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糖度100パーセント  作者: リクルート
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お泊り会 消灯

 織姫と姫灯のお付き人の紹介を終えて、俺たちは遊んでいた。それと並行して順番に入浴を済ませている。遊びはテレビゲームやらカードゲームやらボードゲームをしていた。娯楽倶楽部なだけあって、姫灯は強かった。どの遊びでも一位や二位など好成績を収めていた。それに食いつくように来織も奮闘していた。この遊びには世葉さん、北さんも誘って参加してもらった。驚いたのがこの二人、ゲームはめっぽう弱くて、毎回最下位になっていたことだ。考えてみれば、家事などが上手いからと言って、ゲームが強いわけではないのかもしれない。


「じゃ、そろそろ寝るか」

 これは俺が言った台詞だが、まさかこれが争いの火種になるとは思わなかった。というか、少し考えればわかることだったのかもしれない。しかし、そのとき、俺は眠くてそのことまで頭が回っていなかったのだ。


 そのとき全員の目が光った、ような気がした。

「じゃ、私はあっきーと寝る」まずは来織。

「それでは、わたくしはその反対に」次は織姫。

「私も近くで寝る」船を漕ぎながらもそう主張するのは灯勇。

「わ、私も一緒が、い、良い」恥ずかしがりながらもそういうのは姫灯。

 そうは言っても俺は俺はベットで寝ていて、隣で寝るなんてことになったらきっと、布団の中に潜ってきかねない。それに今日は彼女たちには他の空いている部屋を使ってもらおうと思っていて、その準備はしてある。そのことを話すと誰か一人が俺の隣で寝るという提案を来織がしたが、それを拒否すると、彼女はがっかりしたように頭を垂らした。その隙に今度は織姫が同じような提案をしてくるが当然拒否。それ以降は、世葉さんが事態を収拾した。その方法は俺が困っているという、ただそれだけのもの。それでこの事件は一件落着した。北さんは俺の部屋で寝ることになった。いくら彼が執事とはいえ、男であることには変わりない。女性に取っては心配になることなのかもしれない。まぁ、北さんは明らかにそんなことしないだろうが。


「辺泥様は、とても素敵な人なのですね」

 消灯して暗くなった俺の部屋に北さんの声が響いた。

「どうしたんですか、急に。男に褒められても嬉しくないですよ。それと様付けはやめてください。なんか変な感じがしますから」

「そうですか。では、辺泥君、と。しかし、心底感心しているのですよ。お嬢様はああ見えても、本当は社交的な方ではないのです。幼いころから両親と私以外の人には人見知りをして、近づくことはなかった。それは高校生になっても変わらなかったのです」

「そうですか。緊張するとは言ってましたが、そういうことだったんですね」

「ええ、それからお嬢様はあなたを見たときに一緒に遊びたいと申されました。そう言われた私は助言だけしてお嬢様自ら動くことを期待しました。この作戦は成功し、今に至るのです」

 俺は返事をしなかった。ただ彼の言葉に耳を傾けていた。

「なぜ、あなたを気に入ったのか。それは今ならばわかる気がしますが。これだけは言っておきましょう。執事としてではなく、お嬢様を尊敬する一人の男をして」

 彼は一旦、息を吐いたように感じた。

「姫灯お嬢様を悲しませる決断だけはしないでくれ、と。もし悲しませるようなら私があなたを許すことができない、と」

 その言葉に俺は返事ができなかった。


 それ以降会話はなく、俺は彼の言葉を胸の中に入れて、いつの間にか意識を失っていた。


 優し気な声がする。なんとも甘い、誘うような声。それは何なのか、誰なのか。俺にはわからない。それは形を変える。でも、それはすべて人型だ。それもすべて知っているもの。それらは霧の向こうに走っていき、それでも俺を呼ぶ。俺は追い付けない。何かは増える。五つの影。見覚えがある、五つの影。

 い、五つ……。


 目を開けると世葉さんが俺の顔をいつもの考えていることの読めない表情をして、俺の顔を見つめていた。少し顔を前に出せば額がぶつかるだろうという距離。

「朝でございます」彼女は昨日見た通りの綺麗なお辞儀をした。

 俺が起きたことを確認した彼女は俺の部屋を出ていった。今日は世葉さんが起こしてくれたらしい。メイドさんに起こされるとは、いよいよ俺の日常も壊れてきたと言ってもいいかもしれない。

 くだらないことを考えながら、部屋を出る。リビングに入るとそこには来織と織姫がいた。俺の後ろには灯勇がいた。身支度が終わったところらしい。

「あき、おはよう」

 彼女に最初に挨拶されたのは初めてではないだろうか。いや、先に世葉さんがいたか。

 彼女の挨拶に返事を返した。その後ろに続くようにして、リビングの二人とも挨拶を交わした。

 今日も騒がしい一日が始まりそうだ。そこで俺は一人足りないことに気づいた。

続く

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