞り出すように言った。

「非常に難しいものであることは承知しています。しかし、急を要するのです。今週中で目処を付けていただきたいです」

「今週中!さすがにそれは……」

俺の言葉を遮るように藤原補佐が言った。

「大丈夫だっ!佐藤くんならできるっ!たった今から全てのキミのパワーを全て注ぎたまえっ!必ずできるっ!」

藤原補佐はミシミシとポーズを変えながらだんだんにじり寄ってくる。

さすがにこれ以上拒否すると、藤原補佐から『できると言わないからできないんだ。さぁ一緒に言おうじゃないか』という昨日高橋が食らった筋肉ハラスメント攻撃を喰らってしまう。……あれは絶対に避けたい。

「分かりました。努力はしてみます。解析可能かは約束できないということだけを先に言っておきます」

……正直言わされた感があるが仕方ない。仕事が増えること以上に避けなくてはいけないことはある。

「ありがとうございます。佐藤さん、期待しています」

美人秘書の微笑みと筋肉補佐のいい笑顔を貰ったので良しとする。

……今日から徹夜確定だな……。


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