第八章
68日目
今日も清々しい朝に、全てのものに感謝の祈りを捧げる。
「ヒョウ、今朝は肉でいいよな?」
「くぅぅん」
「え、そんな感じ?」「無くなるまで魚続きでいいの?」
「くぅんっ」
「えぇ、そっか。それなら。」
大皿の上に魚を載せると、ぴちぴち跳ねる魚を嬉しそうに押さえて食べ始める。
俺は自分の朝食は折角祠にいるので、魔粒子に魔力を載せて焚き火跡前に操影を生成して、黒穴出も生成し肉を取り出し、火種を取り出し、薪を集め、肉を切り分け、串に刺して火にくべる。
をどこまで自分の魔力で、どうしても足りない所を祠の魔力を借りてと。
遠隔操作の練習で準備する。
準備は行いながらヒョウに言う。
「ヒョウ、今日で黒蛇を倒して7日になる。今日の午後ダンジョンに行こうと思う。」
「くぅうぅぅん」
「どういうことだ?」
「師匠の言う4半月が一週間を意味すれば今日だし、一月30日の4半月なら明日の可能性もあるけど、今日行っていなければ明日行くだけだが。」
「くぅうぅぅん」
「俺が心配?一度倒してるんだ。成長もしてるし遅れは取らないよ。」
「くぅぅぅぅ。」
珍しくかみ合わないなと思いながら、もう3度目で、また初日みたいな事には絶対ならない自信がある。
「まあ、倒してくるよ。」
早く師匠に稽古を付けて貰いたいからな。と心の中で付け加えた。
(大黒蛇に初対峙前のやりとりとそっくりだけど、決してフリではない。断じて)
午前中は軽く型稽古で体を解しつつ、昨晩の毒を感じる程も無いけれども 完全に抜け切る様に、祠の中で瞑想し精神統一に努める。
昼食後、少し落ち着いてから
「じゃあヒョウ、行ってくるな。」
「くぅうん」
「なぁに、心配すんなって。」
「くぅうん」
簡単なやりとりだけしてダンジョンに向かう。
途中師匠が現れる草原に着いても何も起きなかった。
そしてそのまま進みダンジョン近くになると、
「おおぉ、こりゃあいるなぁ。」
ダンジョン入り口から奴の妖気が外まで駄々洩れだ。
慣れた足取りで大黒蛇のいる大広間まで、長い階段を降りていく。
部屋に着くと、
「シシシシシシッ」
「おーおぉー。」
初日みたいに油断してやがったら、一気に仕留めてやったのにな。
「初めましてじゃなくて、3度目ましてか?」
俺の良く知るダンジョンの、リスポーンってやつか?しかし、今はそれはいい。
俺も成長したが、奴まで成長してる。なんてあるのか。
しかし、俺の考えの中では、成長出来るとしても思考のものであって、身体能力が成長出来ることはあり得ないのでは。
それは復活の度に成長することも、あり得なくはないと思うと同時に、相手に倒され、何かの力によって復活できたとしても、何の努力もなく身体能力まで上がるような理不尽な世界では、決してないとも思っているからだ。
「やりあって確認するしかないなっ。」
そう思って間合いを詰めようとすると、先に動いたのは大黒蛇だ。
「シャァアアアアアアッ」
と、頭を天井近くまで持ちあげ、上空から広範囲の毒息を放つ。
「ちっ」
と、俺は舌打ちすると共に、
「黒穴引っ」
目の前に毒息を吸い込むブラックホールを形成するも、既に広範囲に撒かれた毒は全て取り込めそうには無い。
俺は魔法を放つと共に毒の範囲から離れようと、黒蛇の左側に廻り込もうと動く。
それを待ってましたとばかりに、上空から頭を俺目掛けて振り下ろしながら、尻尾を俺の背後から襲わせる。
「ちっ」
更に舌打ち、これが狙いだったか。
俺は先程生成した黒穴引を消すと同時に、襲い掛かってくる黒蛇の頭の方向に再度ブラックホール付きの影の盾を生成させる。
「黒穴引っ」
続けて後ろから襲い掛かる尾に向けて、
「影盾っ」
ここで防ぎきれば攻撃に移れる。そう思った矢先、
頭の方は黒穴引に対し、これ以上の攻撃は無駄だと思ったのか、次に向けて待機しているようだが、尾の方はいつの間にか黒石槍を左右に2本ずつ生成していて、俺の背後から3方向同時攻撃になっていた。
「ま、まずいっ」
俺は唯一黒蛇の攻撃が襲ってこない方向、それは先程の毒息が撒かれ、吸引しきれていない所だ。
「うっ」
俺は軽く毒息を吸い込んでしまう。
「シャァァァァァッ」
俺の向かった先に、更に上空から毒息の上乗せ。
「黒穴引っ」
間一髪、奴の顔面の前に全てを吸引する影の盾の生成が間に合う。
そしてそのまま後ろに下がって間合いを取る。
俺は今日まで何度もこいつの毒息の耐性を作る為に訓練してきた。その耐性が無ければここで詰んでいた。
「ぜぇぜぇっ」
呼吸が苦しい。が、何とか我慢はできる。
かなり押されている。
が、俺にはまだ勝機がある。
それは、対俺戦に考えられた攻撃の一連ではあったが、攻撃力そのものは変わらなかったからだ。
攻撃のスピードにも対処できるし、攻撃力も抑えられる。毒の範囲が広げられて一瞬たじろいだが、こちらも耐性を作っている。
ここからは俺のターンだ。
「今度はこっちから行かせてもらうぜっ!」
そこからは先程までの危なっかしさは殆どなく、スピードに勝る俺が終始主導権を握りながら、尾の攻撃や黒石槍には影盾が、毒息には黒穴引が、睨みに関しては正面で且つ近距離でないと発動しないようで、闇影や影移動で回避した。
最後は黒蛇の喉を木刀で下から突き刺し、長い体がビクンッビクンッと波打つように蠢いたが、やがてその動きも遅くなり、最後は尾の先端がぱたっと地面に横たわると、それきり動くことは無かった。
俺は、大黒蛇の血抜きを行い、収納する。
すると、また大黒蛇の居た所に、薄青く光る黒い鉱石があった。
それを回収し、大広間を去ろうとした時に、ふとあることに気付く。
「ここ、祠の中と似てるな。」
そう、ヒョウの祠と広さも静けさも全く違うが、魔力に満ちている点だけは似ている。
その魔力量も段違いに薄いけれども。
「この位あれば、あれが出来るのでは?」
そうして俺はあることを試してみる。
「空間収納!」
そう、初めてヒョウに案内され、実現した空間収納が、ここでも新たに再現できた。
「おぉっ、出来た。」
俺自身の魔力量が増えたからなのか、ここ位の魔力が篭っていれば出来るのか、その両方か。
とにかく今は実現できたという事実だけあれば良い。
俺は生成した空間収納を消し、鉱石を持って師匠の所に向かうのだった。
いつもの草原に着き、影が現れ、影が師匠に変わると、
「なんだ。一度倒した相手にまだ苦労したのか。」
「まあ良い、まだ必要だからな。それを預かっておく。」
俺は手に持っている鉱石を渡す。
「今度はちゃんと倒してこい。」
とだけ言い、テネブラエはこちらの言葉を聞こうともせず消えていくのだった。
余りにも一瞬の出来事に、一言も発することなく俺はただ呆然として、何もない空間を見つめているのだった。
「あ、え?」
「師匠との稽古は・・・」
「今度はちゃんと?」「ちゃんと?」「ちゃんとって?」
俺は倒せてなかったというのか?いや、ドロップ品があるということは倒してる。
でも鉱石を見て言ったよな?何があるというのだ?
いくら考えても何も答えがないまま、祠に向かって歩くのだったが、それは祠に着いても何も変わらなかった。
「くぅぅん」
「あ、ヒョウ、た、ただいま。」
「くぅぅん」
「あぁ、ごめんごめん。ちょっと考え事。」
「なあヒョウ、ちゃんと倒すってどういう事か分かるか?」
「くぅぅん」
「だよな。ごめんごめん。ちゃんと自分で考えるよ。」
俺は夕食を準備しつつ、頭の中では師匠の言葉を何度も思い返す。
ちゃんと倒す、の前に、一度倒した相手にまだ苦労したのか、と。
これらの言葉を合わせると、
(大黒蛇を苦労せずにちゃんと倒せ)ということか
そして、そうすることで、(黒鉱石以外の物がドロップする)と。
これで合っているだろう。
だろうが、また1週間かぁあああ!
俺はその場で項垂れる。
しかし、またここで後悔しても始まらない。
常に前を向かねば。
加護の期限は迫ってくるばかりだ。
この2週間をも取り返す位の勢いで成長させるしかない。
その後の1週間はとにかく大黒蛇を圧倒できるだけの訓練を重ねた。
影移動戦闘の速さ正確さ、影盾の生成スピードと硬さ、黒穴引の生成スピードと連続生成、黒粒界の薄さ硬さ、索敵の反応速度と正確さ、影槍の速さ硬さ鋭さ、毒息の耐性力、持久力に忍耐力と。
全てを1週間前とは比べ物にならない程に高めた。
何で比較すると分かり易いだろう?例えば今の訓練で使用している重力操作は5倍だ。
索敵の闇魔粒子を伝って、離れた場所での魔法の生成が1秒を切る。
それが10m先までだ。今では10m先に突然影槍を発現させて切り裂くことも、10m先に黒穴引を発生させて吸い込むことも可能だ。
また、海にも行った。
また魚を大量に、今度は生きたまま収納している。
更に実験と食料確保の実益を兼ねて、茶兎と黒狸と猪とワイルドボアを生け捕りにして収納した。
採取の帰りにスイカも見てきた。
まだまだ大きくなっている最中だ。
周りに木の柵は作ったが、可能なら魔法障壁を覚えて張りたい。
今の所どうやって作るかは全く持って見当が無いが。
恐らく今の俺なら、大部屋が真っ暗でも、目を瞑ってても大黒蛇は倒せるであろう。
75日目の朝を迎える。
今日も清々しい一日を迎えられる。
全てのものに感謝の祈りを捧げる。
午後にダンジョンに向かうとし、午前は軽い訓練のみにする。
お昼の休憩にする前に、木刀の補充をする。
あれから3本を折り、今使っているぼろぼろのを除くとスペアが1本だけとなった。
前回と同じように3本を新しく作り、菜種油で仕上げをする。
午後軽い昼食を摂ったあと、ダンジョンに向かう。
「んじゃあヒョウ、行ってくるな。」
「くぅんっ」
おっ?黒蛇のダンジョンに向かうのに初めての反応。
そう思いながらダンジョン近くまで着くと、おるおる。奴の気配。
俺は勢いよくダンジョンの階段を降りていき、一気に大広間へ掛け入る。
「よーしっいっちょやるかぁ。」
「シャァァァァァーーーッ」
俺が大広間に入ると、俺の気配を感じた黒蛇は、先に奇襲を掛けようと、入り口付近まで移動し、鎌首を高く上げ、部屋に入ってきた俺の頭上から広範囲の毒息を掛けてきた。
「お見通しっ!」
俺は奴の顔の直前に黒穴引を生成し、その出口として俺の後ろ10m位の階段付近に黒穴出を同時生成し、全ての毒息が俺の付近からは完全に無くなる。
毒息耐性実験をするにはもう十分集まっており、毒息を処理するにはこの空間だとこの方が魔力消費が少ないのだ。
その後奴の尻尾から左右に5本ずつの黒石槍が、奴の体を避けてカーブするように俺に目掛けてくる。
「影盾×10」
俺は全ての黒石槍を発生直後の空間で、影の盾によって防ぎ、重力反転によって羽の様に軽くなった俺は、その槍盾の攻防の上を飛び越える。
そうして黒蛇の背後に回ったかと思えば、空間に生成させておいた影盾を蹴って反転する。
慌てて後ろを向く黒蛇を奔走するように、影盾を左右の空間に生成しながら、影盾を蹴りながら黒蛇の鎌首に向かって、右よ左よと跳ねながら近づき、一気に黒蛇の左目から木刀を突き入れた。
「これなら師匠も文句は言わないだろ。」
「ドサドサッ」
すると10m近くの高さから一気に蛇の巨体が地面に叩き落される。
また、血抜きをして収納させると、今度は、大黒蛇が居た空間に、薄青く光る直径1m強の球体が現れた。
「な、なんだこれは!?」
良く目を凝らすと、その球体の中には1本の日本刀?の様なものが浮いている。
「こ、これが今回のドロップ品?」
何とも神々しいその光景に、俺は両手でその刀を支える様に抱えると、その球体は急に中心に向かって輝きながら小さくなっていき、最後は一点の光になってぱぁっと消えた。
その消える瞬間の眩しい光に、視界が一瞬真っ暗になり、先程の光景が夢であったのかと、何度か瞼を瞬くと、自分の両手の上に、しっかりと、真っ黒な刀が乗っていた。
「おぉぉぉぉぉぉっ。」
「こ、これは、本物の、、、か、刀だぁっっ!!」
決して長過ぎることはないその刀が、俺の両手の上でどっしりとした重量感に、前世でも一度も持ったことのない”本物”であることがはっきりと分かる。
俺は刀の柄の部分を右手で、鞘の部分を左手で持ち、ゆっくりと抜いてみる。
「おぉっ!」
この薄暗い部屋の中でも分かる、真っ黒に黒光りする刀身。
「おおおおぉっ。」
俺は以前何かで、日本刀は素人が抜くと鞘に納めるのにも指を切り落としかねないと聞いたことがある。
それで、刀身の根元だけ眺めた後、そのまま鞘に納める。
俺は木刀を腰に挿し、左手に刀を持って階段に向かう。
階段に近づいた際に、先程毒息を流した辺りに、今度は黒穴引を生成し、自分の後ろ10mに黒穴出を生成し、念のために溜まっている毒息を移動させながら向かう。
階段を上りいつもの草原に差し掛かると、師匠は現れた。
「やっと黒虎徹を手に入れたか。」
「それに慣れたらまた来るが良い。」
そう言って消えるのであった。
「黒虎徹って言うんだ。」
「虎徹って、前世の刀匠の名でもあったな。関係あるのかな。」
まあ、あってもなくても関係は無い。
早く慣れて稽古を付けて貰わねば。
俺は足早に祠に向かった。
「ヒョウ!黒虎徹を手にいれたぞっ!」
「くぅんっ!」
「カッコいいだろ??」
「くぅんっ」
早速俺はヒョウの前で刀を鞘から抜ききって、その刀身を眺める。
「カッコいいなぁ。」「なんて輝きなんだぁ。」
惚れ惚れするように刀身を眺めた後、鞘をそっと下に置き、両手で構えてみる。
「少し短いな。」
感覚でだが、木刀の大刀よりは短く、中刀よりは長いといった所か。
「ま、重い分、この位の方が扱いやすいってもんだ。」
人は自分が選んだ物、自分の物は肯定的になり易いらしい。
一通り眺め、試し持ちしたら、置いた鞘を取り、その鞘の根元の方を持つように持ち替え、ゆっくりと時代劇に見たような納刀を真似してみる。
鞘の根元を持った左手の人差し指を立てて、その指の腹に刀の棟を這わせる。
そこで切先まで来たところでくるっと向きを変え、鞘の穴の中に切先を挿し、そのままゆっくりと刃先を鞘に当てないように納めていく。
「ふぅーーっ。」
たった一度の納刀でここまで緊張するのか。
でも真剣を扱うというのはこの位緊張感を持つべきだとも思える。
俺は祠の中で、ヒョウに自慢して見せびらかす様に、何度も何度も刀を抜き差しして、その一連の流れが自然になれるように繰り返す。
一通り抜刀から納刀までスムーズに出来る様になり、表に出ていつもの型稽古を黒虎徹で行う。
最初は間違って自身を切りはしないかと、慎重に動きを確認しながら行っていたが、適度な緊張感を持って真剣に真剣で型稽古をすると、これがぱしっと上手く噛み合うようになった感覚が起こる。
「あぁ、そうか。」
この型稽古も全て、この様な真剣を使うのが本当なのだ。
これが本当の型稽古なのだ。
この適度な緊張感が型の動きの余分な動作を無くし、メリハリ、静と動とをはっきりさせる事で力の入れ処がはっきりとし、動きが更に実践に近くなる。
「おぉ、おぉ、こうか?」
楽しくなってくる。
夢中になって稽古をしていると、知らない間に暗くなっている。
「おぉっ、もうこんな時間!?」
慌てて刀を片付け、水浴び、乾燥、火熾し、等々、夕食の準備をして、ヒョウと食事を摂ったら魔法の訓練で寝落ちする。
76日目。
祈りを捧げ、朝食の前の朝稽古に、重力操作5倍で、黒虎徹を持って型稽古720通り×2、朝食後は新・影移動(自称)の訓練。
大黒蛇で使った、自身の重力をゼロにし、影盾を蹴って移動。それに加え、影盾に重力5倍を対象を俺だけにして持たせて、重力反転(自称)を追加していく。
最大10mの距離に影盾を生成し、蹴って移動したり、重力反転で引き寄せたり、様々な移動を組み合わせ、相手を翻弄させられるように。
昼食後、恐る恐る、今まで目を瞑ってきた魔法の実践。
名付けるなら真・新影移動(自称)とでも言うべきか。
所謂、祠の空間収納に繋げた、黒穴引を手前に、黒穴出を先に生成し、自身が黒穴引に入って瞬時に黒穴出から出るというものだ。
何度も実践した。
魚でも茶兎でも黒狸でも猪でもワイルドボアでも。
ワイルドボアに至っては取り出す時の方が怖い位だ。
それらは何日経っても生きている。
空間収納の中で。
自身が一瞬入る位で何か起こるとは思えないが、怖いのである。
とにかく、すぐ目の前に黒穴引を生成、少し先の所に黒穴出を生成、どちらも同じ今回の実践用に作った祠の空間収納に繋げる。
そしてその黒穴引に木刀を少しずつ入れていき、そのまま黒穴出から出てくるイメージで。
俺が見ている間に黒穴出から木刀の先端が見られるはずと。
すると黒穴出から木刀がにょきっと出てくる。
俺はその状況を確認すると、もっと強くイメージし、黒穴引に入れたら黒穴出からすぐさま出てくるように。
そしてその木刀が黒穴引に入っている部分と、黒穴出から出ている部分が全く同じになったところで、更に押し込んでいく。
全く同じ動きで入れたら出てくる。
「よしよし。」
俺は唾をごくりと飲み込み、自身の手が入るところまで押し出す。
そして意を決して拳まで黒穴引に入れた瞬間、黒穴出から俺の拳を確認する間もなく、全身が黒穴引に引っ張られ、気付いたら黒穴出の前に立っていた。
「うーーん。」
確かに怖さの余り、自身が空間収納にどう保管されるかなんて想像つかなく、入った瞬間には出ていたいと望んでいたと。
「そういうことかぁ。」
それならそれでいいかも。
「では、もう一回。」
俺はまた先程の場所に戻り、思い切って手を突っ込む。すると同じく黒穴出の前に出る。
「良しっ。これも踏まえて訓練するっ。」
そして色々な動きを、相手が翻弄するように試してみる。が、
重力反転や無重力移動(自称)に瞬間移動(自称)も取り入れる難しさも然ることながら、影盾に重力を加える事よりも黒穴引出を出現させるのに手間取る。
「こりゃぁ、今晩の魔法練習はこれだな。」
そう言うと、いつもの生活に、思うような訓練と魔法練習をこなして寝落ちする。
77日目。
祈りを捧げ、昨日に続き、刀に慣れること。新しい動きを体に叩き込む訓練。これらを満足いくまで高め、明日には師匠に挑むことにする。
78日目。
今日も気持ちの良い朝に、全てのものに感謝の祈りを捧げる。
朝食前の稽古を行う。昨晩編み出した稽古方法。
この祠の前の丘に、俺が建てた二棟の屋根を除き、全ての面に祠の魔力を借りて、重力場を5倍で設置する。
その上で型稽古や重力反転、無重力移動、瞬間移動、それらをまとめて真影移動(自称)の練習。
これが、体力・実践トレーニングにもなり、同時に魔力トレーニングにもなる。今後の基本トレーニングとしよう。
一息ついてヒョウと朝食。
「ヒョウ、この後師匠の所に修行に行くけど、お前も来るか?」
「くぅうぅん」
「そっか。今回、連れて来るように言われてないしな。」
ふと自分で口にして、今回は以前の様に一方的に俺を叩きのめす気ではないのだと気付く。
(まあ、今では一方的にやられる気はしないんだがな)
朝食後に祠で、体力、魔力を回復させ、師匠の下へと向かう。
いつもの草原で、いつもの様に師匠が現れる。
「ほう、すでにモノにしたようじゃな。」
「掛かってこい。」
そう言われ、俺は黒虎徹を振りかざし、真影移動で師匠を翻弄するように、多彩な攻撃を繰り広げ続ける。が、ことごとく受け流される。
それでも喰らい付き、攻防を繰り返しながら、お昼を大分と回った頃、
「中々良い。儂には筒抜けじゃがな。」
「それ、もう一度大黒蛇を倒してこい。あれが必要じゃからな。」
はっと思った俺は尋ねる。
「恐らく苦労せず倒せるかと、もう1本虎徹がご必要でしょうか?」
「ふっふっ、一度黒虎徹を得られた者にはアダマンタイトしか落とさんて。」
え?なんとっ!?今、アダマンタイトって言った!?
さまざまなファンタジーもので、ミスリルよりも貴重で、オリハルコンと並ぶ程の鉱石の名前だよ。
本当にそんなものがあるの?そんな貴重なものを俺はほいほい渡してたの?
「あ、アダマンタイトだったんですね。それをもう一つ取ってくれば何かあるのですか?」
「ふっふっ、それは出来た時の楽しみじゃ。」
そう言って師匠は消えていった。
その後、次の日も、その次の日も草原に来てみても師匠は現れなかった。
俺は更に訓練を重ね、師匠の言う、筒抜けの部分をどうしたらそうならないかを試行錯誤した。




