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プロローグ

新しい話が書きたくなったので始めました!

自分のペースで進めたいと思っているので投稿頻度は高くないですが、それでも良ければ楽しんでください!!!

感想などもお待ちしています!!

「くわぁ…」


 俺はこみ上げる眠気に抗えず、欠伸をかみ殺した。


 ()()()()()()()()()眠いとはこれ如何に。


 欠伸と共に出た涙で滲んだ視界に、あきれ顔でこちらを見る少年の姿があった。


「ノエル、眠いのか?」


 逆立った赤い髪が特徴的な活発そうな少年の名はカイル。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 現在俺は、カイルと剣の稽古をしている途中だった。

 最近村の周辺で魔物が増えており、領主直轄の兵士が数人駐在しているものの、備えが十分とはとてもではないが言い難い。

 そこでカイルから、「俺たちも訓練しよう!」と提案されたのが三日前のことだ。

 俺たちがチャンバラごっこのような訓練をしたところで何かの役に立つとも思えないが、やって損になることもあるまい。

 今日の分の畑仕事は既に終わっているし、余った時間で何をしようが自由である。


 ぼんやりとした思考でそんなことを考えていると、だんだん意識が朦朧とし始めた。

 心の中で、「またな」と呟きつつ俺の意識は暗転した。


 ☆☆☆


「んん…」


 再度意識が浮上し、目を開くと、そこは見慣れた自室の天井だった。

 枕元の時計に目を向けると午前六時半を表示している。

 七時に設定した目覚まし機能は、まだその役割を果たしていないらしい。

 すっかり目が覚め、二度寝する気にもなれなかった俺は、顔でも洗おうかとベッドから降りる。


 洗面台の鏡には、たっぷり八時間は寝たはずなのにまだまだ寝足りなさそうな少年の顔が映っていた。

 由比藤新人(ゆいとうあらと)、十七歳。

 特徴は、誕生日がクリスマスであることと、世界一可愛い妹がいること。

 それ以外はいたって平凡であると、自他ともに認める普通の高校生だ。


「冷蔵庫に何かあったっけか」


 重い足を引きずりつつキッチンの冷蔵庫を開くと、賞味期限間近の卵がひとつ目に入ったので、目玉焼きでも作るかとフライパンを熱し始めた。

 今住んでいる1LDKのマンションには、他に人の気配がない。

 両親は既に他界し、十歳年上の従姉妹の家に住まわせてもらっているのだが、従姉妹はもう仕事に行ってしまったらしい。

 最近常に忙しいと愚痴を聞いているので、特に驚きはなかった。

 そんなことを考えているうちに、目玉焼きが出来上がったので、並行してトースターで焼いた食パンと一緒にもそもそと口に詰め込む。


 朝食を一人で食べるようになり、寂しさを感じなくなったのは最近になってからだ。

 両親と妹が乗った車が事故を起こし、両親が亡くなり、妹が意識不明、いわゆる植物状態になったのはもう一年も前のことだ。

 当時は悲しみに暮れ、一時的に不登校にもなったりしたものだが、従姉妹をはじめとした周囲の支えもあり、なんとか日々暮らすことができている。


 そうこうしているうちに家を出なければならない時間が近づいてきたので、俺は制服に着替える。

 従姉妹の家が前暮らしていた家の近くだったため、転校などする必要がなかったのはとても有難いことだ。


「行ってきます」


 無人の家に別れを告げ、エスカレーターを経由してマンションの外へ出る。

 学校は徒歩三十分ほどの距離にあり、歩きで行ける距離ではあるものの少し遠いため、自転車で通学することも検討したが、自分自身バイトもしていないためお金の出どころが必然的に従姉妹となり、既にかなりの迷惑をかけている身でこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないため、相談すらしていない。


「まあ、これもいい運動だな」


 特に部活動などもしていないため、貴重な運動の機会となっているのは間違いない。

 それに、歩くのは嫌いじゃないため、三十分の登校時間は苦ではなかった。


 道中信号の巡り合わせが悪く、いつもより数分時間がかかったが、余裕をもって出発したため遅刻の心配はない。

『瑠璃が丘高等学校』と書かれた、所々に引っかき傷がある看板を横目に門を通り抜け、校舎に入る。

 三階建てとなっており、二年の教室は二階で、三階が三年、一階が一年となっていた。

 学年が上がるごとに階段を上がる必要があるため、生徒の間では不満の声が上がっているが、窓から見える景色が好きな俺は、むしろ少し有難く思っている。


 教室までたどり着き、ガラガラと音をたてながら入ると、談笑に興じていた八割くらいの生徒の目がちらりとこちらに向けられ、一部の例外を除いてほとんどが談笑に戻る。

 そして、例外のうちの一人が俺に向かって手を上げた。


「よ、今日は遅かったな」

「信号に引っかかってな。運が悪かったよ」

「なるほどな」


 高校生の癖に堂々とピアスを開け、黄色のメッシュを入れている少年の名は、瀬戸大河(せとたいが)

 ぱっと見の印象は不良そのものだが、根はやさしく俺の良き友人である。

 俺が今住んでいる従姉妹の家の近所に住んでおり、俺が一時不登校になっていた時、学校で配られたプリントを欠席者の家に届ける係、通称《プリント係》に任じられたタイガが家まで来て、話すようになった。

 聞き上手というかなんというか、人との距離感の取り方がうまく、誰とも話したくなかった俺が前向きになれたのは間違いなくタイガのおかげだった。


「おはよう、アラト」


 背後から聞こえた声に、俺は振り向く。

 そこには、明るい栗色の髪を結んだポニーテールが特徴的な活発そうな美少女が立っていた。


「ああ、おはようユキナ」


 春日井雪奈(かすがいゆきな)という名について、「春なのに雪ってどうなの?」とよくボヤいている少女は、俺の挨拶を聞いて満足そうに頷いた。

 俺が前向きになれたのはタイガのおかげと言ったが、それはユキナも同じだ。

 ユキナとは幼馴染で元々家族ぐるみの付き合いがあり、俺の両親とも仲が良かった。

 それ故に、両親、そして妹の不幸を知ったユキナは俺と同じくらい悲しみ、寄り添ってくれた。

 ユキナがいなければ、俺はこの悲しみを一人で抱えきれなかったと思う。

 タイガ、そしてユキナは友人であり、恩人でもあるのだ。


「今日は遅かったのね。また学校に来なくなったんじゃないかと思ったわ」

「お、おいおい…」


 聞きようによっては無神経とも思えるユキナの冗談にタイガは目を丸くしたが、俺が塞ぎこんでいた時どれほどユキナが心を砕いてくれたかを知っているので、全く気にならなかった。

 心配そうにこちらを見るタイガに、俺は苦笑を返した。


「心配かけてごめんな」

「べ、別に問題ないならいいのよ」


 面と向かって言われたのが恥ずかしかったのか、ユキナは目を背けながら答えると、続けてあっと声を上げた。

 ユキナの視線の先を追うと、時計が八時半を指そうとしていた。


「もうすぐ朝のホームルームが始まりそうね。じゃあまたあとで」


 ユキナはそう言い残し、彼女の席へと向かう。

 俺もタイガにじゃあと言い、自分の席に向かった。


 席に座って間もなく、教室の扉が開いた。


 ☆☆☆


 午前中の授業を何事もなく(途中タイガが居眠りで、頭を教科書の角で叩かれる出来事があったが、いつも通りのことだ)消費した俺たちは、昼食を取るために食堂に移動していた。


「ふわぁぁ」


 今朝から続く眠気に欠伸が漏れる。


「なんだか随分眠そうだな」


 食堂で一番人気の生姜焼き定食を注文したタイガが、生姜焼きを箸で突きつつ、隣に座る俺に視線を向ける。

 向かいのユキナも視線をこちらに向けた。

 少しだけ細められたその視線は、夜更かしでもしたのかと雄弁に語っている。


「うーん」


 俺は逡巡の後、この二人なら大丈夫だろうと思い口を開いた。


「実はさ、最近夢を見るんだよね。めっちゃ現実みたい(リアル)なやつ」

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