お茶会2
気を取り直して、クロームに挨拶をする。
「ソフィー・ラ・カンデスがご挨拶申し上げます」
「……」
「殿下?」
「あ、ああ」
「本日は貴重な集まりにお招きいただき、感謝いたします」
一瞬何かを言いかけたようだが、結局彼は何も言わず、暫く無言の時間が続く。
「あの……」
「……招待状にも書いたが、今日は王家とその近親の者たちだけの集まりだ。あなたは私の婚約者としてつれてきたが、目立つ行動は避けるように」
目を逸らされて、開口一番に釘をさされた。あなたが呼んだから来たのですが?と言いそうになる口をなんとか縫い付け、了解の意を口にした。
すでに到着した人々で茶会は始まっており、挨拶も半ばにクロームと別れ、女性陣が集まるテーブルへと強制連行……いえ、案内された。
あまり社交が得意ではないソフィーだが、皇后時代、社交界にはつねに顔を出さなければならなかった。やっかみも陰口もまあ慣れたものだが、親しい友人もおらず、常に周囲を警戒しなければならなかったので、いつまでたっても居心地のいいものではなかった。
時が戻った後は、その反動で夜会にはなるべく参加せず、社交界ののドロドロした部分には触れずに生きてきたが、もうそうは言っていられないようだ。
ソフィーがテーブルにつくと、賑やかだった話し声はピタリと止み、ヒソヒソと囁くような声に変わった。とはいえ誰もソフィーには直接話しかけようとしない。嫌な空気だ。
「珍しい方がいらっしゃるのね」
開き直って美味しいお茶でも楽しもうと席を立ったときだった。
煌めくようなシルバーの髪に、キリッとした目元と艶やかな唇。まだ顔立ちは幼いが、あと数年すれば100人中100人の男が振り向くような正統派美人になるだろう。
「リリー嬢。初めましてソフィー・ラ・カンデスと申します」
「あら、私の名前をご存じなの? 私もご挨拶を。リリー・タラン・ルータスと申しますわ」
「あなたのお名前を知らないご令嬢など、この国にはおりませんわ」
才色兼備で知られるリリー嬢は、社交界でも一目置かれる存在だ。
タラン家の領地では驚異の若さでその才能を発揮し、同じ15歳とは思えぬ功績をあげている。
「あなたもそうでしょう?」
好奇心旺盛なこどものように、無邪気な笑顔を見せた。




