001:社畜、小銭を回避する(プロローグ)
世界が改変できたら普通はどうします?
チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!
ここにいるのはそんなことに興味を持たない小心者――
今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる
俺はいわゆるIT土方というやつだ。
今日も朝からクライアントの無茶な仕様変更を喰らっている。
それが必要なら最初から言っておけばいいものを…なんで納期一週間前に言うかね。
理不尽すぎる話だが、金を貰う以上クライアントには逆らえない。そもそも受けたのは俺でもない。
上司の命令にしたがって仕様書のないクソみたいなルーチンを組むだけだ。
人はイライラすると腹が減る。
時計を見ると……11時半か……混むのも嫌だから飯食いに行くとしよう。
「今キリがいいので飯行ってきます。」
上司にチャットメッセージを送ってから俺は席を立った。
こういう自由は許されてるからこの会社はブラックではない…と思う。前いたとこなんてトイレの時間まで記録されて給料から引かれてたからな。あれはヤバかった。
◇
「いらっしゃいませ、空いてる席にどうぞ」
俺は会釈して適当な席に座る。
さてと、いつものでいいよな。
「すみません、牛丼の並で」
「牛丼の並ですね。はい。並盛一丁!」
いつもの牛丼を頼んでから気づいた。
いつの間にか720円に値上がりしてる。これじゃ小銭が増えてめんどくさいじゃないか……。
俺はスマホを取り出して管理者アプリを立ち上げた。
価格を700円にするか?いや、他の客の手前俺だけ700円はまずい。
何ならレジの価格設定変えてしまおうか……しかしそれではこの店の売上が下がってしまう。
それにそんなことしたらすぐにバレるだろう……どうしたものか……。
その時名案がひらめいた。これこそ神の啓示だ。
この店のアプリに20円サービス券を作ってしまおう。これなら目立たないし、他の客は俺のことなんか見てないだろうしな。
管理者アプリでこの店のアプリに20円引き券を追加するようにパッチ当てをする。
周囲の人間からすればスマホいじってるようにしか見えないところがこのアプリの良いところだ。
ほどなくアプリの中に20円引きのサービス券が追加された。
これで財布の小銭が増えなくて済む。一安心だ。
「はい、並盛です」
タイミングよく牛丼も届いた。
危なかった。値上げに気が付かなかったら小銭が増えて面倒なことになるところだったぜ。
次からはここに来ないようにしよう。小銭が財布の中に増えることほど面倒なことはない。
電子決済なんてそんな危険なことはしたくないしな、システム作ってる側からすればあれほど危ないものはない。
さて、そんなことはどうでもいい。
さっさと食って仕事に戻ろう。今日もきっと終電だ。
思いつきで作り始めた話です。
続くといいな




