ポイ捨て狩り開始
初めてのソロキャンプを終えて翌朝、日の出と共に目を覚ます。小鳥の囀りが気持ちい。
「結局誰も来なかったなぁ〜」
キャンプ場を独り占めできるのは贅沢で良いことだけど、俺の本来の目的はポイ捨て狩りである。幸い今日は休日で天気も良いので誰かかしら人が来るだろう。
と言ってもマナーの良い人が来てくれる方がいいんだけどね。
「朝飯でも作るか」
新品だった焚き火台は昨日の焚き火で真っ黒になってしまった。しかし使い古した感があった方が味が出ていいと思う。そんなことを考えながら薪に火をつけて朝食の準備を開始する。
キャンプの朝食で一つやってみたいことがあったのだ。インターネットで見た某天空の城なんちゃらという映画に出てきた食パンに目玉焼きを乗せてかぶりつくやつ。シンプルだがなぜかすごく美味しそうに見えて一度はやってみたいと思っていた。しかしだ、食パンに目玉焼きを乗せるだけじゃ絶対に物足りないのは食べる前からわかってしまうので、俺はそこに一手間加えようと思う。これもまあ簡単なんだがベーコンだ。
某天空の城なんちゃらと言う映画を作ったスタジオが別に出している作品で、某なんちゃの動く城と言う映画では厚切りベーコンと目玉焼きを合わせたベーコンエッグが魅力的だった。つまり俺はこれを掛け合わせる。
厚切りにしたベーコンを小さいフライパンで焼き、その横ではパンを火から少し遠ざけて焼いていく。ベーコンが焼けてきたらその上に卵を2個乗せて蓋をする。卵が焼けてきたら醤油をフライパンの縁にかけ香りをつける。最後は焼き上がったベーコンエッグをパンの上に乗せ、軽く塩胡椒をふる。完成だ。
「シンプルなのになぜこんなにうまそうなんだ。映画ほどうまそうには見えないがこれが限界だな」
俺はベーコンエッグパンにかぶりつく。
「うまい・・・」
口の中で半熟卵がベーコンとパンに絡み合い、さらに醤油の香りがマッチングしている。なんて贅沢な朝食だ。
憧れのベーコンエッグパンを堪能した俺は暇つぶしに近くの小川で釣りをすることにした。
俺は学校に行っていないため、暇つぶしによく川で釣りをしていたので腕前はそこそこだと自負している。
釣りの結果マスを三匹釣ることができた。日中は散策や釣りを楽しんで過ごし、夜ご飯は釣れた魚の塩焼きにすることにした。
自分のテントに戻るとチラホラと他のキャンパーがやってきており、俺と同じようにソロキャンプの人や家族できたであろう人、友達と来たであろう若者達、退職後のセカンドライフを楽しんでいるであろう老夫婦等が来ていた。
キャンプは幅広い年齢層に愛されているらしい。良いことである。機械や舗装に囲まれたばかりの生活をしていると、こういった自然に囲まれたキャンプがより楽しいんじゃないだろうか。
キャンプを楽しんでいる人達を見て改めて気づいてしまったのだが、俺はこの世界に未だ友達というものがいない。学校に行っていないし、東京に来ても人を殺したりマナーの悪い奴らや犯罪を犯す奴らに暴力を振るってお金を巻き上げてるだけなのでそりゃあできるはずがないよね。
父さんの親友であり、俺が生活する上で色々お世話になってる小林さんや、この間ひょんなことから知り合いになった真琴さんはまた友達と違うし。
ていうか、かっこよくソロキャンプとか言っちゃってるけど、シンプルに友達がいないんだよね、俺。なんだか悲しくなってきたなぁ。
なぜか友達がいないことにショックを受けてしまった俺は、しんみりした気持ちで自分で釣った魚を食べ、焚き火と星空を眺めて癒された後、早めの就寝についた。
ポイ捨て狩りのターゲットを見つけたのは自分に友達がいないことを再認識して寝た翌日のキャンプ3日目のことだった。前日からいるキャンパーは大体昼頃に撤収していった。昼頃に撤収していった人達はマナーがよかったようでゴミひとつない。素晴らしいことである。
今回ターゲットとなったのは意外なことに夕方頃に撤収していった老夫婦だった。俺が椅子に座ってキャンプ場内を眺めているとおじいさんが今回のキャンプで出たであろう大量のゴミを抱えて林の奥へ消えていったのだ。怪しく思った俺は視覚魔法で追跡すると案の定林の奥にゴミを捨てたのだ。もうポイ捨てなんてレベルじゃない。不法投棄だよね。
おじいさんが不法投棄の現場から去った後、俺も現場へと行き収納魔法でそのゴミを亜空間へと収納する。
「まさか、あんな穏やかそうな爺さん婆さんがポイ捨て犯だとはなぁ。どうしてやろうかなあ」
よくインターネットや教材には老人に優しくとか書いてあったけど、俺は優しくないぞ。年齢なんて関係ない。ちゃんと生きている奴には優しくするつもりだが、人に迷惑ばかりかけている奴は許せないんだよなぁ。野放しにしてたら俺の本当の父親みたいなやつが生まれちゃうだろ。
それから車に荷物を乗せた老夫婦は何食わぬ顔で帰っていった。俺は追跡魔法を使用して老夫婦を追跡することにした。
追跡した結果、どうやらこの老夫婦はキャンプ場がある群馬県から車で比較的近い埼玉県の古びた一軒家に住んでいるということがわかった。
調子に乗った若者がポイ捨てをしていたらそいつの家にゴミをぶちまけて金を巻き上げるだけの予定だったが、今回のターゲットは予想外な老夫婦だったため俺はちょっと様子を見てみることにした。
キャンプ場だと視覚魔法の範囲外になってしまうためキャンプ場から引き上げ、老夫婦が住んでいる家の近くにあるビジネスホテルに滞在することにした。
ホテルにチェックインする時はもちろん偽名を使う。というか俺は日本に存在していない人になっているためどう書いてもアウトなのだ。一応幻覚魔法で別人になりすましてそれっぽい名前と住所を記入した。偽名でホテルに泊まることはもちろん良くないことなので一般の方は絶対にやめて欲しい。
早速老夫婦の動きを観察する。
しばらく観察していると動きがあり、老夫婦は車に乗り込んだ。どこかに出掛けるようだ。視覚魔法で追跡を続けるとどうやらスーパーで買い物をするらしい。
そこで俺はとんでもない光景を目にしてしまった。老夫婦は一緒に買い物するかと思いきや別々に行動を始めて各々買い物を始め、そしてなんと婆さんの方が人気のないところで万引きをしたのだ。
婆さんは涼しい顔で豆腐だけを買って先に車に戻った。その後爺さんが買い物を終えて車へ戻ると今日の戦利品はなんだと仲良く話しながら帰宅していった。ひどいなぁ。
それから1週間ほど観察を続けた結果、万引き、ゴミの不法投棄、少し遠いスーパーや役場への意味不明な苦情の電話等、たいした悪事でもないが社会に迷惑をかけまくりな生態が明らかになった。
「どうやって処そうかな」
この人達がいることで死人が出たりするわけじゃないが、姑息な手段で他人に迷惑をかけまくってることがなんだか嫌いだ。
明日、ポイ捨て狩りを決行する。もはやポイ捨て狩りではない何かだが。




