お茶会3
最初は警戒していたソフィーだが、リリーの話は聞けば聞くほど面白い。
ここがクロームに呼ばれたお茶会ということも忘れて、おしゃべりに夢中になった。
リリーが領地で行っている事業とは、街の緑化事業だった。
タラン家の領地は年中乾燥した土地で、雨量が他の土地に比べて少なく、干ばつ等の被害が深刻だった。幼い頃から植物に興味のあったリリーは、植物について学ぶ過程で土地や気候についても学ぶ機会があり、ある時干ばつ対策としての緑化事業を思い付いたのだそう。
ソフィーもカンデス領で農作物を育てていると話せばリリーも興味津々な様子で、お互いの事業について熱心に語り合った。
今が花盛りの貴族令嬢とは思えないビジネスライクな会話が繰り広げられ、気づいたときには2時間以上が経っていた。
「もうこんな時間!」
「あら本当ね!私もそろそろご挨拶回りに戻らないと」
「リリー嬢、今日は楽しかったわ。また私とお話してくれるかしら?」
「もちろんよ!私のことはリリーと呼んで。私もソフィーって呼ぶわ」
「ありがとう、リリー!今度是非カンデス領へ遊びに来て!」
「本当に?嬉しい……!こんなに話の合う令嬢は周りにいなかったから。絶対ね!約束よ」
「ええ、約束!また手紙を書くわ」
「私もよ。またね、ソフィー!」
二度目の人生で初めて友人ができた。
くすぐったいような照れくさいような喜びを隠せないまま、ソフィーはテーブルを離れて庭園へ向かった。
あたたかい春風に吹かれながら、浮き足立った気持ちで庭園を歩いていると、男性陣が森での狩猟大会から帰ってきたところだった。
最近、若い貴族男性の間では宮廷狩猟が流行している。誰が一番かを競うものではなく、自分が仕留めた獲物を仲間内で見せ合うような穏やかな趣向の遊びのようだ。
「ソフィー嬢」
森から戻ってきたクロームがソフィーの元へとやってきた。
「もう狩猟大会は終わりですか?」
「ああ。一人か?」
「はい、一人ですが」
リリーと仲良くなりましたと大声で自慢してやりたいが、今ここではやめておこう。決してクロームが怖いからじゃない。
「聞きたいことがある。ここでは話せないので場所を移そう」
弾んでいた気持ちが一気に覚める。
浮かれている場合じゃなかったわ。
「わかりました。私も殿下にお聞きしたいことがありましたので」
殿下がどういうつもりで私を茶会に呼んだのか、私もはっきりさせたい。
先に歩き出したクロームの後を追って、庭園の奥へと進んだ。




