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社畜のパッチ生活 ―管理者権限で平和を守ります(※ただし自分の)  作者: 真坂野琉実


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15/53

015:社畜、後輩に奢る

世界が改変できたら普通はどうします?

チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!

ここにいるのは策士になりたい社畜

今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる


いつもはチャットで声かけて注文とか取ったりするんだが、今日は趣向を変えて直接声をかけてみる。

「そろそろ腹減らないか?」

キーボードを打つ音が止まった。

「俺は大丈夫です。もうそろそろ終わるんで。」

横井がつれないことを言う。

「俺はたまには食べに行こうかな〜と思ってたとこっす。」

高橋が手を挙げて立ち上がった。

……お前だけだよ。俺の味方。

毎回買い出しっていうのも味気ないし、たまには後輩誘って飯食いに行くかな。

「たまには食べに行くか。」

「いいんですか?佐藤さん、小山さんから監査の責任者にされてるんじゃないっすか?」

「よく知ってるな。なんかあいつが本社に俺が担当者だって言ったらしいからな。」

「うわ……あ、そうか山南さんいないからか。」

何か知っていそうな高橋も俺の言いたいことを理解したらしい。

「多分そういうことだろ。でももう大体の工数は見えたよ。」

「さすがっすね〜。佐藤さん。」

「今日は早く帰ろうと思ってたんだけどな。まぁ仕方ない。」

俺は席から立ち上がった。

「じゃあ飯食いに行こう。横井は帰るなら施錠よろしくな。」

「分かりました。」

俺達は横井に軽く手を振ると外に向かって歩き出した。

◇

……高橋におごりだからと色々提案させて、結局結論はファミレスだった。

土曜日の夜の繁華街で酒を飲まなくても食事ができて話ができるとこって言ったら確かにファミレスくらいしかないかもしれない。

少しランクが上のとこだから許せ。俺はあんまり旨いところは知らん。

「いや〜こんな高いとこいいんすか?」

あれ?ファミレスでもいいのか、確かにこの店グレードは上の方だけどな。

「構わない。たまにだしな。」

席に案内された高橋は心底嬉しそうに言った。

「肉食いたいっす。肉フェスらしいっすよ。」

「好きなの頼め。ドリンクバーもつけようぜ。」

俺はメニューをめくる。

久しぶり過ぎてメニューが良く分からん。

俺が紙のメニューをめくっていると端末を操作している高橋に笑われた。

「紙のメニュー見る人久しぶりに見たっす。」

「俺はこれ系のを見るとUIの粗探ししちゃうからダメなんだよな。」

「職業病ですね。」

「病気だけど薬とかないんだよな。」

2人で声を揃えて笑った。

……結局高橋はステーキ、俺はハンバーグにした。

料理が届くまでの間に例の話を切り出してみる。

「高橋は監査の責任者に俺がされるってなんで知ってたんだ?」

高橋は待ってましたとばかりに話し出す。

「おととい小山さんに勉強だって言われて本社主導の会議に出たんすよ。ISO監査の説明会議。」

何で俺を担当にするっていいながら高橋をそういう会議に出すかね。あいつは。

だが、これはチャンスかもしれない。

高橋になら何か弱みを見せている可能性がある。

「何か面白いこと言ってたか?」

「山南さん倒れたのを本社の人が知ってたみたいで、まずその話をしてたっす。特定の個人に負荷かけ過ぎなんじゃないかって。」

本社は知ってるのかよ、この職場のブラックぶりは。

「んでなんて答えてた?」

「小山さんは『うちは私がきちんとタスク管理を行っているので大丈夫です。今回の監査も副担当の佐藤が万全の準備を整えております。』とか言ってたっすよ。」

何だそりゃ。タスク振り分けなんて工数も何も考えないで数だけ均等に丸投げしてるだけじゃないか……。

むしろ俺とか山南に面倒なの全部振るあたりが陰湿だわ。

「ISOの副担当とか今知ったけどな。俺。」

「小山さん得意そうに色々語ってたっすよ。『前回の要改善は私が指示して完璧に直してあります。』とか。」

「『私がタスク管理をしていたから業務効率が上がって売り上げが上がった』とかね。」

なるほど。何となく手がかりが見えてきた。

要改善は今年の書類全部直しとけばいいはずだ。

ISOは何をどうやってるかの知識だけだからあとはなんとかなる……と思う。

気になるのは本社の連中だな。

ISO監査はまぁ分かるが、本社からヘルプが来るなんか聞いたことないしな。……何か探りに来てるのかもしれない。

あいつは分かってなさそうだが。

ん?待てよ。山南のタスクを洗い直したら何やってたかは分かるよな?

切り札に使えるかもしれない。

「なるほど。全く優秀な上司だな。」

俺は内心にやりとした。

ちょうど2人の料理が運ばれてきたのでこの話はそこで終わりになった。

運んできたのが可愛いアルバイト店員だったから高橋の興味がそっちに行ったからだ。

料理を食べながら高橋はその話をずっとしてた。

俺はその話を聞いてるふりして監査の席でどうやって立ち回るかをずっと考えてた。

料理が旨かったかどうかは覚えてない。

高橋が満足そうだったから良しとしよう。

……方向性も決まったしな。

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